第4回日本近視学会総会に出席しました。

大阪のグランドフロントで開かれた近視学会に出席してきました。学会会長は京都大学の辻川明孝教授で、かつて、この大学出身の大御所が「近視治療は無意味で、早々に眼鏡を処方すべきである」とのたまっておられたことを思うと、隔世の感があります。

土曜セッションで”Cutting edge of myopia treatment”があり、その掉尾がオーストラリアメルボルン大学のMingguang He先生による”Repeated Low-level red-light therapy for myopia control in children”でした。
即ち、赤色光で近視治療であり、最後に持ってきたてことはこの治療が注目されてるということかしらん?

講演内容はOphthalmology誌に書かれてあったこととほぼ同じでしたが、なぜ赤色光が有用かについて

「赤色光が脈絡膜の血行を良くする ⇒ 脈絡膜の菲薄化を防ぐ⇒ 眼軸長の伸長を防ぐ。」という機序を想定している。



この「脈絡膜の菲薄化」は、学会バズワードで、慶応大Xiaoyan Jiang先生も

「バイオレット光がOPN5(ニューロプシン)を刺激することで脈絡膜肥厚を制御し、眼軸長伸長を抑制する。」ことをマウス実験で確認した。

ただし、

バイオレット光以外に赤緑青色光も試したが、赤色光、緑色光には全く効果がなく、青色光のみ弱いながらも効果を認めた。

って「赤色光で近視治療」説と、真逆?!

加えて、バイオレット学派曰く「バイオレット光は屋内、眼鏡装用でも遮られる」「したがって、屋外活動が大切である」
なれば 「赤色光は屋内にも到達するので、わざわざ照射するに及ばず」ともいえ、僕もバイオレット派に一票かな。。


その他、Zeissが製造中止したと思ってたMCレンズがMyoKidsとしてよみがえっている様子。

ただし、発表者のSaulius R. Varnas先生自身が35%くらいの有効度(と言っていたと思う)
つまりオルソケラトロジーやアトロピン点眼ほどには推してない印象でした。

この件は、Zeissの担当者に以前のMCレンズとどう違うのか聞く予定です。

下眼瞼たるみにヒアルロン酸を入れました。

下眼瞼がたるんで、疲れたように見えるので、美容外科でヒアルロン酸を入れてみました。

術後直後写真

「下眼瞼脱脂手術」を勧められたが、「貴重な組織は温存したい」といったところ、「ヒアルロン酸入れてみましょう」「手術の3~4割の効果かもしれない」となりました。

効果は7割以上ある。

術前写真
  • 注入したヒアルロン酸:アラガン社のジュビダームウルトラプラスXC 1本+レスチレン社のリド1本。0.5本残して4W後に修正用に使う。
  • 注入時の痛み:ちくちくした痛み。キシロカインゼリー塗布はほとんど意味なしだったが、小鼻横のキシロカイン皮下注射(31G)はよく効いた。

手技的にはとても簡単そうだったので、アラガンの講習を受けて、疼痛コントロールできれば、鏡見つつ自分で自分に注入できるんじゃね?と感じました。

赤色光による近視治療

短波長のバイオレットライトが近視を抑制するのは有名だが、赤色光も効果があるという発表(Ophthalmology誌)であったので、紹介します。

Participants: Two hundred sixty-four eligible children 8 to 13 years of age with myopia of cycloplegic spherical equivalent refraction (SER) of -1.00 to -5.00 diopters (D), astigmatism of 2.50 D or less, anisometropia of 1.50 D or less, and best-corrected visual acuity (BCVA) of 0.0 logarithm of the minimum angle of resolution or more were enrolled in July and August 2019. Follow-up was completed in September 2020.
Methods: Children were assigned randomly to the intervention group (RLRL treatment plus single-vision spectacle [SVS]) and the control group (SVS). The RLRL treatment was provided by a desktop light therapy device that emits red light of 650-nm wavelength at an illuminance level of approximately 1600 lux and a power of 0.29 mW for a 4-mm pupil (class I classification) and was administered at home under supervision of parents for 3 minutes per session, twice daily with a minimum interval of 4 hours, 5 days per week.

