コロナの影響で、オンラインばかりだった学会ですが、久しぶりにリアル聴講が可能な「2大学合同眼科カンファレス@県医師会」が開かれたので参加してきました。
その中で「網膜色素上皮(RPE)不全症を対象としたiPS細胞由来RPE細胞移植の臨床研究計画」をトピックとして取り上げます。
神戸アイセンター(旧神戸中央市民病院眼科)は、加齢黄斑変性症滲出型に対してiPS細胞移植を行って安全性と有効性を確認してきました[1]。
「この知見を活かして、萎縮型の黄斑変性疾患にもiPS細胞移植を行う」治験を開始するということです[2][3]。
萎縮型黄斑変性疾患の対象病変としては、「RPE萎縮を伴う加齢黄斑変性、クリスタリン網膜層、網膜色素変性症の追円疾患、RPE関連遺伝子異常を伴う網膜色素変性」などが挙げられていました。
僕が重要だと思ったのは、萎縮型加齢黄斑変性症、つまり、かつて活動性があった黄斑変性が「枯れて」RPE萎縮を残して視力喪失をきたした疾患を対象にするということです。
滲出型加齢性黄斑変性は、硝子体注射(IVA,IVR)が標準治療としてほぼ確立しているのに対して、萎縮型黄斑変性症については、ほぼなすすべがない状態です。
従って、もし萎縮型加齢黄斑変性に対して効果が実証できれば、滲出型加齢黄斑変性よりもはるかに大きなインパクトがあると思います。
治験の参加要件は「視力0.3以下、対眼視力は問わない」ですから、対象者の範囲はかなり非常に広いことになる。
開業医にもエントリー細目の通知があるということでした。50名枠ですが、当院でも萎縮型の患者さんは多いので、条件が整い次第、神戸アイセンターの「変性外来」に対象患者さんをご紹介する予定。。
【2020/12/20追記】
正確なエントリー基準を問い合わせたところ、以下のようでした。
・臨床的にRPE不全症に該当する網膜変性疾患と診断されている。
・年齢20歳以上の男女である。蛍光眼底造影においてwindow defectを認める。
・矯正視力0.3以下、あるいは視野はゴールドマン動的量的視野(指標:V-4)で測定し視野20度以内、あるいはエスターマン静的量的視野で70点以下。
今回の臨床研究では、移植細胞とHLAが一致しない患者の組み入れを踏まえ免疫抑制剤投与を予定しております。そのため現時点では対象患の年齢の上限は設けておりませんがおおむね65歳ぐらいまでの患者を想定いたしております。
[1]加齢黄斑変性に対する自己iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植―安全性検証のための臨床研究結果を論文発表― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (amed.go.jp)
[2]神戸市:「網膜色素上皮(RPE)不全症に対する同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植に関する臨床研究」について (kobe.lg.jp)
[3]効果判定の主要指標は、FAGのwindow Defectの縮小率