以前、当院ではMCレンズ(カールツァイス製)を処方していたのだが、いつの間にか製造中止になってしまった。
あたらしい眼科2020年5月号p.531 長谷部聡先生によると
MyoVision(CarlZeiss Vision)として市販されるレンズは,平均30%の近視進行抑制効果を示した。しかしこの値は、近視の家族歴がある学童に限定した後付けのサブグループ分析から得られたものであった。
追試として国内では、家族歴のある学童に対象を限定して7大学共同でRCTが実施された。ところが期待に反して、屈折度、眼軸長いずれにおいても抑制効果はみられなかった。
「MCレンズはたんに同心円状に遠近度数を入れ込んだだけの老眼鏡レンズで効果がなかった」というのが真相のようです。
これにたいして、DIMSレンズ(デフォーカス組み込みレンズ)という新発想のレンズが紹介されている。
従来のRRGレンズやMSCLによる治療は周辺部網膜で後方へのデフォーカスを取り除くことを主眼としてきたが、3次元空間で生活している限り、方法論としての限界があった。これに対する逆転の発想が,「デフォーカス組み込みレンズ」である。
眼軸長の視覚制御の仕組みが、どのようにデフォーカスの極性〔フォーカスが網膜の前方にあるか後方にあるか)を判断しているか、調節微動、色収差、軸外非点収差など諸説あるが結論は得られていない。
しかし、複数の動物実験において、極性の異なる二つのフォーカスを同時に与えると、眼軸長の視覚制御が機能不全に陥る可能性が示されている。
この実験結果に基づき、defocus incorporated multiple segment(DIMS)眼鏡が考案された。
表面に微小なレンズがびっしり仕込まれていレンズで、以前のMCレンズとは異なる原理のようだ。白内障手術で用いるEDoFレンズに似ている印象。
次回は、実際にこのレンズの処方について述べます。
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