第25回兵庫県眼科フォーラム@ポートピアホテルを受講しました。
黄斑円孔は初回閉鎖率が95%に達する。
閉鎖しない5%については、内境界膜を近位網膜からはがしたうえで有形移植するという手法を採用しているということでした。
初回の円孔手術でも、かつてのように内境界膜を剥いて終わるのではなく、内境界膜を残して裏返しにかぶせるとか、↓のような各種組織を詰め物する手法が開発されている。
黄斑円孔は、ほぼ完治するステージに入ったということですね。
第25回兵庫県眼科フォーラム@ポートピアホテルを受講しました。
黄斑円孔は初回閉鎖率が95%に達する。
閉鎖しない5%については、内境界膜を近位網膜からはがしたうえで有形移植するという手法を採用しているということでした。
初回の円孔手術でも、かつてのように内境界膜を剥いて終わるのではなく、内境界膜を残して裏返しにかぶせるとか、↓のような各種組織を詰め物する手法が開発されている。
黄斑円孔は、ほぼ完治するステージに入ったということですね。
黄斑浮腫症例にラニビズマブBS(=ルセンティスのバイオシミラー)を硝子体注射して、いまいち浮腫がひかんなーという症例で、VEGFに加えてAng-2(Angiopoietin-2)という悪玉因子にもきくバビースモにスイッチしてみましょうと提示する。
薬価はラニビズマブBS79,348円→バビースモ163,894円と倍するので、患者さんも「効きますか!」という反応。
実際に2倍効果があるのかというと、どうなんだろう?
以前、神戸大学の三木 明子先生が質問に応える形で
バビースモを実際に使った手応え、切れ味はどうか?→AMDの未治療についてはバビースモでよい。治療スイッチについては症例不足で不明。
担当者がいうには、三木先生が近く「スイッチ症例では3割から5割奏功する」みたいな論文を発表されるらしい。症例数は20例くらいらしい。
どういう症例がスイッチに適するのか?奏功の判断基準などをぜひ知りたいものである。
2023/10/7追記
上記論文は、Short-Term Outcomes of Faricimab Treatment in Aflibercept-Refractory Eyes with Neovascular Age-Related Macular Degeneration として発表されました。
簡約すると、「55症例のアイリーア無効例で、バビースモにスイッチしたところ、網膜中心厚が有意に減少した」「網膜内液は16.4%で減少、網膜下液は40%で減少」
担当さんがいっていた40%というのは網膜下液のことを言っているようだ。
下図bなら、そこそこ効いてる?という印象ではある。
2023/10/15追記
当院のラニビスマブBS→バビースモの自験例では、三木先生の発表と同様の印象です。つまり視力が改善するほどではないが、網膜厚が減る症例がかなりの確率で存在する。
患者さんとしては「よくなりましたー!」という感じでもないが、ドクターサイドとしては「明らかに改善!」「やってよかったですね」という状況。
加齢黄斑変性のうち、日本ではほとんどが滲出型だが、欧米では萎縮型がほとんどである。
従来の抗VEGF薬は滲出型が対象で、萎縮型の薬剤は開発困難とされてきた。
今回、Syfovreが萎縮型治療薬としてFDA承認された。
この薬は、以下のPathwayのうち
C3という補体を阻害することによって効果を発揮する。(図のAPL-2というのがSyfovre)
ただし、すでに起こってしまった変性を元に戻せるわけではなく、あくまで遅らせるだけ。
毎月投与によって、20%程度発症を遅らせることができたということである。
萎縮型はあまり症状は出ない上、薬剤自体$2190 per vialもするので、いろいろ難しいでしょうね。
参考URLs
Dry AMD Treatments: An Ophthalmology Resident’s Guide (eyesoneyecare.com)
Syfovre for dry macular degeneration | Scott E. Pautler, M.D. Tampa (scottpautlermd.com)
Syfovre – Dry Macular Degeneration Treatment in Sarasota, Bradenton & Lakewood Ranch FL (retinacareflorida.com)
2023/3/11、神戸アイセンターで山城健児 高知医大教授の講義を受講しました。
パキコロイドは以前も書いた、分かりにく~い概念である。
講義後「論点が整理され、明解になった」とおっしゃるが、小生、一層わからん次第。
御高演によると、
と分類されてきたが、欧米学派はPCVをパキコロイド関連に入れようと画策している。
