スギ花粉の舌下アレルゲン免疫療法

当院では、舌下投与によるスギ花粉のアレルゲン免疫療法[1]を開始する予定です。

要は、「体内に少しずつスギ花粉エキスを取り込んで、体を馴れさせよう」ということ。

ただし注意点があって

  1. 3年間、毎日続ける必要がある。→3ケ月でも効果があるともいわれてる。
  2. 治療開始できるのは、スギ花粉が飛んでいない6月から12月の間のみ→2月~4月は以外なら可能ともいわれてる。

上記で「いわれている」というのは「巷間いわれている」だけであって、公式見解ではありません。

まずは、院長自身が人柱実験し、このブログ上でご報告させていただきます。

[1].アレルゲン免疫療法 – Wikipedia

第39回神戸アイセンターオープンカンファレンス@2021/3/6

特別講演:16:00~
「データサイエンスとしての眼科学」予定
講師:鹿児島大学大学院 医歯学総合研究科 先進治療科学専攻 感覚器病学講座
   眼科学分野 教授 坂本 泰二 先生

をZOOM聴講しました。

コロナ以後は、スマホで視力を測定し、自宅でOCTを撮影する時代になる。

自宅で視力だけでなくOCTまで測定できるようになれば、眼科に通院する必要はなくなるだろう。そのうえで、診断はAIが行うことになるであろうとの見立てであった。

将棋の世界では、すでに人間の最高峰よりもPonanzaのほうが圧倒的に強いらしい[1]

診断でもかつては「眼科教授のご明断」「さすが~」「ははー」て感じだったけど、そんな時代は終焉し、今なら診断用Ponanzaのほうがはるかに優秀であろうと思う。


ただし、人間はなぜそのようにご明断されたのか根拠を示されないと、納得できない。

そこのところは、将棋の名人よりも、教授先生のほうが少しは生き残れる確率が高いかもしれない。

[1].コンピューターに「完敗」した佐藤天彦九段。「あの日」と将棋の未来を語る | ギズモード・ジャパン (gizmodo.jp)

ドライアイとストレスの関係

以前から、ドライ症状が強い患者さんはストレス傾向が強いと感じていたが、

鬱および不安症とドライアイの自覚症状は相関するが、客観的な指標は相関しない[1]

we found that depression and anxiety were related to the subjective symptoms of DED but not the objective symptoms

ドライアイと精神病性向の間には大きな関連性がある[2]

significant association between DED and psychiatric morbidity burden is present

外来で診ていても、

①自覚症状は強いが、指標は悪くない人

   vs

②指標は悪いのに、自覚症状が少ない人

で比較すると、

①の人のほうが、心気症的傾向が高いことは間違いない。

そのような方に、安易にデパスやらソラナックスをだしちゃうと、調節筋力が低下してかえって症状が増悪することがある。

そこで、当院では、運動・睡眠・栄養などを通して、薬剤によらず行動療法的にストレス発散するように指導している。

[1]Dry Eye Syndrome (nih.gov)

[2]Mental Health Status in Dry Eye Disease – a Case Control Study | touchOPHTHALMOLOGY

ドライアイの合併症

ドライアイを起こす原因は数多くある[1]が、アレルギー性結膜炎も一因となる[2]。

アレルギー疾患があると流涙をおこすため、ドライアイの合併を見過ごしやすいが、BUTを測定すると短縮していることがよくある。異物感や充血など臨床所見・症状も似ているため、両疾患が共存していることを見落としやすい。

両疾患ともに、眼表面症候群ともいうべきスペクトラムに属するもので、病気の主座が結膜側にあるか、角膜側にあるかの違いに過ぎないのではないかと、僕は考えている。

見極めには、所見だけではなくて、患者さんの愁訴に耳を傾ける必要がある。ドライアイでは眼精疲労、視矇感の訴えが強く、アレルギー性結膜炎の場合には、異物感、充血の症状が強い。

患者さんの訴えをよく聞いて、どちらの治療に軸足を置くか判断する必要がある、と思う。

[1].Dry Eye Syndrome (nih.gov)

[2].Double Trouble: When Allergy and Dry Eye Coexist (reviewofcontactlenses.com)

近視治療の効果

WHOと近視の共同研究をしているBrien Holden Vision Instituteというオーストラリアの研究所がある。

その研究所のHPに、近視軽減効果の予測頁があり、各種の治療方法とその効果の予測が記載されている。

当院でも採用しているアトロピン点眼とオルソケラトロジーの効果について、「10歳で-2Dの近視の子供が17歳時点でどのくらいの近視に進展するのを防ぐことができるか」を予測させてみた。

<高濃度アトロピン>

<低濃度アトロピン>

<オルソケラトロジー>

アトロピン点眼の効果が意外に高く驚く。日本国内の「オロソケラトロジーが決め手」という受け止めとは異なる。

ただし、オルソケラトロジーでは裸眼視力が改善される点への考慮はなく、あくまで近視抑制効果のみ評価している点に留意する必要がある。

アトロピン点眼とオルソケラトロジーを併用すれば、裸眼視力も改善し、近視抑制効果も最大限に獲得できるのかもしれない。

たかが近視、されど近視!

