電子処方箋対応(自作モジュール編)

前回、「市販モジュールで管理サーバーと交信」はできた。

自力ベンダーとしては、しかし、電子処方箋モジュールも自作したいところである。

 

と或る電子カルテメーカーに、問い合わせると

電子処方箋の取り扱いには、電子署名、ICカードのハンドリング等の技術が必須になりますので、 かなりハードルが高いです。

 

 

自分でできる範囲内のことを、やることにする。


目標
  • ES型式の署名付き医師処方箋発行を目指す。調剤処方箋とか、ES-XLとかは一切触らない。
使用言語
  • C#:Base64エンコード、exc-c14n正規化、SHA256hash計算はできそう。
電子署名、ICカードのハンドリング
APDU Handling
  • HPKIカードで署名してみる は、APDUコマンドを直接カードに送り込んでいる。この手法は大部であるし、もっとオサレな方法はないのか?と調査したところ、、
High-Level API
  • 電子署名に使えるHigh-LevelAPIがあると判明。

    PKCS#11 CNG/CryptoAPI
    Cross-Platoform Yes No(Windows-only)
    Direct Token Aceess Yes Indirece(via middleware)
    Eas of Use Moderate High
    Dependency Vendor’s PKCS#11 library Windows CSP/KSP

    ☞ HPKIドライバーは提供されているので、PKCS#11でいく。

  • BouncyCastle:有名なライブラリだが、直接スマートカードにアクセスはできない。スマートカードをPCに接続しHPKI driverをインストールすれば、証明書ストアに公開鍵関連データが保存される。そのストアにアクセスする仕様。従って、証明書取り出しと検証(←公開鍵要、秘密鍵不要)は可能で、そこに関してはPKCS#11系でやるより美しく書ける。
  • 以上より、署名はPKCS#11で、証明書取り出しと検証はBouncyCastleを使う。
xmlの仕様

取り寄せた市販モジュールの出力xml、OSNに掲載されてる各社の電子処方箋xmlを諸所比較すると、結構違いがある。

  • xmlの名前空間:xsかdsか。
ds: xs:
Namespace URI http://www.w3.org/2000/09/xmldsig# http://www.w3.org/2000/09/xmldsig#
Primary Usage Digital signatures XML Schema definitions
Scope Ensures security (signatures, keys) Defines structure and data types
Common Context Security-related XML documents XML Schema files or validation rules

xsを使ってる例のほうが多いようだが、XAdES(XML Advanced Electronic Signatures) 型式なんだから、dsのほうが良いんじゃね? 仕様書もdsつかってるみたいだし。

  • PrescriptionDcoumentをexc-c14nで正規化するかどうか。
    正規化してもしなくてもいいようで、正規化しない例のほうが多い。
    ただ、KeyInfoとSignedPropertiesは正規化必須なので、PrescriptionDcoumentも正規化するほうが整うと感じる。
  • IssurerSerialをどうするか
    いれてない例もあるし、入れててもIssuerNameとSerialNumberを別々に載せている場合、IssuerNameとSerialNumberをくっつけるSigningCertificateV2を採用してる場合がある。
    SigningCertificateV2に移行するらしいので、これを使う。
完成したやつ
  • HPKISigner.exe “入力csvのパス” “出力xmlのパス” PIN
  • .net8.0なのでwin-64のみならず、linux・mac・mac-armとCross-platform(のはず)
  • 今一、全く自信ないので、いつでも市販モジュールと交換できるようにしてる。
  • Github に載せました

これで、一安心の一歩手前。しかし、肝心の本番カードは未入手である。。

参天製薬からアトロピン点眼「リジュセアミニ点眼液」が発売されます。

参天製薬の「近視進行抑制剤」に注目が集まる理由 国内で初承認
をみつけ、参天製薬に問い合わせたところ、

現在発売時期なども未定の中なので提供できる資料などが非常に乏しい状態でございます。参天+アトロピンでの論文となると現状下記の一報のみとなります。

光干渉断層撮影法と眼底写真によるアトロピン応答を予測する近視イメージングバイオマーカー 

要約は、

アトロピン点眼が眼軸長延長の抑制効果を予測するには、「OCT所見のGCL+(≒GCC)、眼底写真のRGBのうちR要素」と相関があった。

この論点は初見だな。今後、アトロピン点眼を処方するときに有用かも。


この点眼薬の特徴は

  • 濃度は0.25%である。学童の近視進行抑制2023 – 眼科医のブログ で述べたように「日本人を対象とした研究では、0.01%アトロピンの点眼の有効性が、他国人(≒欧州人、シンガポール人)よりも出にくい。」ことがあるのかもしれない。
  • 使いきりである。:マイオピンとの差別化かな。
  • 費用:自費診療で、4千円/月らしい。従来品はこちら

