萎縮型加齢黄斑変性に対する硝子体注射薬剤Syfovre

加齢黄斑変性のうち、日本ではほとんどが滲出型だが、欧米では萎縮型がほとんどである。
従来の抗VEGF薬は滲出型が対象で、萎縮型の薬剤は開発困難とされてきた。

今回、Syfovreが萎縮型治療薬としてFDA承認された。


この薬は、以下のPathwayのうち

Dry AMD Treatments: An Ophthalmology Resident’s Guide (eyesoneyecare.com)

C3という補体を阻害することによって効果を発揮する。(図のAPL-2というのがSyfovre)

ただし、すでに起こってしまった変性を元に戻せるわけではなく、あくまで遅らせるだけ。
毎月投与によって、20%程度発症を遅らせることができたということである。


萎縮型はあまり症状は出ない上、薬剤自体$2190 per vialもするので、いろいろ難しいでしょうね。

 
 

参考URLs

Dry AMD Treatments: An Ophthalmology Resident’s Guide (eyesoneyecare.com)
Syfovre for dry macular degeneration | Scott E. Pautler, M.D. Tampa (scottpautlermd.com)
Syfovre – Dry Macular Degeneration Treatment in Sarasota, Bradenton & Lakewood Ranch FL (retinacareflorida.com)

高次非球面単焦点眼内レンズ TECNIS Eyhanceの臨床評価

J&J主催のWeb Seminarを視聴しました。

で、言わんとするところは、

アイハンスは、従来の単焦点レンズを超える単焦点IOLである。
緑内障があっても使える。

供給不安が解消したので、「ターゲットを拡張したい、しかし、手持ちのsymphonyやsynergyとの競合は避けたい」ということかな。

DIB00Vがアイハンス。ちょっと、露骨かな~。

僕が個人的に感じるのは上記のように、Farでの焦点深度が深いためか、遠方での度数ずれ許容度が高いような印象を受ける。デフォーカス曲線が-0.5D前後までなだらかなことが好結果をもたらしてるのだろう。

「パキコロイドの登場で加齢黄斑変性診療はどう変わったのか」を聴講しました。

2023/3/11、神戸アイセンターで山城健児 高知医大教授の講義を受講しました。


パキコロイドは以前も書いた、分かりにく~い概念である。
講義後「論点が整理され、明解になった」とおっしゃるが、小生、一層わからん次第。

御高演によると、

  • ドルーゼン関連→古典的AMD+PCV+RAP
  • パキコロイド関連→中心漿液性網膜剥離とその関連疾患

と分類されてきたが、欧米学派はPCVをパキコロイド関連に入れようと画策している。
しかし、PCV症例を多く見ている日本人学者は「それは、無理があるやろ」といってるらし。

 …… ・ω・ … ・ω・ … ・ω・ …………

かくの如く、黄斑屋さんは、昔っからterminologyをめぐり「咄!」「點!!」をやってる。
市井の臨床医は、しかし、高僧には敬意を払いつつ、宗教論争を遠ざけねば、と感じる。

今回の講義から日常臨床にフィードバックできること

  • PCVと古典的AMDを分けることに、あんまし意味はない。ポリープはAMDの新鮮病巣を見ているだけ(かも)である。
  • 硝子体注射薬の山城先生の感触
商品名 効き目
ルーセンティス
ラニビズマブBS(≒ルーセンティスのゾロ)
アイリーア
バビースモ 中(~強)
ベオビュー
各種硝子体注射薬
  • TAE(Treat and Extend)が主流となる。PRNのように経過観察はなしで、必ず治療して間隔をあけていく。

2024/10/16追記

「欧米学派はPCVをパキコロイド関連に入れようと画策」についてだが、欧米学派に一票を投ずる。慢性型ICSCとかPCV。のOCT像はよく似ている(と、感じられる)。慢性型ICSCでもdouble layer sighはみられる(と、思う)

MIGS(低侵襲緑内障手術)について(第4版)

「達人に学ぶ!最新緑内障手術のコツ」から、島根医大教授 谷戸正樹先生 の序文を引用させていただきます。

ほんの10年前には、眼外法のトラベクロトミーとトラベクレクトミーの2種類だけが主たる手術の選択肢でした。前者は眼圧下降効果がマイルドである代わりに過度の低眼圧や濾過胞感染等の晩期の合併症が少ない、後者は強力な眼圧下降効果が期待できる反面、術後の管理が煩雑で視力低下につながる合併症の危険性が比較的高いといったが特徴がありますが、この2術式だけでは種々の状態の緑内障患者さんすべての要望・要求を埋めることは困難で少なくないアンメットニーズが存在しました。

