AMOテクニスのPureSee眼内レンズについて

AMOは新命名がお好きなようで、今次は「PureSee=屈折型多焦点レンズ」と称する由。

過去の命名遍歴
・Symphony:EDoF型(=焦点深度拡張型)=エシェレット回折型(2焦点)

・Synergy:連続焦点型=エシェレット回折型(2焦点)+回折型(2焦点)

・Odyssey:改良型連続焦点型

・PureSee:屈折型多焦点レンズ

EDoFだけど回析格子がないので、ハログレが発生しないと謳う。
屈折型多焦点レンズとは「後面レンズ2.4mnm部分のみカーブを変えて、焦点深度を深める」ことにあり、加入度数はヒミツだけど+2.0D位らしい。


Optical and Visual Outcomes of a New Refractive Extended Depth of Focus Intraocular Lens より引用

Eyhanceの大幅改良バージョンというが、デフォーカス曲線みると単焦点レンズやアイハンスの遠方~中間距離をやや膨らかしただけよぅな気もする。
Vivity+Panoptix  vs PureSee+Odyssey のMix&Match対決を、大いに期待する。

 


MRさんによると、

  1. PureSeeは、Symphonyの後継レンズとの位置づけ。VivityがActiveFocusの後継みたいな感じかな。
  2. Synergyは発売中止で、Odysseyに全面移行。

Pairing手法の最新情報

第129回日本眼科学会総会での「HOYA協賛 多焦点眼内レンズのペアリング」をオンライン視聴しました。
スクショ厳禁につき、テキスト文及び公開論文のみ記します。

実臨床例は和歌山医大の1例のみで、あとは文献紹介でした。

和歌山県立医科大学 岩西宏樹先生
  • 中間距離がやや遠い。「日本のキッチンは欧米より低い、などの日本の住環境を考慮されている」
  • 質疑応答:中間と遠方重視なら両眼Gemetricで、近方重視ならGemetetric+GemetrticPlus.両眼GemetricPlusは時期尚早であろう。
西眼科病院 西悠太郎先生
  • Gemetricはハローが少し出る傾向がある(軽度)。暗所での瞳孔径が大きい症例では慎重な適応検討が求められる。
  • NINO Study:Paringは両眼Gemetricと同等の遠方中間視力で、両眼GemetricPlusと同等の近方視力。∴Paringが遠方から近方までの眼鏡フリーを達成する最もバランスのとれたグループ。
  • 質疑応答:Paringのほうが、両眼GemetricPlus入れるよりも近方視力が良いのはなぜか?→MixAndMatchと同じような効果(加算効果ということかな?)が考えられるが、今後の検討にゆだねる。
慶應大学 四倉絵里沙先生
  • 両眼GemetricよりもParingのほうが薄暮所、明所での近方での視力が良い。↓

やはり、実症例1例では物足りんな~。

佐々木先生は「オールラウンドに使える」かもしれない、と前向き評価でした。
Vivity+PanoptixのMix&Match vs Gemetric Paringについての発表を楽しみにしております。

「近視抑制治療の最前線ー本格始動の前に知っておくべきポイント」を聴講しました

筑波大学医学医療系眼科 准教授 平岡孝浩先生の講演でした。@  第75回神戸臨床懇話会

外遊びの重要性
  • 大都市以外でも、緯度が高い北海度、青森、宮城に近視が多い。これは、日照時間が少なく、家にこもりがちなため。
  • 一日2時間以上外に出るとよい。屋外時間が長いと、近業が長くても近視になりにくい。つまり、キャンセル効果がある。
  • 台湾では国策でやっており、近視有病率を減らしてきた。日本では「外あそび推進の会」活動をしている。
特殊デザイン眼鏡

●デフォーカス原理によるもの:周辺網膜の遠視性フォーカス(フォーカスが網膜より後ろ)が良くない。そのため周辺部を近視性デフォーカスにする。

  • 大いに期待されたマイオビジョンだが効果がなかった。鼻眼鏡や眼球運動にともない効果が減弱する。☞小生過去ログでも経緯を詳述してます。
  • MyoCare(Zeiss):円柱型リング。1年で有効であるらしい。長期結果は未だ。☞Myokidsの後継、つまり4代目MCレンズ?Zeissに問い合わせ中。→「MyoCareレンズは日本国内では未承認の為、販売未定であり、提供できる資料はない」とのことでした。
  • DIMSレンズ=Defocus Incorporated Multiple Segments 400個埋め込まれている。近視性デフォーカスを形成する。☞これも掲載済み
  • Stellest(Essilor会社):高度な非球面性を有する小型レンズが、同心円状に埋め込まれており近視性デフォーカスを形成する(DIMSレンズに似たコンセプトである)。☞これは初めて聞いた!

