黄斑疾患の食べ物

前回の記事でも書いたが、黄斑症のサプリメントは「軽症例への予防効果はなく、中等症以上のリスク眼に対して進行予防が認められた。」と結論づけられている。

すると、軽症の黄斑疾患(軽度のドルーゼン発生がある程度)患者さんからは「サプリメントとらなくていいんですか?!」といわれる。

そういう方には、

【禁煙】

最近は減ってきたけども、いまだに喫煙習慣を保っている人がいる。指摘されるのも嫌なんだろうなーとはおもうが、やっぱし吸わないほうがいい。

Smoking and age-related macular degeneration: a review of association | Eye (nature.com)

【肉食を控える】

赤肉や加工肉、マーガリンやバターなどの脂肪、高脂肪乳製品、揚げ物などが多い食事を取っている人では、そうでない人と比べて後期AMDの発症率が大幅に高いことが分かっている(オッズ比3.44、95%信頼区間1.33~8.87、傾向P値=0.014)

PubMedCLOUD (carenet.com)

【抗酸化食品を摂る】

  • ルテイン

 緑黄色野菜に多く含まれるカロテノイドの一種。眼の中では黄斑部に多く含まれており、黄斑細胞を光線酸化から保護する。加齢、紫外線、喫煙などで減少するが、体内では合成できないため食品から摂らなければならない。

<多く含まれる食品>

 ケール,ほうれん草,ズッキーニ,ブロッコリーなど

※黄斑変性症の予防には 1 日 6mg 程度摂取とされてるが、食品から摂る場合ではほうれん草約 50 g,ブロッコリー約 300g に相当。 

  • アスタキサンチン

 鮭などの海洋生物に多く含まれるカロテノイドの一種。非常に強い抗酸化作用がある。脂溶性のため油を使った調理法で吸収率が上がる。にんじんやトマトと組み合わせると吸収が悪くなる可能性もある。

<多く含まれる食品>

 北極エビ,オキアミ,プランクトン,鮭

黄斑疾患のサプリメント

眼のサプリメントとして販売されているものは数多くありまるが、エビデンスが確立されているものは少ない。
オキュバイトとルタックスは、エビデンスが証明されている数少ないサプリメントといえる。

それは、以下に示すような一流の研究結果が示されているからである。


AREDS(Age-Related Eye Disease Study)

<方法>
全米の多施設で、3640例の加齢性黄斑変性症の患者に対して
1.抗酸化物質(βカロチン 15mg/日+ビタミンC 500mg/日+ビタミンE 400IU)
2.亜鉛80mg/日+銅2mg/日
3.抗酸化物質+亜鉛80mg/日
を平均6.3年間(1991年~1996年)与え続け、黄斑変性症の進行率を調べた。

<結論>
 1.→17%の進行抑制
2.→21%の進行抑制
3.→25%の進行抑制
を認めた。

βカロチン 15mg/日+ビタミンC 500mg/日+ビタミンE 400IU+亜鉛80mg/日に最大の抑制効果あり


軽症例への予防効果はなく、中等症以上のリスク眼に対して進行予防が認められた。」と結論づけられている。
中等度に進行した黄斑症や、反対眼に進行した黄斑変性症をもつ患者さんに対して、上記サプリメントが推奨される根拠といえる[1]


[1].吉村長久 『加齢黄斑変性』 p.233 医学書院(2008)

スギ花粉の舌下アレルゲン免疫療法

当院では、舌下投与によるスギ花粉のアレルゲン免疫療法[1]を開始する予定です。

要は、「体内に少しずつスギ花粉エキスを取り込んで、体を馴れさせよう」ということ。

ただし注意点があって

  1. 3年間、毎日続ける必要がある。→3ケ月でも効果があるともいわれてる。
  2. 治療開始できるのは、スギ花粉が飛んでいない6月から12月の間のみ→2月~4月は以外なら可能ともいわれてる。

上記で「いわれている」というのは「巷間いわれている」だけであって、公式見解ではありません。

まずは、院長自身が人柱実験し、このブログ上でご報告させていただきます。

[1].アレルゲン免疫療法 – Wikipedia

第39回神戸アイセンターオープンカンファレンス@2021/3/6

特別講演:16:00~
「データサイエンスとしての眼科学」予定
講師:鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 感覚器病学講座
   眼科学分野 教授 坂本 泰二 先生

をZOOM聴講しました。

コロナ以後は、スマホで視力を測定し、自宅でOCTを撮影する時代になる。

自宅で視力だけでなくOCTまで測定できるようになれば、眼科に通院する必要はなくなるだろう。そのうえで、診断はAIが行うことになるであろうとの見立てであった。

将棋の世界では、すでに人間の最高峰よりもPonanzaのほうが圧倒的に強いらしい[1]

診断でもかつては「眼科教授のご明断」「さすが~」「ははー」て感じだったけど、そんな時代は終焉し、今なら診断用Ponanzaのほうがはるかに優秀であろうと思う。


ただし、人間はなぜそのようにご明断されたのか根拠を示されないと、納得できない。

そこのところは、将棋の名人よりも、教授先生のほうが少しは生き残れる確率が高いかもしれない。

[1].コンピューターに「完敗」した佐藤天彦九段。「あの日」と将棋の未来を語る | ギズモード・ジャパン (gizmodo.jp)

ドライアイとストレスの関係

以前から、ドライ症状が強い患者さんはストレス傾向が強いと感じていたが、

鬱および不安症とドライアイの自覚症状は相関するが、客観的な指標は相関しない[1]

we found that depression and anxiety were related to the subjective symptoms of DED but not the objective symptoms