8歳〜13歳の近視264例で
「眼鏡装用+週5回1日2回3分ずつ赤色光を見る」
   vs
「眼鏡装用のみ」
を比較した。

その結果、

Results: Among 264 randomized participants, 246 children (93.2%) were included in the analysis (117 in the RLRL group and 129 in the SVS group). Adjusted 12-month axial elongation and SER progression were 0.13 mm (95% confidence interval [CI], 0.09-0.17mm) and -0.20 D (95% CI, -0.29 to -0.11D) for RLRL treatment and 0.38 mm (95% CI, 0.34-0.42 mm) and -0.79 D (95% CI, -0.88 to -0.69 D) for SVS treatment. The differences in axial elongation and SER progression were 0.26 mm (95% CI, 0.20-0.31 mm) and -0.59D (95% CI, -0.72 to -0.46 D) between the RLRL and SVS groups. No severe adverse events (sudden vision loss ≥2 lines or scotoma), functional visual loss indicated by BCVA, or structural damage seen on OCT scans were observed.

Conclusions: Repeated low-level red-light therapy is a promising alternative treatment for myopia control in children with good user acceptability and no documented functional or structural damage.

1年後

「眼鏡装用+週5回1日2回3分ずつ赤色光を見る」は眼軸長0.13mm伸長
   vs
「眼鏡装用のみ」は、眼軸長0.38mm伸長

「眼鏡装用+週5回1日2回3分ずつ赤色光を見る」は-0.20D進行
   vs
「眼鏡装用のみ」は、-0.79D進行

これは、坪田先生のバイオレットライト論文(cf.Table S2)よりも効果がある(ようにみえる)。650nmの赤色光ランプは簡単に製造でき、近視治療の朗報(かもしれない)。

↑で、奥歯にものを挟んでいる理由は

  • 論文にしては、結果の評価が甘い。結果の統計処理が記されていない。
  • 「安全性が確認された」がやけに強調されているあたり、以前紹介した鍼治療論文と近似している。

つまり、悠久の国由来の論文は、ひとしなみには評価しがたいなぁ~みたいな。。
全き個人の感想であります。

老眼対策の点眼薬(追加報告、および、希望者への頒布手順)

被験者約1名(女性、軽度老眼、正視眼)から、詳細な追加報告を頂戴したので、お報せします。

追加報告

1.方法

サンピロ1%点眼液を、両眼に1滴ずつさし、文字が読める最短距離を計測。視標は、求人フリーペーパー タウンワークの本文(赤丸部分)の小さい文字とした。

2.結果

3.個人感想談

  • 点眼後1時間~3時間は、裸眼で老眼鏡+1.0をかけたたのと同じくらい見えることが分かった。
  • 5時間でほぼ元に戻るため、5時間後に再度点眼すると、同じような結果になった。
  • サンピロ1%を、、朝・昼の1日2回点眼することで、度数の低い老眼鏡で快適に手元作業が出来た。

希望者への頒布手順

問い合わせが多いので、サンピロを老眼対策として処方してよいのかを兵庫県保険医協会の法務部に問い合わせたところ、

  1. ラベルオフ使用なので保険診察は不可。自費診療のみ可能である。その場合でも、処方医師が責任を持ち、承諾書をもらうこと。
  2. オンライン診療も自費であれば可能。その場合、薬の受け渡しは①自費処方箋なら可能。②薬品そのものは送付は今まで不可であったが、だんだん規制が甘くなって、現在では品質管理に留意すれば可能となった。

以上から、当院では、

  • 初回は必ず対面診察を自費診療で行い、同意承諾書に御署名いただく。⇒ 初回の自費診療代金は2950円。点眼薬は税込み330円。
  • 二回目以降はオンライン自費診療可能で、希望なら薬そのものも送付させていただく。 ⇒ 二回目以降はオンライン自費診療代金1950円。点眼薬は税込み330円。