●Contrast理論によるもの:網膜における強いコントラスト信号が眼軸長過伸展のトリガーとなっており、逆にコントラストを低減させる眼鏡を装用すれば近視進行を抑制できる。

  • DOT(SightGlass社)真ん中は単焦点、周りはdiffusion optics technology。☞これも既述
アトロピン点眼
  • ATOM2、ATOM-J、LAMPstudy、Orange Study:「濃度依存性に屈折度、眼軸長抑制効果がある」との結果。副作用とやめた後のリバウンドも同様に濃度依存性であった。0.025%(←参天のリジュセアの濃度)はリバウンドがきつい。十代後半まで長く使うことを推奨する。
オルソケラトロジー
  • 6歳~8歳から始めたほうが良い。抑制効果が高い。
  • リバウンドは?:14歳より若い年齢でリバウンドしやすい。15歳までは続けたほうが良い。
  • 結論:6-8歳で開始、18歳までは継続が理想的である。
  • アトロピンとオルソの併用。が結構強い効果がある。75%有効。
多焦点ソフトコンタクトレンズ
  • デフォーカス型:MiSightクーバービジョン
  • EDoF型:シード1dayPure
    デフォーカス型とEDoF型では、効果に差がなかった。
  • JJ&J ALBILITI:眼軸長抑制効果高い。;7D,10Dを加入している!のでもっとも効くらしい。☞これは初めて聞いた。J&Jに問い合わせ中。→「日本国内では承認されておらず、資料を全く持ち合わせていない」とのことでした。
光線療法
  • Red Light:Repeated Low-level Red-Right(RLRL):650nm,1600 lux、3分×2/day。7割きく。最強と謳われていたが、治療後後の網膜障害、中心窩での錐体の密度低下が観察される。中国では、製造中止となり推奨治療から外されてしまった。
  • Violet Oight:TLG-001J(バイオレットライト照射KB)で治験中
  • Blue Light KB:Mypoia X DopaVision
質疑応答
  • 従来の姿勢とか、外遊びの重要性についても伝える。そのうえで、患者さんの希望があれば上記治療について伝える。やりたくないものは続かない。
  • おすすめ:オルソ>多焦点ソフトレンズ。特殊構造KBが本格化すればなおよろしい。
  • オルソで間歇性外斜視の子供。寝ている間のずれが発生することがある。間歇性であっても、斜視があると難しい。手術をして眼位を正位にしてから治療開始する。アトロピンとか、多焦点ソフトレンズのほうがよいであろう。
  • ブルーライトカットメガネは?:かえって逆効果であろう。エビデンスがない。
  • 多焦点レンズも小1からできる。特に女の子はできる。

Panoptix vs Synergy・Odyssey vs Gemetric

Alconによると、、、

Odyssey・Synergyに対して

AはOdyssey、BはSynergyですね。
つまり、Panoptixのほうがハログレが少ないといいたいようである。

VivinexGemetricに対して

・Gemetricのように回折格子の幅を3.2mm程度に制限することはActiveFocus時代にさんざ実験済みで、単焦点ゾーンが広がるため遠方はよく見えることになるが、瞳孔径に依存した見え方を避けられえない。
・そのため回折格子幅を4.5mmにした。
・単焦点ゾーンが狭まることによる遠方視力低下は遠方パワー配分を44%と増加させることによって補っている。


以上は、Alconの一方的言い分なので、J&JとHOYAの言い分も機会があったら書きます。

Mix&Match法「PanOpitx,Vivity臨床データアップデート、適切なIOL選択」をみました

アルコン・ライブラリーから視聴しました。
佐々木洋先生のMix&Matchについてです。
以前のFEST法は、両眼同一レンズのモノビジョンでしたが、Mix&MatchはEDoF+3焦点(≒Vivity+PanOptix)。

EDOFはVivity、3焦点はPanOptix、連続焦点型とはSynergy を意味するようである。

OSI(Objective Scattering Index)値は、視力コントラスト感度と相関がある。
単焦点だと1.1くらい。2.0以下なら良いらしい。

Mix&Match法での両眼視力
「50cmまでの視力は両眼PanOptixとMix&Matchで変わらないのは、コントラスト感度が良いので両眼加算大きい」とのことだが、グラフ見るとMix&Matchのほうが良いんでは?

