iPS細胞関連の講演二題

1題目が神戸アイセンター病院平見恭彦先生「網膜色素上皮(RPE)不全症に対するiPS細胞由来RPE細胞移植」
2題目は藤田医科大学教授 榛村重人先生「再生医療と医療イノベーション」


RPE細胞移植は以前のお話し+自家移植から他家移植に進化。待機が短縮できたが、若干拒絶反応が起きた。RPE不全症を対象にしたのは、硝子体注射がバイオシミラーにより安価となったことが一因とのこと。

「再生医療と医療イノベーション」は、前回の阪大大西田幸二先生と符合する話。
面白かったのは「研究にはお金がかかる」→「最初AMED資金をもらえたが、枯渇した」→「大学発ベンチャーを起業してたおかげで資金ショート免れた」→「しかし、またまた危なくなったろころでNEDOから資金提供うけた」→「その後、自費で頑張っているねと評価されAMED資金がもらえて研究継続」


アイセンターでも大学教授でも、コスト概念や経営の才能が必要ですね~、という感想です。

「広がりを見せるアイフレイル対策活動」

京都大学教授 辻川明孝先生のご講演 @神戸臨床懇話会。

アイフレイルとは、加齢によって眼の機能が低下することに外的・内的ストレスが加わった状態、またはそのリスクが高い状態を指します。アイフレイルには白内障、緑内障、加齢黄斑変性などが関連しており、重度の視機能障害に陥ると回復が難しくなることがあります¹。生活習慣病の予防や定期的な眼科検診が重要であるとされています²

健康と介護の遷移状態をフレイルとする考えを、眼科にも適用してアイフレイルとする。


●質問票で確認する方法 → アイフレイルチェックリスト
●チェックツール → 目の点検をしよう セルフチェックツール

歯科分野ではオーラルフレイルが病名として存在し、オーラルケアという治療行為が認められている由。
眼科医会でも「総員奮励し、啓蒙活動に之相勤むるべし」との御達しでありましたので、早速登録させていただきました~。


1. 見えるをいつまでも|アイフレイルとは|眼の加齢について知ろう
2. アイフレイル | 日本眼科啓発会議 アイフレイル啓発 公式サイト
3.【ここまで進んだ最新治療】アイフレイルとは何か? 加齢で徐々に目の機能が低下、「緑内障」「白内障」検診で早期発見を 順天堂大学・平塚義宗先任准教授が解説
4.高齢女性の4人に3人がなる「アイフレイル」って?認知機能低下との関連も | ヘルスデーニュース | ダイヤモンド・オンライン (diamond.jp)

眼内レンズ展望 Vivity(3)

Vivity動画で公平な視点と感じ入ったのが、limitations with the Vivity IOLEDOF Lens – Alcon Vivity の2品です。

作成者はProfessor Uday Devgan MD, renowned Los Angeles cataract surgeon, teaches the Best Techniques for Cataract Surgery という属性の眼科医。
Vivityは2年前から使い込んでる由で、かなり実践的なこと言ってます。
(口語を意訳しました)


コントラスト感度の低下について

Vivityの売りは焦点深度を深めることだが、コストを伴う。そのコストとはコントラスト感度が低下することだ。dysphotopsiaも思ったよりある。
Alconのパンフにも「夜間コントラスト感度が低下する」ことを周知せよと記載されている。

単焦点レンズとVivityのコントラスト感度曲線比較

☞「頂上をならし平坦化することにより、見える範囲を広げる」と「コントラスト感度の低下」はトレードオフの関係にある。

瞳孔径が小さいと近視化しやすい。

患者の瞳孔径が2.5mmなら、Vivityの中心光学域(2.2mm)が瞳孔領の80%以上を占めてしまう。すると術後正視を狙っても近視気味となる。

小瞳孔でも挿入可能だが、近視になりやすいので、+0.5~+0.75D狙いで正視に近づける。

一眼目の結果が近視気味なら、二眼目は正視に近づける調整を行うべし。


X-wave technologyの原理からすれば平仄がいく。瞳孔サイズが重要というのは以前紹介した論文でも強調されていた点。

患者適応について

既に夜間視力に障害がある場合は、良い適応である。

☞「夜間コントラスト感度が低下する」という欠点が露呈しないということ。

「角膜清明で表面平滑で黄斑機能も完璧」がよい。
3焦点レンズが挿れられない場合でもVivityなら可といわれているが、私としてはやや懐疑的である。

☞コントラストを低下させるレンズを、すでに感度低下している人に入れるのはよくない。


この先生は、動画の最後で

多くの眼科医に白内障手術を行ってきたが、90%以上は単焦点レンズを選び、多くの場合やや近視気味に合わせる。私自身もそうするだろう。
眼科医としては最良の見え方こそが大事であり、眼鏡をかけることは大したことではない。

日本の紹介動画では、こうはいかんだろう。
冒頭で「公平な視点」と述べた所以。


2023/5/19追記

↑に関し「周りの60歳以上眼科医も、ご自身にPanOptixをどんどんいれてます!`Д´」と関係者、語りき。

眼内レンズ展望 Vivity(2)

X-wave technologyと銘打つのは、革新的でヒ・ミ・ ツ な技術というニュアンスかしらん?

奈辺をXと謳うのか、調べました。

大きいほうは「1μm以下のスムーズな盛り上がり」
小さいほうは「2.2mmの凹曲面」

この同心円状構造等が「先行する波面と遅延する波面」を作り出すらしい。

佐藤眼科 様から引用

アイハンスや旧Miniwellでは不足する加入度数を、回折格子なしで付加を以て「X-wave technology」と称すのであろう。 cf.(別記)


回折格子がないので、ハログレが皆無ではないが少ない。

 

☞続きます。


(別記)
Optical Principles of Extended Depth of Focus IOLs (alconscience.com) から追加。

The emergent wavefront mimics the anterior lens surface shape after light passes through the surface transition elements. The wavefront is delayed when it passes through the central part of the surface transition elements and advanced when passing outside of the central part. The delayed part of the wavefront travels slower and focuses closer to form an image towards the near end of the extension and the advanced part of the wavefront travels faster and focuses further to form an image at the far end of the extension. As the wavefront propagates, it collapses down resulting in the wavefront being stretched forward and backward thereby creating a continuous extended focal range.

●wavefrontが先行するとか遅延するとかの表現は、extended focal rangeにおいてレンズ外側がfarに、同心円がnearに合うという意味っぽい。

真ん中の同心円構造については、

●波形を矩形に成型する働きがある様子。

以上二つが、X-wave technologyのヒ・ミ・ ツ


2023/5/19追記

「wavefrontが先行するとか遅延するとか」は、屈折度が違う物質を通るために実際に光の速度が遅くなるとのことでした。担当さん談。
1μ盛り上がっている部分が、わずかに光速度を遅くするということらしい。担当さん談2。