しかし、PCV症例を多く見ている日本人学者は「それは、無理があるやろ」といってるらし。
…… ・ω・ … ・ω・ … ・ω・ …………
かくの如く、黄斑屋さんは、昔っからterminologyをめぐり「咄!」「點!!」をやってる。
市井の臨床医は、しかし、高僧には敬意を払いつつ、宗教論争を遠ざけねば、と感じる。
今回の講義から日常臨床にフィードバックできること
商品名 | 効き目 |
ルーセンティス | 弱 |
ラニビズマブBS(≒ルーセンティスのゾロ) | 弱 |
アイリーア | 中 |
バビースモ | 中(~強) |
ベオビュー | 強 |
2024/10/16追記
「欧米学派はPCVをパキコロイド関連に入れようと画策」についてだが、欧米学派に一票を投ずる。慢性型ICSCとかPCV。のOCT像はよく似ている(と、感じられる)。慢性型ICSCでもdouble layer sighはみられる(と、思う)
2022/7/23の「 第8回黄斑疾患フォーラム in Hanshin」を聴講しました。
第一演者は県立尼崎病院、茶木俊光先生で「加齢黄斑変性の治療でアイリーアにスイッチバックした症例」
・1例目:ベオビュを使っていたが、動脈閉塞、静脈閉塞を起こしたのでアイリーアにスイッチした。
・2例目:ベオビュにしたが効かず、アイリーアにスイッチしたら奏功した。
質疑応答
・2例目で、なぜアイリーアが奏功したのか?→ルセンティス、ベオビューはVEGF-Aにしか働かないが、アイリーアはVGEF-A以外にVEGF-B、PIGFにも作用するからではないか?
・抗VEGF薬の使用順は?→高齢者、基礎疾患がある場合には全身合併症が少ないルセンティスから使う。
次演者の杏林大学片岡恵子先生の話は「滲出型黄斑疾患の最新治療2022」
・アイリーアはルセンティスよりもターゲット親和性が高いため、よく効く。
・ベオビュはターゲット親和性は高くないが、大量投与のため効く。
講義を聴いて私の感想
・市中病院は「アイリーア or バビースモ」の二択。
・ベオビュは「眼内炎や血管閉塞が起こりやすい」で、使い難い。
・〇〇マブ系の薬は高すぎる! 最安の「ラニビズマブBS」のハンズオン講義を望む。
2022年7月23日に、「バビースモ発売記念講演会 in 神戸」を聴講しました。
講師は神戸大学楠原 仙太郎先生と三木明子先生でした。
・従来の抗VEGF薬はVEGF(vascular endothelial growth factor、血管内皮細胞増殖因子)という悪玉因子のみが対象だった。
・一方、この新薬はVEGFに加えてAng-2(Angiopoietin-2)という悪玉因子も対象である。「抗VEGF+抗Ang-2」=バイスペシフィック抗体と呼ぶ。
・Ang-2は、Ang-1のアンタゴニストである。Ang-1は善玉因子で、Tie2レセプターを介して血管壁細胞の安定性、内皮細胞間のtight junctionとBlood Retinal Barrier機能維持に寄与する。
・アイリーアに対して非劣勢が示された。統計有意差はないものの、バビースモ≧アイリーアという印象。
PRN(Pro ne Nata 必要時投与法)、TAE(Try and Extend 計画的投与法)とも、アイリーアは最大延長3か月だが、バビースモは最大4か月まで延長可能。
アイリーア | ルセンティス | ベオビュ | バビースモ | |
一般名 | アフリベルセプト | ラニビズマブ | ブロルシズマブ | ファリシマブ |
取扱い | バイエル、参天製薬 | ノバルティス | ノバルティス | ロシュ、中外製薬 |
適応疾患 | ・中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性 ・網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫 ・病的近視における脈絡膜新生血管 ・糖尿病黄斑浮腫 ・血管新生緑内障 | ・中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症 ・網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫 ・病的近視における脈絡膜新生血管 ・糖尿病黄斑浮腫 ・未熟児網膜症 | ・中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性 ・糖尿病黄斑浮腫 | ・中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性 ・糖尿病黄斑浮腫 |
薬価 | 138,986円 | 142,570円 | 138,725円 | 163,894円 |