といたします。

新世代超音波白内障手術装置のセンチュリオン導入について。

白内障手術を始めて以来、ずっとALCON社の手術装置を使っている。
その馴れ初めから、今回のセンチュリオン導入まで。


 

10thousand

勤務医時代は10thousandで、日本人は1万マスターといってた。永原御大がボトル高を80㎝以上にしてるときいて、45cmそこそこでやってた僕らはびっくりし、聖母病院まで押しかけて設定値を教えてもらったのを思い出す。

Legacy Everest 20000

開業初期はレガシーエヴェレスト20000。デフォルトで前房虚脱が実質的にほぼ起こらなくなった装置だった。「角膜熱傷を起こさないようにする」が当時の争点で、マックールシステムとか本当に角膜を冷却するアタッチメントが存在していた。
で、この角膜熱傷を防ぐ目的もありで、パルスモードの本格導入が始まった。それまでは「パルスモードは初心者モード、手術名人はコンティニュアスモードをセナ足で使いこなす」だったのである。
また、この装置の末期ごろにフレアチップとか特殊なチップが出現し、次世代の横ブレ振動の萌芽が見られた。

  

Infinity

現有機はinfinity。これは上記横ブレをozilモードとして昇華させたALCON渾身の名器である。infinity=∞=ozilモードの動きといいたいのな。
核片保持はよいし、角膜熱傷も起こさないしと、いいことづくめで、本当に開業医向けの手術装置であると感じいり、長年愛用してきたのである。

Centurion

しかし、Centurionを、2022日本眼科学会の機械展示で、触って乗り換える決断をしました。
ALCONの推しは、前房圧をモニタリングしてactiveに圧を負荷するActive Fluidics機能。「業界初です」ていってるんだが、実際はライバル社の〇〇〇であるし、そもそも前房虚脱とか一体いつの話?と、今まで食指が動かなかった。
僕がハンズオンで、感心したのは超音波発振そのものである。infinityよりもかなり洗練されている。ozilモードだとほとんど振動を感じないし、縦振動も全然違くて感銘した。これは実際に手術を行っている人間なら誰しも感じるだろう。
ALCONは、この点をもっと訴求したほうが良いんちゃう?


ALCONは、TOYOTAとかINTELという位置づけで安定感、安心感がある。
このまま、糟糠の妻と偕老同穴と成るかしらん、。。


2022/5/24追記。

Centurionでは「パルスモードではなくてコンティニュアスモードがデフォルトです」。パルスモードにしなくても「食いついがよく、かつ熱損傷も起こさない」なら、コンティニュアスモードのほうがむしろ効率UPで、良き!という結論。

眼内レンズ展望 アイハンス vs Vivity

当院では、多焦点レンズ以外、全症例でアイハンスを挿入している。

そのためか、他院で「どんなレンズを入れても一緒」といわれ、当院で「アイハンス挿入を希望して来院」という患者さんがおられる。

思うに、くだんの医師は自分では手術をしていないか、少なくとも術後の患者さんから印象を聞いてないのでは?と思う。直接、患者さんの反応をきけば、アイハンスの満足度は大きい。

ただ、アイハンスレンズは入手困難で、当院でも苦労している。このアイハンス一強に変化が訪れることになりそうだ、というのが今回のお話です。


そのレンズとは、アルコン社が発売予定のVivityです。

  • 現在、日本では未認可。→米国では2020年春に認可済みで、国内承認は、2022年秋口ごろという噂。
  • 非回折型でEDof型。光エネルギーロスは0%。夜間運転時のハロー、フレアー、スターバーストはなし。→「XWaveテクノロジー」とアルコン社は称している。
  • 中間は70cmくらいまでみえるが、近方視力については不十分。→完全に眼鏡なしにはできない。
  • 緑内障や黄斑疾患を持つ患者さんに対しても使用可能。

