眼瞼痙攣と片側顔面痙攣

両者はボトックスが奏功する点では共通するが、かなり異なる疾患概念である。

眼瞼痙攣片側顔面痙攣
両側性か片側性か両側性片側性
症状心理的・感覚的要因がある。心理的・感覚的要因がない。
第一選択の治療方法ボトックス注射外科治療。
ボトックス注射を第一選択としてもよい。

症状

[1].眼瞼痙攣の症状

「眼瞼痙攣」という運動症状の疾患名にもかかわらず、眼科受診において最も多い眼瞼痙攣患者の主訴は「まぶしい」「目を開けるのがつらい」「目が乾く」といった目の不快感すなわち感覚症状である。

[2].片側顔面痙攣の症状

顔面の特徴的所見と発症からの経過を聴取することで診断がつく。痙攣は,初めは疲れたときなどに片側の眼周囲がピクピクする程度の症状で発症することが多い。しだいに頬、ロ元、額へと痙攣が進展増悪する。

日本医事新報 2020/10/10号 NO.5033 p.18-30より引用。

治療

[1].ボトックス注射の部位

注射の動画

[2].減圧手術の様子

顔面けいれん | 脳神経外科医 福島孝徳 公式サイト (dr-fukushima.com) より引用。

追記

・片側顔面痙攣の眼瞼痙攣は、本来の眼瞼痙攣症例より軽度と思う。
・当院では30G針を使用していますので、注入痛ほぼありません。


当院の使用シリンジ

・顔面痙攣→ボトックス50単位を生理食塩水0.8mlで溶いて上記シリンジで1箇所0.04ml=2.5単位
・眼瞼痙攣→ボトックス50単位を生理食塩水0.4mlで溶いて上記シリンジで1箇所0.02ml=2.5単位

美容外科では2.5ccと水増し溶解(?)してる気がするが、一杯注入してもらった気はするが単位数同じなら痛みが増すだけだと思われる。

近視治療アトロピンの至適濃度

0.01%アトロピン点眼が世界標準なので、当院では1%アトロピンを100ml生理食塩水で希釈して作成しています。
商用マイオピンには0.025%が掲載されているので、至適な濃度についての文献を検索してみました。

この文献は、0.01%,0.025%,0.05%の濃度を比較しており

2年間の追跡の結果、等価球面度数の平均進行度はアトロピン0.05%群で0.55±0.86D(一対比較でのP=0.015)、0.025%群で0.85±0.73D(同P<0.001)、0.01%群で1.12±0.85D(同P=0.02)、眼軸長の平均変化度は0.39±0.35mm(同P=0.04)、0.50±0.33mm(同P<0.001)、0.59±0.38mm(同P=0.10)だった。

以上より、「0.05%アトロピンは0.01%アトロピンの倍の効果がある」と結論付けています。


当院でも、0.05%アトロピンを頒布予定です。

ミニウェル・レディ、ミニウェル・プロクサについて(2)

ミニウェル・レディの見え方について、日本語資料を入手しましたー。

夜間運転のシミュレーションは以下の通り。ハロー・グレアはほぼない。何なら単焦点レンズよりも少ないかしらん。

遠方から近方までの視力表の見え方シミュレーション。

さすがに、遠方の見え方は単焦点が一番よいかな。


今なぜ、このレンズが脚光を浴びているかについて考按する。

Sifi社からミニウェルがEDoFレンズの嚆矢として発売されたとき、巨人AMO社やALCON社も当然このレンズを研究したはず。しかし、市場投入するにあたって球面収差だけでは近見困難なので、回折格子を導入した。
 ↓
市場拡大に伴い副作用面に対する不満、すなわち光エネルギーのロスとかハログレが問題視されるようになった。
 ↓
温故知新的に球面収差onlyのミニウェルが見直された。Sifi社も近方不足は認識していたためproxaをWell Fusionとして発売した。
 ↓
意識高い系な人達が着目して盛上がってる + AMOやALCONも回折格子を持たないレンズ発売。⇐ いまここ。


適応についても、考按する。

「神経質な方、期待度が過度に高い方は避けた方がよい」である。ここから引用すると

considering a MINI WELL®, make sure you choose patients with appropriate psychological and clinical profiles. Ideally,
you’re looking for easy-going Generation X-ers, with relatively active lifestyles and realistic expectations for the surgical procedure. In addition, and critically, they should have healthy eyes – in particular a
healthy tear film and no dry eye syndrome (which is one of the main contributing factors to IOL failure).
イージーゴーイングなX世代の人たち(1960年代中盤から1970年代終盤に生まれた世代)で、活発なライフスタイル、現実的な期待度、眼疾患がない(特にドライアイがないこと)を対象者とするべきである。