※上記以外に、「ラニビズマブ BS」がルセンティスのバイオシミラーとして、千寿から薬価79,348円で発売されている。適応疾患は「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性、病的近視における脈絡膜新生血管」2023/1/13から「糖尿病黄斑浮腫」も適応疾患に追加さた。2023/10から「網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫」も適応疾患に追加された。
以下のような質疑応答があった。
・実際に使った手応え、切れ味はどうか?→AMDの未治療についてはバビースモでよい。治療スイッチについては症例不足で不明。
・視神経繊維に対する影響はどうか?→抗VEGF薬は視神経繊維に不利に働くが、バビースモは抗Ang-2の働きが有利に働く。
・バビースモはアイリーアよりも、網膜浮腫に対する効果が高いようだ。
・ただ、薬価は高い & 実績が浅い。もう少し症例蓄積を見る必要がある。
2022/7/31追記。以下の薬剤師サイトがよくまとまっています。
バビースモ(ファリシマブ)の作用機序:類薬との違い・比較【加齢黄斑変性】 – 新薬情報オンライン (passmed.co.jp)
2022/1/23追記
神戸大学眼科三木明子先生によると、
新生血管黄斑症での治療スイッチは
・すぐ効くこともあるが、1,2か月たってから効いてくる場合がある。網膜下高反射病巣 (subretinal hyper-reflective material: SHRM)が出ない限り続ける。
・細動脈瘤がある場合にはよく効く。
↑
SHRMは、滲出型加齢黄斑変性患者の視力及び線維化組織と相関し、抗VEGF薬の治療効果予測に有用であるとされる。cf. Kawashima, Y., Hata, M., Oishi, A., Ooto, S., Yamashiro, K., Tamura, H., Miyata, M.,Uji, A., Ueda-Arakawa, N., and Tsujikawa, A. (2017) Association of Vascular VersusAvascular Subretinal Hyperreflective Material With Aflibercept Response in Age-related Macular Degeneration. American journal of ophthalmology 181, 61-70
東京大学講師小畑亮先生の「加齢黄斑変性の長期管理、病診連携」について書く。
東大眼科では萎縮型AMDに着目しているが、下記に示すようにとらえ方であり、新生血管の有無に着目している。
「なぜ委縮型AMDに目を向けるか」という切り口であり、特に「萎縮型AMDに対する治療薬」に大いに期待したのだが、
は、一瞬提示されただけであった。治験進行中であり、あまり話す内容がなかったのかな?「萎縮型は失敗続き」という記事も見受けられ、常識的に考えて萎縮してしまった組織に対する治療は難しいだろうな、とは想像する。
後半の話は、東大のAMDに対する治療プロトコルや効果判定の話であった。
と振り分けているとのことで、まぁ、そうでしょうな。という感じ。
他に注目できたのは、「注射連携」というお話であった。
硝子体注射治療は高価である。一回当たり1割負担でも1万円超もする。しかも、維持できるか微妙なことあり、、患者さんは治療継続できない。
そこで、
のように、役割分担をすればうまくいく!といった趣旨であった。
既に、1都3県の20施設と連携し、非常にうまく運用されている印象。東京大学は、枠組み作りが上手だと感心した。大阪府や兵庫県では、なかなかこのようにはいかない気もする。
Voluntary Exercise Suppresses Choroidal Neovascularization in Mice が原文です。
tldrで表示します。
マウスの新生血管に対する自発運動の影響を調べた。
予め4週間、マウスを回転ホイール付きのケージと、ホイールなしのケージに入れておいた。各グループに対して、レーザーで新生血管を作った後、どの程度回復するのかを見た。
すると、回転ホイール付きのケージに入っていた運動マウスは、ホイールなしの運動なしマウスよりも新生血管の容量が45%も縮小していた。
予め運動させず、新生血管を作ってから運動しても効果はなかった。
普段から運動していると、加齢黄斑変性症に対しても効果があるということは、経験的に知られていたのですが、動物実験で示されたのは初めということです。
Let’s get physical(exercise)!
