多焦点眼内レンズのシミュレータ2

Johnson&JohnsonからAR Eyeというアプリがリリースされました。

「AREye」は、拡張現実(AR)の技術を用い、白内障の術前・術後の見え方を擬似体験できま丸スマートフォンのカメラを通して現実の風景をもとにバーチャルな映像を再現。白内障の方だけでなく、ご家族が白内障の不自由さを体験し理解を深めることにも役立ちます。

 

当院でも、多焦点レンズを希望する患者さんには体験してもらうことにしています。

☞ハロー・グレアが若干強めに出るような設定にしてるとのことでした。

京都QuolityOfVision向上研究会を受講しました。

ビッセン宮島先生のお話が聞けるというので受講しました。

トーリックレンズの話

  • 手術後の残余乱視は0.5D以下を目指す。
  • 直乱視を残したほうが偽調節が働くということはない。調節が働く要因は小瞳孔と角膜のmutifocalityである。
  • 日本ではトーリックレンズの採用率が1割程度。これは仕入価が高い+術前術中の操作が面倒なため。残余乱視≦0.5Dを目指すなら半分以上がトーリックとなるべき。

☞当院では半数弱がトーリックレンズ挿入しています

Odysseyの話

  • 回折格子形状がちがう。詳細な話はなかったです。

  • 術後オートレフ値はマイナスにでる。ので、自覚視力測定が大事である。Vivityもその傾向あり。
  • SynergyはFirstPositiveだったが、FirstNegativeを選択する。ここで担当さんが言ってた話。

  • デフォーカス曲線が-0.5D~+0.5Dまでほぼ直線である!そのためtargetずれに強い。

アイハンスVivityの項でも書いたが、デフォーカス曲線のFar平坦化は今後トレンドになるんでは?

 

HOYAの多焦点レンズVivinexについて

HOYAから多焦点レンズVivinexが発売されている。

PanOptix対抗だが違いは

  1. 回折格子の範囲が3.2mmである。PanOptixは4.5mm。したがって夜間運転時(瞳が散大する時)、グレハロが少ない。
  2. 中間が+1.75D、近見が+3.5D加入である。PanOptixは中間+2.17D、近見+3.25D。したがって近見が強い。

後発なので、ライバル社の欠点を消しに来てる印象。

A:PanOptix B:Synergy C:FineVision D:Vivity

当院でも、オプションとしてご説明の上、御希望の方には適用する予定です。

 

PhacoChop手法について

1.Horizontal chop

日本の術者のビデオをみると、horizontal chopを行っている場合が多い。僕もhorizontal派だ。

M -1112 中京式スパーテル(INAMI) (youtube.com)

Where do you place the probe to facilitate phaco chop cataract surgery? (youtube.com)  1:40~

phacoprobe just inside the sub incisional rhexis aimed toward the optic nerve not in the center of nucleus

2.Vertical Chop

海外の術者はvertical chopを採用している人も多い。

Routine Cataract Surgery – Vertical Chop Technique with Step-By-Step Narration | John Welling, MD (youtube.com) 3:24~

 

3.Horizontal vs Vertical

CRSTG | Europe Edition | The Basics of Phaco Chop Techniques (crstodayeurope.com) から抜粋。

Horizontal :Additionally, the very end of the tip must be dull, or even oliveshaped, to protect the capsular bag.

Vertical:in contrast to the dull distal end of a horizontal chopper, the end of a vertical chopper must be sharp to penetrate the nucleus easily.

horizontalの方は先が丸いものを使うことが、vertical chopperは先が鋭利なものを使う。これは手法の違いを見れば明らかだ。

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UltraChopperなるものもあるらしい。→CataractCoach™ 2286: resident ultra chopper case (youtube.com)

が、使うのは怖いな。


2024/10/13追記

Vertical Chopは核がある程度やわらかくないと不可。ので、Horizontalの方が汎用性がある。手法が普及しているのには理由があるってこと。

参天 保険適用老視矯正IOLによる白内障手術レベルアップ

当院でアイハンスでミニモノビジョンをしてますが、これを参天のレンティスコンフォートで行うというお話でした。

どのような患者さんを適応とするかについては

1.患者さんの意向

2.多焦点にしたいが、費用を気にしている場合。

ということで当院と同じ。

ターゲットは-0.5-から-1.0Dですが、FEST法のような度数同定はしていない感じでした。

広田眼科の廣田篤先生によると、

トーリックレンズは

直乱視1.5D以上ならいれる。
倒乱視0.75D以上ならいれる

当院は-0.75D以上なら、直、倒にかかわらず挿入しています。

 

 

術中リアルタイム表示システム ARGOSについて

当院では、乱視矯正IOLを積極的に挿入しています。乱視軸は、座位の患者さん角膜にマーカーをあてて同定を行っています。
ところが、術中に乱視軸を提示することができるシステムがある哉に聴き、調べてみました。

日本の眼科 95:6号(2024) 白内障手術のデジタルマーキングシステム 根岸一乃慶応大教授 から引用。

乱視矯正効果を最大限生かすためには、予定されたTIOLの固定軸に対してできるだけ正確にTIOLを固定することが重要である。

予定固定軸のマーキングは当初はマニュアルで行われることが主流だったが、現在は生体計測データをデジタル化して手術室のユニットに転送し、術者の顕微鏡の視野にオーバーレイ画像を投影するデジタルマーキングシステムも普及しつつある。

現在、国内では主にARGOS Biometer with ImageGuidance(アルコン)、CALLISTO eyeマーカーレスシステム(カールツァイス)が使用されている。

