一時期、よくきいたアポダイズ回折って最近あまり聞かんな~、という件を調べました。
Examples of diffractive multifocal IOL designsより引用
アポダイズ回折とは「回折格子の高さや幅を、周辺から中心に向かって変化させる」ことによって、
- 明るい環境(瞳孔が小さいとき):主に中心部が働き、遠方と近方の光がバランスよく分配される → 日中の明るい環境では、中心部の回折構造が効き、近くの文字やスマホも見やすい。
- 暗い環境(瞳孔が大きいとき):周辺部は遠方光に多く振り分けられるようになっている → 夜間や薄暗い環境では、近方視よりも遠方視が優先されるため、運転などに有利。
- ハロー・グレアの軽減→光の分配を段階的に変化させることで、単純な多焦点レンズよりもコントラスト低下や眩しさが抑えられる。
ActiveFocus Restorで2017頃風靡したが、PanOptixやSynergyでは採用されていない。Odysseyのすりガラス状エッジや回折リング高↓はハログレ対策であって、アポダイズ設計とは無関係。
ではなぜ、アポダイズ回析が採用されなくなったかというと、以下のようである。多分。
- 瞳孔径に依存して光配分を変える設計に無理があった。瞳孔径や瞳孔反応性は、年齢や個人差が大きい。ので、瞳孔径に依存する設計は理論上よさげだが、実用上難点があった。
- 同様に、瞳孔が小さくならないと、中心部径3.6mmの回析構造が働かず近方視力を稼ぐことができない。
そこで、ALCONはアポダイズ設計を捨てて、PanOptixでは中心部径4.5 mmの非アポダイズド回折を採用したらしい。
称してENLIGHTEN技術であり、「これによって約 88 %の光が網膜へ到達するように設計されている」「周辺部の単焦点ゾーンが狭まることによる遠方視力低下は、遠方パワー配分を44%と増加させることによって補っている」といってる。
Gemetricに対するコメントも、上記経緯から漸く理解できる..のである。