「パキコロイド症候群」は、眼科のbuzzFeedである。
pchychoroid=pachy(厚い)+choroid(脈絡膜)から日本語では「脈絡膜が分厚い症候群」
以下、日本の眼科[1]から引用します。
中心窩脈絡膜厚が 200〜250 μm 以上で,Haller 層血管の拡張に加え,IA で
脈絡膜血管透過性亢進所見を認め,RPE の異常を伴い,眼底に drusen が少ないという特徴を有するものとされている。
しかしながら、
最も重要であるはずの,脈絡膜厚の増大所見についても,絶対的な数値基準が設けられていない[1]
PSD(Pachychoroid spectrum disorder) という疾患概念が Freund らによって提唱され,多くの研究者から賛同を得ている。何故ならば,後述の CSC,pachychoroid pigmentepitheliopathy (PPE),pachychoroid neovasculopathy (PNV)や PCV といった PSD の病型を,一連の変化に基づく同一スペクトラム上の疾患である可能性を示したからである。
従来から、陳旧性の中心性漿液性網脈絡膜症が、将来の黄斑変性疾患の足場になるということはいわれていたのを、OCT所見をもとに「スペクトラム」として定義しなおしたという感じかな。
いつも思うが、海外の研究者はこういった「概念」「フレームワーク」をバーンと打ち出すのが得意だ。日本人研究者や、臨床医はそれらを追っかけるのに必死で、身内で重箱の隅をつつくような定義ごっこをしている印象がある。
国民性の違いかな?違いなんやろうな。。
[1].日本の眼科 92:5 号(2021)
前回の記事でも書いたが、黄斑症のサプリメントは「軽症例への予防効果はなく、中等症以上のリスク眼に対して進行予防が認められた。」と結論づけられている。
すると、軽症の黄斑疾患(軽度のドルーゼン発生がある程度)患者さんからは「サプリメントとらなくていいんですか?!」といわれる。
そういう方には、
最近は減ってきたけども、いまだに喫煙習慣を保っている人がいる。指摘されるのも嫌なんだろうなーとはおもうが、やっぱし吸わないほうがいい。
Smoking and age-related macular degeneration: a review of association | Eye (nature.com)
赤肉や加工肉、マーガリンやバターなどの脂肪、高脂肪乳製品、揚げ物などが多い食事を取っている人では、そうでない人と比べて後期AMDの発症率が大幅に高いことが分かっている(オッズ比3.44、95%信頼区間1.33~8.87、傾向P値=0.014)
緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種。眼の中では黄斑部に多く含まれており、黄斑細胞を光線酸化から保護する。加齢、紫外線、喫煙などで減少するが、体内では合成できないため食品から摂らなければならない。
<多く含まれる食品>
ケール,ほうれん草,ズッキーニ,ブロッコリーなど
※黄斑変性症の予防には 1 日 6mg 程度摂取とされてるが、食品から摂る場合ではほうれん草約 50 g,ブロッコリー約 300g に相当。
鮭などの海洋生物に多く含まれるカロテノイドの一種。非常に強い抗酸化作用がある。脂溶性のため油を使った調理法で吸収率が上がる。にんじんやトマトと組み合わせると吸収が悪くなる可能性もある。
<多く含まれる食品>
北極エビ,オキアミ,プランクトン,鮭