このような背景のなかで、近年大きな変革が2つありました。

1つは、低侵襲緑内障手術(MIGS)と呼ばれる一連の眼内法による流出路再建術の登場です。
本邦では、iStent、カフークデュアルブレード、マイクロフックabinternoトラベクロトミー、スーチャートラベクロトミー眼内法等が代表的なMIGS術式として行われています。
MIGSは、眼表面への低侵襲性や白内障手術との相性の良さから、多剤併用と従来の観血手術の間を埋める眼圧下降治療法として定着してきました。

もう1つは、瘢痕化が起こりやすい角膜輪部をバイパスし眼球赤道部に房水濾過を行うチューブシャント手術の登場です。
本邦では、アーメド緑内障バルブとバルベルト緑内障インプラントが保険診療で行われています。
チューブシャント手術は、トラベクレクトミーの効果が期待できない症例で、トラベクレクトミーと毛様体破壊術の間を埋める選択肢を提供しています。
また、マイクロパルスを用いた毛様体光凝固術は、MIGSとして、あるいは、トラベクレクトミー後の治療法として、両端の選択肢となる可能性があります。

以上を、以下のごとくに分類しました。

[su_spoiler title=”MIGS関連” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
[_su_spoiler title=”ロトミー系” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
[__su_spoiler title=”トラべクトーム” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]

トラベクトーム手術研究会発売元のKOWA によると、

  • 結膜・強膜を切開せずに、角膜を1.6mm切開し、専用機器を使い内側から線維柱帯を電気焼灼し、房水の流出率を改善します。
  • 当初は、製造元であったNeoMedix社の強い意向によりライセンス制がとられていましたが、トラベクトームのすべての権利がMicroSurgicalTechnology社に継承されたことにより、ライセンスは不要となりました。今後は、講習会に代わり、新たに設けられたe-Learningを受講していただくことになります。
  • 所感:オワコン?

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[__su_spoiler title=”カフークデュアルブレード” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]

  • 平行に設置されているデュアルブレードにより線維柱帯を帯状に切除することができる。
  • トラベクトームが電気的に焼灼・切除するのに対して、2枚刃による切除であるため熱による組織障害を生じない。
  • マイクロフックに比べると大きいことから、虹彩や角膜内皮細胞を損傷しないよう前房内操作にはより注意が必要である。
  • 線維柱帯を帯状に切除するため,術後は周辺虹彩前癒着が生じやすく,ピロカルピン点眼が予防に効果的である。
  • 所感:マイクロフックに昇華?

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[__su_spoiler title=”マイクロフック” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]

  • マイクロフックトラベクロトミーには、ストレートフックと2種類のアングルフックがあり、それらを使用して鼻側と耳側線維柱帯・シュレム管内壁の切開を試みるデバイスである。
  • 従来のトラベクロトミー眼外法と比べ、手技が簡便で、直接線維柱帯を視認できる正確性から多くの施設で行われるようになっている。
  • 術前眼圧25.9mmHg→14.7mmHg、白内障同時手術で術前眼圧16.4mmHg→11.8mmHgで従来のトラベクロトミー眼外法と同等の効果がある。
  • 所感:従来のレクトミー、ロトミーの塗炭の苦行に比べれば簡単そうだが、緑内障ガイドラインのたまうに「十分な隅角手術の経験のある術者が行うべき手術であり,安易に行うことは厳に慎むべきである」マジ?
  • マイクロフック手術動画

  • cf.教育セミナー

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[_/su_spoiler]

[_su_spoiler title=”通糸系” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
[__su_spoiler title=”スーチャートラベクロトミー” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]

  • スーチャートラベクロトミーは隅角鏡を使用して、眼内からシュレム管内に糸を挿入しその全周を切開して眼圧を下降させる術式であり、切開範囲が120度程度にとどまる従来のトラベクロトミーよりも大きな眼圧下降が期待できる。
  • 角膜にサイドポートを2~3か所作成して前房内を粘弾性物質で満たし、鼻側の線維柱帯の一部を眼内から切開する。その後、糸をシュレム管内に挿入し,全周通過した場合には糸の両端を締めて線維柱帯を360度切開する。
  • 術後の合併症としては.前房出血と一過性眼圧上昇がある。

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[_/su_spoiler]
[_su_spoiler title=”毛様体凝固系” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
[__su_spoiler title=”マイクロパルス” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
2023/3/20ごろ、掲載予定
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[su_spoiler title=”チューブシャント関連” open=”yes” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
[_su_spoiler title=”アーメド緑内障バルブ” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
2023/3/27ごろ、掲載予定
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[_su_spoiler title=”バルベルト緑内障インプラント” icon=”folder-2″ class=”my-custom-spoiler”]
2023/4/6ごろ、掲載予定
[_/su_spoiler]
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☞未掲載部分については、追ってご報告予定です。


記載履歴

  • 2023/2/20 トラべクトーム記載了
  • 2023/2/26 カフークデュアルブレード記載了
  • 2023/3/5カフークデュアルブレード加筆、マイクロフック記載了
  • 2023/3/12 スーチャートラベロトミー加筆
  • 2023/3/19 マイクロフック手術動画追加