学校検診の季節となりました。

「1、2ケ月で急激に視力が低下した」と言って検診用紙を持ってこられる患者さんが多い時期です。

スマホやタブレットが浸透してきたためか、小学校低学年でも相当程度、近視が進行してしまっているお子さんを見受けます。

そのようなお子さんや、ご両親には「高校3年生までに-6Dをこすような高度近視にならないように」とご説明しています。

それは、高度近視になると、以下のような合併症が、将来発生する可能性が高いからです。

正視と比しての合併症オッズ比

長寿時代となり、人生の後半期に器質的な眼合併症で苦しまないためには、近視がもっとも進行する小児期に正しく管理を行い、必要以上の近視進行を防ぐことが大切です。

認知症と網膜厚の関係

Spectral-Domain OCT Measurements in Alzheimer’s Disease – Ophthalmology (aaojournal.org) を読んだ。

早期アルツハイマー者、軽度認知障害(MCI)の発見方法は、高価で侵襲的である。

眼科のOCT検査は、安価・簡便・非侵襲的なので、アルツハイマー症と網膜の厚みの関連性について文献調査をした。

Our results clearly demonstrated that SD OCT measurements at the inner retina, including macular GC-IPL thickness, macular GCC thickness, and peripapillary RNFL thickness, were significantly thinner in AD patients than in controls. Notably, thinning of the GC-IPL occurred in most subsectors of the macula.

黄斑部神経節細胞内網状層、黄斑部網膜神経節細胞複合体、傍視神経乳頭網膜神経線維層の厚みがアルツハイマー患者では薄かった。特に「黄斑部神経節細胞内網状層」が薄かった。(意訳)

「神経節細胞内網状層」のOCT像像は以下の通りで、高反射層として描出される。

神経シナプスが密集する場所であるから、この層が薄くなるということは、脳内シナプス結合も疎になってきているということを示唆するのかもしれない。

OCTは大抵の眼科に装備されているので、内科から「MCIの疑いにがあり、網状層厚測定をお願いします」という依頼が来る日も近いかもしれない。

白内障と生体リズム

睡眠や深部体温に代表される生体リズムは,内分 泌・代謝・循環・精神機能など多くの生理機能に関 与しています。

この生体リズムの乱れは肥満・脂質異常・糖尿病・高血圧・精神障害・うつ・脳卒中・虚血性心疾患・がんなどの多くの疾病と関連します。

ヒトの生体リズムには網膜での光受容が最も重要で、網膜神経経節細がブルーライトを感じて生体リズムを調整しています。

白内障があるとちょうどブルーライトの波長が遮断され.十分に眼内に届かないため生体リズムが障害され、生体リズムを崩すと考えられています。

最近のPCは夜間になるとブルーライトが軽減される仕組みになっている。

ところが、白内障があると、「ブルーライトを一日中カット」→「朝から晩まで夜間状態だと体が勘違い」となるのな。

白内障と全身疾患

白内障で夜間血圧上昇、動脈硬化のリスクが増す。

住環境や生活習慣が健康に及ぼす影響を調査することを目的とした大規模コホートスタディ「平城京スタディ[1]」の結果に基づいて述べます。

通常、血圧は日内変動 があり、夜問で血圧が最も低くなります。

白内障があると、この夜間血圧低下が発生しない比率が1.8倍となっていました (表1)

夜間血圧低下が発生しないと、心血管障害が起きやすくなるため、白内障がある心血管リスクが高くなるということになります。

さらに. 頭動脈エコーで血管壁の厚さを測定すると、白内障があると動脈硬化が1.6倍多く,心筋梗 塞や脳卒中のリスクが高くなっていることがわかりました。

「全身疾患リスクを軽減するには、白内障を解消する必要がある」ということ。。かな?


[1].平城京スタディ:住環境や生活習慣が健康に及ぼす影響を調査することを目的に、2010年9月に開始した大規模前向きコホート研究(参加者数 3012名)

白内障と認知症

視力が悪いと認知症リスクが高い

高齢者を対象とした眼科コホートスタディ「藤原京eyeスタディ」[1]の結果に基づいて述べます。

視力0.7以上:認知症が5.1%

視力0.7未満:認知症が13.3%

視力0.7未満では 認知症のリスクが2.9倍高く、年齢、性、BMI、教育歴などを考慮しても2.4倍も高かった。

白内障手術は軽度認知機能低下を防ぐ

白内障手術既往群(668名) と非手術群(2096名)の2群間で統計分析を行ったところ、視力の因子とは関係なく白内障手術で軽度認知機能障害のリスクは2割程度防げることが判明した(表2)

視覚は人間の情報入力の80%といわれるから、良好な視力とが、良好な脳機能の維持に欠かせないことは間違いないでしょうね。。


[1].藤原京eyeスタディ:2012年の眼科検 診で 70歳以上(平均年 齢76.3歳)約2900名が参加した大規模眼科疫学調査