海外論文の引用ですが、「Mix&Matchは視力も満足度も高い」

優位眼にVivity 非優位眼にPanOptixを入れると一番ハログレが少ない。


視力、コントラスト感度の両眼加算を勘案すると

  • 「優位眼にVivity 非優位眼にPanOptix」のMix&Match法が、いいとこどりできて優秀。

 

2025/5/1追記

Mix-and-match vs bilateral trifocal and bilateral EDOF intraocular lens implantation: the spline curve battle” によると、

According to our study, PMG participants with the Vivity and Panoptix IOLs presented the highest VA curves, followed by the BMG ones who received bilaterally the Panoptix IOL and the BXG ones who received bilaterally the Vivity IOL.

PMG(Premium Monovision Group)は「優位眼Vivity 非優位眼PanOptix」です。

「臨床成績から見るTecnis Odysseyの本質」をみました。

J&Jさんのプロモーション動画だったのですが、みてみました。

Odysseyは、連続焦点型眼内レンズSynergyの進化型というとらえ方です。

以前にも書いたけど、回析格子のエッジが滑らかになり、高さも2/3になってるので、特にスターバーストが出にくいということ。

 

「デフォーカス曲線が-0.5D~+0.5Dまでほぼ直線である!そのためtargetずれに強い」のも既出

 

回析格子の構造変化により、synergyほどには近方が見えないので、first negativeを選択する。


だいたい、いままでに聞いたことがある話でした。

先日のPairing手法といい、白内障手術周りの技術革新から受ける印象は、KPE無縫合手術の盛り上がりを思い起こさせる。

次回は、佐々木洋先生のMix & Matchについて。

「網膜硝子体手術 Update:術野の詳細観察が可能にする最新の術式とその威力」を聴講しました。

関西医大教授 今井 尚徳先生@西部地区眼科医会総会のご講演でした。

面白いと思ったのは

1.眼内レレズのフランジ手術を行う際に術中OCTを併用すると、眼内レンズの傾斜が抑制できる。

2.黄斑円孔に網膜フラップを設置するときも、術中OCTで正しくZ軸方向の位置同定が可能となる。

3.CME切開は、硝子体注射の難治症例のうちの50%~60%に対して効果がある。

教授就任式でいわれていた「単に手術がうまいだけというのではなく、それを定量的に科学に落とし込む」という意味合いがよく了解できました。

HOYAの眼内レンズVivinex EMについて

アイハンス(によく似たプロフィールのレンズで、EMとはEnhanced monofocalの意。

すなわち、「焦点深度深めで、farのdefocusが平ら気味、保険適応が効く」レンズである。

Defocus Curveは以下の通り。 アイハンスはこれ

構造は Vivinex Impress | Hoya Surgical Opticsによると、

同心円様の構造がわずかにみえる。

アイハンスは全くそのような構造物をもたない。

HOYAが主張する

アイハンスは0.5D~0.75D付加だが、EMは-1.0D付加できる。

というのは、このわずかな構造調整に依るのかもしれない。

新しい多焦点眼内レンズの選択手法「Paring」について

多焦点眼内レンズの焦点深度を深める手段として、HOYAからParingという新手法が発表されています。

左右のレンズでdefocus曲線のpeak値を変えるという点が新しい。
peak値のみを変えるのであっって、peak位置を変えるわではないのも佳い。

Vivinex Gemetricが通常の3焦点レンズで、Vivinex Gemetric Plusが近見のpeak値を底上げした3焦点レンズ。

Vivinex GemetricとVivinex Gemetric Plus

Paring時には近見視力が改善する。

 

 

 

 

 

 

 

佐々木先生のFEST法を敷衍してるようでもあり、一眼手術後に近見満足度が高ければ対眼にもGemetricをいれ、不満ならGemtrci plusを入れる戦略である。(ただし、優位眼、非優位眼の選択は採らないらしい)

ミニウェルフュージョンシステムにも通じるが、回折格子の口径が全く同じというのが売り。
この部分が比較的小さいことにより、夜間ハログレをおさえ得るというのがHOYAの主張なのである。