ALCONの担当者、及びALCON社HPによると

  1. ARGOSはALCON社の顕微鏡以外にも装着できる。
  2. 結膜血管の認証精度が他社製品より高い。
  3. 水晶体の白濁が進んだ白内障グレード以上において他社製品と比較して高い眼軸長データ取得率を実現した。

根岸先生の結語は

TIOL挿入の際のマニュアルマーキングとデジタルマーキングの比較に関しては目標軸への固定精度や残余乱視は改善するものの、視力には有意差がないとの報告もある。

どうなんだろー。

AMOテクニスのOdyssey眼内レンズについて

先日の根岸先生の講演で老眼治療多焦点レンズとしてOdysseyが挙げられていました。
J&Jさんの話では、国内でも有名少数施設で先行使用されているということでしたが、仕様の詳細不明。

ネットで調べたところ、以下のようなことがわかりました。

  • 基本的にはシナジーの進化バージョンらしい。
  • AI設計していて、target errorへの許容度が大きいらしい。
  • 回折格子がとがってなく丸めてありハログレーが少なく、スターバーストはほぼ0%らしい。
  • ループはフロスト加工されているためトリックレンズでも回転しにくい、つまり術後の軸ずれが起こりにくい。

日本では秋口に発売予定で、シナジーより1万円ほどお高いと伺っております。

 


 

ASCRS 2024: George O. Waring IV, MD, shares early results of bilateral implantation with novel IOL technology (ophthalmologytimes.com)

 

 


2024/10/9追記

担当さんの話によると

  1. 回折格子を滑らかにしただけではなく、格子配置、高さがsynergyとは異なる。
  2. ハログレを減らしたためか(?)、近方距離は40cmとなりsynergyの35cmほどには近くが見えないらしい。
  3. これを補うため、synergyのfirst positive戦略を採らず、-0.5程度negativeに合わせる先生もいるとのこと。

ミニモノビジョンについて

FEST(Fellow-Eye Self-Turning )法をAlcon Experience Academyの第77回日本臨床眼科学会ライブラリーで拝聴しました。

講演者は金沢医科大学 佐々木洋先生です。

要約すると

優位眼の片眼手術にVivityを挿入した後、その術後眼に+0.5Dを付加し-0.5Dの近視状態を作ってたうえで、遠見・中間・近見の視力を測定する。
満足できる視力であれば、対眼にもVivityを-0.5Dのミニモノビジョンで入れる。
満足できない結果であれば対眼にはPanOptixをいれる。

これによって、患者さんの満足度があがり、術者も自信をもってレンズ選定が可能となる。


これは有効な手法なので、当院の主力レンズであるアイハンスのモノビジョンでもはぜひ実践すべし、、と考えた。

そこでアイハンスの英文論文を探し、Comparison of visual performances of enhanced monofocal versus standard monofocal IOLs in a mini-monovision approach を読む。

<方法>
単焦点レンズのミニモノビジョンとアイハンスのミニモノビジョンを比較した。
<結果>
アイハンスノモノビジョンが中間視力、近見視力ともに優秀であった。
コントラスト感度特性もより良好であった。
QOLスコアも優れていた。

👉著者はJ&Jとは利益相反なしである。


前回も言ったように、アイハンスは乱視ラインアップが豊富で、患者さん満足度とも相関が高い乱視矯正が容易である。

以上より、保険医療で、ハログレがほぼ々々なくって、中間~近見視力がそこそこよいなら、非常に好ましい選択といえるのではないか?

当院でも積極的に患者さんに提案していこうと考えています。


2024/4/13 追記
この手法は、
①保険で
②できるだけミニウェルプロクサ的な遠見~近見視力獲得
を実現する手段とみることもできる。

「専門分野から見たアイハンスの臨床評価」を受講しました。

硝子体術者として慶応大学の國方彦志先生、緑内障術者として島根医大の谷戸正樹先生のご講演。

単焦点レンズと比べて、遠見視力、コントラスト感度特性に差はないが、-1.5D当たりの中間視力が優れている。
ハログレのアンケート調査でも差はない。

という予定調和な内容でした。


アイハンスは、トーリックレンズに力を入れているようであり、

「フロスト加工ので回転しにくい」とのことです。
当院でも、-1.5D以上の乱視者全員に採用しています。

アイハンスの適合レンズの選定url
ちなみに、アルコンはこちら


両演者ともターゲットは-0.5D~0Dに合わしている由。
当院では、ここで言った理由によりほぼ0Dを狙い。希望時には対眼でマイクロモノビジョン的にマイナス度数を入れています。

多焦点レンズ記事のおまとめ

最近、多焦点レンズを希望される方が、若干増加してきた印象である。
皆さん、よく勉強しておられ、当ブログも読み込んでおられる。

ただ、何分の散文集につき、所在が分かりづらい指摘もあり、おまとめしてみた。


・多焦点レンズ一覧

当院で取り扱っている多焦点レンズの比較

・各種レンズの記事

PanOptixとSynergyの比較

PanOptixとVivityの比較

Synergyについて

Synergyの目標ターゲット

Odysseyについて

Vivityについて(1)

Vivityについて(2)

Vivityについて(3)

Eyehanceについて(1)

Eyehanceについて(2)

Eyehanceについて(3)

Eyehanceについて(4)

Eyehanceについて(5)

Eyehanceについて(6)

EyehnaceとVivityの比較

Lentis Comfortについて

Miniwellについて

Intensityについて

・見え方のSimulator

多焦点眼内レンズのシミュレータ

多焦点眼内レンズのシミュレータ2

・モノビジョン

ミニモノビジョンについて


上記のうち、「シミュレータで見え方を確認して、決めました」という人が存外に多く、その有用性に気付かされる。