ドライアイと精神病性向の間には大きな関連性がある[2]

significant association between DED and psychiatric morbidity burden is present

外来で診ていても、

①自覚症状は強いが、指標は悪くない人

   vs

②指標は悪いのに、自覚症状が少ない人

で比較すると、

①の人のほうが、心気症的傾向が高いことは間違いない。

そのような方に、安易にデパスやらソラナックスをだしちゃうと、調節筋力が低下してかえって症状が増悪することがある。

そこで、当院では、運動・睡眠・栄養などを通して、薬剤によらず行動療法的にストレス発散するように指導している。

[1]Dry Eye Syndrome (nih.gov)

[2]Mental Health Status in Dry Eye Disease – a Case Control Study | touchOPHTHALMOLOGY

ドライアイの合併症

ドライアイを起こす原因は数多くある[1]が、アレルギー性結膜炎も一因となる[2]。

アレルギー疾患があると流涙をおこすため、ドライアイの合併を見過ごしやすいが、BUTを測定すると短縮していることがよくある。異物感や充血など臨床所見・症状も似ているため、両疾患が共存していることを見落としやすい。

両疾患ともに、眼表面症候群ともいうべきスペクトラムに属するもので、病気の主座が結膜側にあるか、角膜側にあるかの違いに過ぎないのではないかと、僕は考えている。

見極めには、所見だけではなくて、患者さんの愁訴に耳を傾ける必要がある。ドライアイでは眼精疲労、視矇感の訴えが強く、アレルギー性結膜炎の場合には、異物感、充血の症状が強い。

患者さんの訴えをよく聞いて、どちらの治療に軸足を置くか判断する必要がある、と思う。

[1].Dry Eye Syndrome (nih.gov)

[2].Double Trouble: When Allergy and Dry Eye Coexist (reviewofcontactlenses.com)

近視治療の効果

WHOと近視の共同研究をしているBrien Holden Vision Instituteというオーストラリアの研究所がある。

その研究所のHPに、近視軽減効果の予測頁があり、各種の治療方法とその効果の予測が記載されている。

当院でも採用しているアトロピン点眼とオルソケラトロジーの効果について、「10歳で-2Dの近視の子供が17歳時点でどのくらいの近視に進展するのを防ぐことができるか」を予測させてみた。

<高濃度アトロピン>

<低濃度アトロピン>

<オルソケラトロジー>

アトロピン点眼の効果が意外に高く驚く。日本国内の「オロソケラトロジーが決め手」という受け止めとは異なる。

ただし、オルソケラトロジーでは裸眼視力が改善される点への考慮はなく、あくまで近視抑制効果のみ評価している点に留意する必要がある。

アトロピン点眼とオルソケラトロジーを併用すれば、裸眼視力も改善し、近視抑制効果も最大限に獲得できるのかもしれない。

たかが近視、されど近視!

学校検診の季節となりました。

「1、2ケ月で急激に視力が低下した」と言って検診用紙を持ってこられる患者さんが多い時期です。

スマホやタブレットが浸透してきたためか、小学校低学年でも相当程度、近視が進行してしまっているお子さんを見受けます。

そのようなお子さんや、ご両親には「高校3年生までに-6Dをこすような高度近視にならないように」とご説明しています。

それは、高度近視になると、以下のような合併症が、将来発生する可能性が高いからです。

正視と比しての合併症オッズ比

長寿時代となり、人生の後半期に器質的な眼合併症で苦しまないためには、近視がもっとも進行する小児期に正しく管理を行い、必要以上の近視進行を防ぐことが大切です。

認知症と網膜厚の関係

Spectral-Domain OCT Measurements in Alzheimer’s Disease – Ophthalmology (aaojournal.org) を読んだ。

早期アルツハイマー者、軽度認知障害(MCI)の発見方法は、高価で侵襲的である。

眼科のOCT検査は、安価・簡便・非侵襲的なので、アルツハイマー症と網膜の厚みの関連性について文献調査をした。

Our results clearly demonstrated that SD OCT measurements at the inner retina, including macular GC-IPL thickness, macular GCC thickness, and peripapillary RNFL thickness, were significantly thinner in AD patients than in controls. Notably, thinning of the GC-IPL occurred in most subsectors of the macula.

黄斑部神経節細胞内網状層、黄斑部網膜神経節細胞複合体、傍視神経乳頭網膜神経線維層の厚みがアルツハイマー患者では薄かった。特に「黄斑部神経節細胞内網状層」が薄かった。(意訳)

「神経節細胞内網状層」のOCT像像は以下の通りで、高反射層として描出される。

神経シナプスが密集する場所であるから、この層が薄くなるということは、脳内シナプス結合も疎になってきているということを示唆するのかもしれない。

OCTは大抵の眼科に装備されているので、内科から「MCIの疑いにがあり、網状層厚測定をお願いします」という依頼が来る日も近いかもしれない。

白内障と生体リズム

睡眠や深部体温に代表される生体リズムは,内分 泌・代謝・循環・精神機能など多くの生理機能に関 与しています。

この生体リズムの乱れは肥満・脂質異常・糖尿病・高血圧・精神障害・うつ・脳卒中・虚血性心疾患・がんなどの多くの疾病と関連します。

ヒトの生体リズムには網膜での光受容が最も重要で、網膜神経経節細がブルーライトを感じて生体リズムを調整しています。

白内障があるとちょうどブルーライトの波長が遮断され.十分に眼内に届かないため生体リズムが障害され、生体リズムを崩すと考えられています。

最近のPCは夜間になるとブルーライトが軽減される仕組みになっている。

ところが、白内障があると、「ブルーライトを一日中カット」→「朝から晩まで夜間状態だと体が勘違い」となるのな。