☞ 当院では0.01%、0.025%、0.05%を調剤しています。全部250円ですが使いきりではないです。

電子処方箋対応(市販モジュール編)

厚労省は「オンライン資格認証の次は電子処方箋」というが、自力ベンダーにとって実施は困難を極める。


1.オンライン資格認証の場合は、機器を手順書通りに設定すればxmlが受信できた。IPv6とかルータの設定がややこしいくらい。

2.電子処方箋の場合は、自分で処方箋データをxml化して送信するので、設計仕様書や他人作のxmlを解読する必要がある。

3.電子処方箋署名モジュールを自作するならRSA暗号、PKI、OpenSSLなど理解・把握したうえでコーディングする必要がある。


オンライン資格確認と違って、ほとんど事例が見当たらぬ。
ホンマにできるんかぃな?!
ヤだけどORCA使うか😥。。と思って調べると

どうやら、ORCAも電子処方箋署名モジュールは外注しているらしい。厚労省も業者紹介してる。

「なぁ~んだ」と思って、各業者に問い合わせたら、ほぼ以下の返答の如し。

署名サービスの販売は、電子カルテ・レセコンの開発・SIベンダー様に対して販売をしております。
そのため、貴社に導入されています電子カルテまたはレセコンベンダー様に導入のお問い合わせを頂きたくよろしくお願いします。

自力ベンダー相手だと、サポートで割合わんのだろう。
かろうじて、以下3社のみ提供してくれそうだと判明。

 

言語 価格 感想 対応
A社 java 6K/y サブスク exeにcsvファイルの引数を渡せば、署名付きxmlを返してくれる 質問には一応答えてくれる様子。ドキュメントが充実している。
B社 java,.net 22k買切 dll型式で取り込み可能 WebORCAを自力実装した人にのみ売ってくれる。個人対象のサポートは一切ない。
C社 C++ 16K位買切 試用したがエラー発生。謎 秘密保持契約書まで結んだが、自力ベンダーだというと、引かれてしまった。

ここで、A社製品をググって、電子処方箋 導入記  をみつけた。
この先生は、黎明期の紙の電子処方箋時代から取り組んでおられる由で、小生質問にも丁寧にご返答いただきました。
直接お会いしたことはないものの、自作カルテの先達と感じ入っております。改めて、御礼申し上げます。


勝手連的に記事をまとめると

1.確定前電子処方箋xml

  • 院内カルテのcsv処方箋を、電子処方箋管理サービス記録条件仕様_処方編一般処方名マスタ用法マスタ に従って作成する。
  • 文末の改行は\nにする。
  • 電子署名処方箋モジュールに渡す。
  • 得られた電子署名付き処方箋xmlをBase64でエンコードして、PrescriptionInfoというxmlエレメントにいれる。
  • 必要なxmlエレメントを上下付加する。
  • ファイル名は EPSsiPIR01req_xxxxxxxxxxxx.xml ( xxxxxxxxxxxxは12~ 20桁の数字アルファベット)

2.重複チェックxml

  • 1と大筋同じ。
  • ファイル名は EPSsiDMP02req_xxxxxxxxxxxx.xml

3.PDF要求xml

  • 1.のresで帰ってきたPrescriptionIDを挿入する。
  • ファイル名は EPSsiPIR06req__xxxxxxxxxxxx.xml

reqフォルダに上記のreq xmlを置くと、resフォルダに返答がかえってくる。
resエラー時には、医療機関等ONSサービスデスクに問い合わせると教えてくれることがある。(ただし、放置のこと甚だ多し)


とりあえず、上記手順で成功したので、まずは一安心の二歩手前。
次は、電子処方箋署名モジュールを自作してみる。

2025年のご挨拶

本年もよろしくお願い申し上げます。🐍

今年は、電子処方箋対応で忙しすぎたため、ブログ更新もままならずだった。

HPKIカード本体でやる方は目星立ったが、ICカードの供給が遅れているためセカンドカードしかもらえてない。こっちは未明のまま。

今年は、クリニック運営に関しては今まで以上に、白内障術後の乱視軽減、モノビジョンのご提案を促進していく。

近視矯正については今年こそ、眼軸長ソフトを発行したいと考えています。

Local LLMを使って、個々人用のMT用紙を作成とかも夢想してます。