要するに、アイハンスと完全に被るプロファイルです。
アイハンスと同様、保険適用レンズとなるでしょうね、多分。


アルコン社とAMO社は、白内障手術業界での2大ライバル。
手術機械ではOzil(Alcon) vs Siganature(AMO)、回折型レンズではPanOptix(Alcon) vs Synergy(AMO)というように、切磋してきました。
今までは、Alcon社が先んじてきましたが、非回折型EDoFレンズについてはAMO社が先行ですね。


2022/5/25追記

  • VivityはActiveFocusの後継となるべく、「アイハンスよりも多焦点的なレンズ」に仕上がっている由。感触としてはMiniWellに近い?
  • 保険診療ではなく選定医療対象になるよ~な話。噂レベルだが、かなり安い価格の模様。→ ActiveFocus並みの高価格になるらしい。
  • アルコンの中の人で、2番目にエラい人がVivityを挿入する手術を受けた。今まではPanOptixをいれてたとのこと。

2022/6/12追記

  • これをみると、アイハンスよりも近方が見えるように工夫しているように見える。

2023/4/18追記

  • 承認済みで、2023/6月発売予定。パンオプティクスと同価格。入荷少量の可能性。

オンライン診療のオンライン研修を修了しました。

当院では以前からオンライン診療を実施してきました。

今までは制度的に「コロナ対策+電話再診の援用」という位置づけでしたが、2022年4月からは本格的にオンライン診療が確立するようです。

そのための、法的根拠づけ、制度設計について学び、かつ、試験に合格しないとオンライン診療を続けることはできなくなりました。

そこで、数時間に及ぶオンライン研修を終えて修了書をいただきました!

ただし、事前に同意書をもらわないといけないとか、かかりつけ医の確認とか、オンライン診療でないといけない理由の確認とか、医師免許の提示とか、、とか、、、~と相成りました。


電話・オンラインによる診療についてのパンフレット

厚生労働省ホームページ

緑内障専門医から見たアイハンスの実力

2022/3/24のwebセミナーを聴講しました。

埼玉医大の庄司 拓平准教授は、緑内障分野で活躍されておられる先生です。埼玉医大では眼内レンズをほぼアイハンスに入れ替えたとのことでした。

緑内障患者さんは慎重な性格の人が多く、白内障手術を嫌がる人が多いが、白内障手術による眼圧降下作用が大いに期待できるという話。

ただし、従来、緑内障患者さんの眼内レンズとして多焦点レンズの選択肢がなかった。

緑内障の術後QOLにはコントラスト感度が重要なので、従来の多焦点レンズは回析格子を持つため、パワーロスが発生しコントラスト感度も低下するためです。

その点、アイハンスは「回析格子を持たない構造であるため、緑内障患者さんにおいても何ら問題なく『全取っ換え』」しているとのことでした。


当院でも、従来は緑内障や黄斑疾患があるため躊躇われた症例について、積極的にアイハンスを挿入していく予定。。

問題点は、現在プレミアム価値がついているため高額で(←患者さんには負担ありません)、入手が困難になりつつある点かな。

水晶体嚢拡張リング(CTR)講習会を受講しました。

水晶体嚢拡張リングは、今までドイツから個人輸入していたのだが、このたび国内メーカーのHOYAからも発売されることになった。

ただし、HOYAから購入するには講習会を受けないといけない。

白内障手術に習熟した術者が、日本眼科学会の指導下で製造販売業者等が実施する講習会を受講した上で、使用する必要がある。

講習会の内容は、CTRを使っている術者なら皆知っているような内容であったが、注目したのはインジェクター一体型のCTRが発売されるということでした。

いままでは、「拡張リング出して、インジェクターとシンスキーフックも!」といって、個々にセッティングしていたが、一体型だと「拡張リングインジェクター出して!」の一発完了だ。

チン氏帯が脆弱というのはヤバめな状況なので、すぐ出せてすぐ挿入できるというのは素晴らしい。