後発なだけあって、いろいろと取り入れてるなとは思う。

日本ではようやく挿入され始めたばかりで、今度の日眼で一か月後の経過が発表される。
発表を聴いて、追ってご報告いたします。

 

電子処方箋対応(セカンド証明書編)

前回までで、HPKIカードの電子署名モジュールは自作できた。

が、本番カードが来ないので、セカンド証明書を使うしかない。
そして、その症例報告は皆無である。

緒言
  • 物理HPKI証明書の知識は不要。☞ サーバーが署名して、ローカルにxmlを返却する仕組み。
  • ローカルマシンとサーバー間のHandshakeが、分かりにくい。
ローカルマシンとサーバー間のHandshake

初見時の感想は「よう分からんナ~。分からんものを、使う気にならん~」

そこで、「雰囲気で使わずきちんと理解する!整理してOAuth2.0を使う」を読んで、ブラウザー挙動から動きを探った。
(FIDO(=Fast IDentity Online)認証を想定、用語はOAuth2.0とOpenIDで異なるが、OAuth2.0用語に統一)

cf.  セカンドHPKI証明書の覚書きWiki

クエリパラメータの説明 KeyCloadの説明
セカンド証明書署名ライブラリー

物理カードモジュールとは異なり、多業者が参入しているわけではない。
現状 HPKIセカンド証明書リモート署名ライブラリ一式Ver2.10 一択。

提供ライブラリーには、

  1. ExamplePublisherClient.exe
  2. RemoteSignatureClientAdapter.exe
  3. RemoteSignatureClientService.exe

が含まれている。

うち、ソース提供があるのは 1.ExamplePublisherClient のみ。
2.3.は完全にブラックボックスで、リバースエンジニアリング厳禁とある。

役割分担の考察
  1. RemoteSignatureClientAdapter.exeは、ポート番号3000を待ち受けするサービス。タスクスケジューラに登録する。
  2. RemoteSignatureClientService.exeは、ポート番号5000を待ち受けするサービス。タスクスケジューラに登録する。
  3. 上記ポートのリスニングは1.の起動時に走るNode.jsサーバーが担当する。
  4. ExamplePublisherClient.exeは「OAuth2.0+PKCE+OpenID+スマホ認証」のHandshake図で記した煩雑なトークン処理をRemoteSignatureClientAdapterに投げる。🔹 KeyCloakで「生体認証」が完了。
  5. 4.で受け取ったIDトークン+「HPKIセカンド電子証明書管理サービスクライアント証明書」を、(WebAPI選択の場合は)RemoteSignatureClientService経由で管理サーバーに渡す。🔹 「生体認証」+「所有認証」が完了。
  6. 5までが成功すると、管理サーバー上の「HPKI セカンド電子証明書」を使う権利が生じ、PrescriptionDocumentのハッシュ値を管理サーバーに送付する。管理サーバーはこのPrescriptionDocumentのハッシュ値と、管理サーバーがもつKeyinfo要素とSignedProtperties要素の参照3要素を、管理サーバー上の「HPKI セカンド電子証明書」の秘密鍵で署名しPrescriptionSign要素としてJSONで返してくる。
  7. ローカルで処方箋のcsvからPrescriptionDocument要素を作り、6.のPrescriptionSign要素を付加して、電子署名付き処方箋.xmlが完成。

大枠、こういう流れになってると思う。


結語
  1. RemoteSignatureClientAdapterとRemoteSignatureClientServiceの相当物をスクラッチから作るのは、できなくはなかろうがかなりの難題であり、かつ、セキュリティホールができるだろう。MedisがFindexに委託したのもこの所以かもしれん。
  2. ExamplePublischerClient.exeは、WebAPIを選択すると、署名APIUrlの5000ポート、つまり、RemoteSignatureClientServiceを使う。一方、ライブラリを選択すると、直接管理サーバーの署名APIをたたいているようにみえ、つまり、RemoteSignatureClientServiceを使わないようだが、うまくは動かない。
  3. 2のWebAPI利用なら、セカンド証明書電子署名モジュールは自作できる。著作権は「一般財団法人 医療情報システム開発センター」および「株式会社ファインデックス」帰属なので、Github公開できないがC#erなら楽勝。

この一連のサービスは遠からず、有料化されるらしい。
有料化されるまでに、本番カード届くのかナ?!