しかしながら、現状このレンズを意識高く抱いてる人って、「神経質な方、期待度が過度に高い方」じゃね?と感じる。このレンズを採用するクリニック側は「自費診療」という∞リスクを負担する。患者さん側も、また然りである。

この供給サイドと需要サイドのスプレッドが、かなり開いてるので、高額な料金設定となる ⇒ ますます「期待度が過度に高い方」が対象となる、、のでは?

このスプレッドを最小化すべく、当院ではWell Fusion両眼100万円で応需します。

挿入動画


2022/6/14追記

輸入業者からWellFusionの追加資料。

Well Fusionの特徴と利点


2022/9/11追記

AMOテクニスのアイハンス眼内レンズについて │ 眼科医のブログ (tarumi.co.jp) の追記に書いたように片眼アイハンス、片眼クラリオンという呉越同舟セットが意外と好評である。Miniwell検討者も一度考慮すべきかも。

ミニウェル・レディ、ミニウェル・プロクサについて

ミニウェル・プロクサについて問い合わせがありましたので、ミニウェル・レディとの違いなど書きます。

ミニウェル・レディ

以前のエントリーより再掲↓

EDoF(焦点深度拡張型レンズ)の先駆けとなったレンズで、アラガン社のsymphonyがでるまではEDoFレンズの代表でした。その後の一連のEDoFの流行の発端を作ったレンズで、現在でも、一部手術者に絶大な人気があります。

それは「ハロー、グレア、単眼複視など、多焦点 IOL で一 番問題とされた問題点を大部分取り除くことに成功している」という大きな利点があるためです

ただし、やや近方視力が弱い。

日本国内で認可されていないために、手術代、診察代がすべて自費となり高価となる。という問題点があります。

保険適用、選定医療を用いるなら、似た性格のSymphony、ActiveFocusを用いることが多いです

静的固定レンズが多焦点性,焦点深度を拡張させるための手法としては,①回折格子,②屈折加入,③小開口,④球面収差,⑤コマ収差の 5 つの手法に限られています。①,②はすでに多焦点 IOL として用いられており、⑤は像質が不良であることより,実質的には①から④の手法が現実的です。その④の球面収差を利用した機構をもちいたものが MiniWell Ready です。光学的デザインにより焦点深度を伸ばすことを可能にし,連続的な焦点を実現しています。近方加入度数は 3.0D です。

ミニウェル・プロクサ

この記事によると、

CATANIA, Italy, Dec. 21, 2020 /PRNewswire/ — SIFI, a leading international eye care company, today announces the launch of the WELL FUSION™ system and the Mini WELL PROXA® intraocular lens, offering a novel solution that provides cataract patients the option to treat presbyopia with spectacle-free uninterrupted high-quality vision at all distances and in all lighting conditions.

2020/12/21、イタリアのSIFI社はミニウェルフュージョン、及び、ミニウェル・プロクサを発表した。白内障患者に全距離・全照度で高品質な見え方を提供し、老眼鏡を不要とします。

Well Fusion Systemを構成するミニウェル・レディとミニウェル・プロクサ

さらにWell Fusion Systemによると、

 ミニウェル・プロクサは、ミニウェル・レディと同技術を使った真のEDoFレンズである。ミニウェル・レディが苦手としていた近方を補完するので、ミニウェル・プロクサ(=Proxa=近方)なのである。
 ミニウェル・レディを優位眼に、ミニウェル・プロクサを非優位眼に入れることを「Well Fusion」と呼び、両者は補完的に働く。

 デフォーカスカーブは以下のとおりで、素晴らしい。

Well Fusion Systemのデフォーカスカーブ

 

 多焦点レンズ普及に伴い、その欠点であるハログレが問題視され、回折格子を持たず球面収差に解決策を求めるレンズが注目されつつある。
 既報のアイハンスvivityもその類のレンズである。
 今回のミニウェルフュージョンシステムは、球面収差やマイクロ・モノビジョンなどの概念を総動員した「てんこ盛り」レンズと云える。


 当院では、適応がある場合には全例アイハンスを挿入していますが、ミニウェル・レディ、および、ミニウェル・プロクサも選択肢とすることにしました。

また、ご報告します。