「第19回兵庫県東部緑内障を考える会」を聴講しました。

●第一演者は近畿大学眼科教授松本長太先生でした。

これは良い!と思ったのは、「簡易に自分で緑内障チェックできるチャート」である。
上記チャートは、印刷⇒回転を自分でする必要があるが、クアトロチェッカーならディスプレイ上で完結し、さらに簡単。

眼科医会はACと協調して緑内障の啓蒙運動中だが、セルフチェック法として拡散したら?と感じた。

●第二演者は井上眼科医院特別顧問富田剛司先生でした。

緑内障OCTを見るうえで、GCCの上下差を見ることが大切である。

GCC(神経節細胞複合体層)の上下差注目とか、Temporal Raphe Signが前視野緑内障検出に有用、というお題は最近よく聞くトピックである。

緑内障点眼薬の比較

上から順に、キサラタン、トラバタン、タプロス、ルミガン、エイベリス。
ルミガンが一番下がるのは経験的に知ってたが、統計的にもそうなんだなっと。が、PAP(Prostaglandin-associated periorbitopathy)=色素沈着、睫毛異常、DEUS=眼球陥凹も一番キツいんですょね~。
エイベリスは眼圧降下効果はやや弱い?が、「DEUS、PAPは起きにくいんです」が売り文句。
すなわち、作用と副作用は表裏であり、「副作用が一切でないが、効き目は素晴らしい」は成立しない、ってこと。

老眼対策の点眼薬(副作用の対策)

1%サンピロを投与している患者さんで充血、頭痛を訴える人がいる。
やや、女性の方に多い印象である。

自己実験してみた。

←は点眼なし、→は1%サンピロ点眼5分後

コリン作動薬であるから、充血はするだろうし、血中に入れば頭痛も起こりうるだろう。しかし、かつて緑内障治療薬として処方していた頃には聞かなかったと記憶する。

緑内障治療している場合と、健康体に処方している場合では、副作用に対する感受度が異なるのかもしれない。


対策は、

  • 涙点を1分程度は抑える。
  • 濃度を0.5%に下げて、点眼回数は増やす。

ただ、点眼を続けていくうちに馴れてくるようです。

低加入度数型の近視抑制コンタクトレンズ

以前、EDoF型の近視抑制レンズについてご紹介した。
当院でもオルソ困難・卒業の際、シード1dayPureを重用している。

今回、そのシードのライバル社?から「低加入度数コンタクトレンズも使えます」という論文[1]-[3]を教えてもらった。

要旨は以下の通り。

+0.50D を加入した低加入度数CL と単焦点CL で近視抑制の比較を行った。

年齢 10~16 歳、近視度数-0.75~-3.50D、乱視度数-1.00D 以下の小児 24 名を2 群に分け、両レンズを 1 日使い捨てで 12 ヶ月間使用した。

装用開始 1 ヶ月後以降で 11 ヶ月間の眼軸長変化量は低加入度CL で 0.09 mm、単焦点CL で 0.17 mm であった。

文中の低加入度CLの実体は、2WEEKメニコンデュオ で、本来は「モバイルライフをサポート」である。
この論文と比べて、症例が少ない & 中立的なエビデンスいるよな、という印象。


ネット渉猟すると、メニコンは欧州でMenicon Bloomを展開している。また、Menicon Bloom Dayなるコンタクトレンズを彼の地で販売しており、

Menicon Bloom Day は、Visioneering Technologies, Inc社が、近視矯正及び近視進行抑制用としてCEマーク認証を取得した、1日使い捨てソフトコンタクトレンズ「NaturalVue®(ナチュラルビュー)マルチフォーカルコンタクトレンズ」のOEM商品であり、この度、当社が欧州において販売する契約を締結いたしました。

然し、

日本国内においては、近視進行抑制に関する規制や承認基準が整備されておりません。本製品の承認も取得しておりません。


かくして、本邦では

Seed=ブレスオーコレクト+シード1dayPure
   VS
Menicon=オルソK+2WEEKメニコン デュオ
という構図と相なる。。


1.ソフトコンタクトレンズによる近視進行抑制とその光学的機序
2.Effect of low-addition soft contact lenses with decentered optical design on myopia progression in children: a pilot study
3.光学中心偏心デザインの低加入度ソフトコンタクトレンズの小児近視進行への影響:パイロット研究. :2の抄訳。

「SPK(点状表層角膜炎)の診方、考え方、治し方@西明石」を聴講しました。

2022/8/6、西明石ホテルキャッスルプラザで、横井 則彦先生(京都府立医科大学眼科学教室 病院教授)の講演でした。

「臨床に活きるわかりみTips」を、ご披歴いただいたので、以下雑駁にご紹介する。

定番のドライアイの治療薬

  • BUT短縮型はジクアス。痛覚レセプターのアゴニストでしみるが、8割がたは1か月で慣れる。最初に「しみる」と言っておき、ステロイドを併用する。
  • 糸状角膜炎型はムコスタ。ムコスタは眼瞼と角膜の摩擦を軽減する。
  • ヒアルロン酸は水分を吸うので、濃度が濃いと逆に働くこともある。京府病院ではあえて薄めて処方することもある。
  • ちなみに、欧米ではムコスタ、ジクアスが認可されていない。

その他の治療薬

  • フラジオマイシンを含む薬剤ベルベゾロンF、リンデロンAは薬剤性角膜障害、皮膚のアレルギー障害を起こす。そのため、一切使わない。リンベタを使え!
  • BAKの透過亢進、知覚神経の障害が起こると角膜基底細胞の分裂障害が起こり、上皮細胞の被覆をおぎなうため上皮細胞が動き出す。従って、上皮細胞の移動サインは危険サインである。
  • タリムスは痛いし熱いことがる。痛がる人には効かない。その場合、やや弱いがパピロックミニを処方すると痛くないはず。

マイボーム腺炎角膜上皮症

  • 角膜フリクテンの形をとるものと角膜上皮の全般障害を来るものがある。
  • マクロライド少量長期療法を行う。これはクラリスロマイシン200mg/日を最長3か月まで使う。にきび治療に使う薬剤であり、40歳以下ならP.Acnes由来なので100%治る。40歳以上ではP.Staphyloに変わるためか100%とはいかなくなる。
  • クラリスロマイシンにはステロイドと同様の抗炎症作用がある。しかも、ステロイドと違ってリバウンドしない。→質問「アゾマイシン点眼は使わないのでしょうか?」 答え「2週以後の指示が面倒なので使わない。」

角膜全面のSPK

  • フルオが動けば点眼で治る。
  • フルオが動かなければ涙点プラグのみ。

緑内障薬剤性類天疱瘡

  • 緑内障薬剤性類天疱瘡をおこすすと瞼球癒着(円蓋部をみると結膜が引きつれている)が起こる。点眼中止しステロイド使う。

コンタクトレンズの酸欠

  • 全面障害が起こっている場合には、ワンデーCL+BAKフリーのジクアス

抗がん剤による薬剤性上皮障害

  • 抗がん剤TS-1:テガフール、ギメラシル オテラリルカリウム
  • カドサイラ
  • 担当医に連絡してほかの薬に変更を依頼する。

講義を聴いて私の感想

  • 基礎から説き起こすご高演が多い中、「いきなり、ギターソロ」なお役立ち講義だった。