「あなたのこども、そのままだと近視になります」を読みました

「唯一、誰もが認めるエビデンスは戸外活動を2時間以上すること」ということです。

坪田先生は、「屋外で活動する」→「バイオレットライトが目に入る」→「眼軸長伸長を抑制する」という機序を考えておられるようです。

バイオレットライトは下図のような光波長で、屋内のガラス窓のうちにいると浴びることができない。

動物実験ではバイオレットライトによる抑制効果は証明されているらしい。

僕なりに解釈すると、眼は本来外敵から身を守るために進化獲得した組織器官で、屋外で「敵に襲われる可能性がある」と脳が感じていることが、眼軸長維持に有効なのだろう。屋内で安全にスマホやタブレットを見ている生活を続ければ、脳は「敵に襲われる心配はなく、近くを見ることに専念すればよい」と感じて眼軸長の維持をやめるのだと思う。「近視は、子供の生活習慣病」と僕が主張するゆえんでもある。

したがって、単にバイオレットライトを浴び得ればいいという単純な構図でもないような気はするが、坪田先生はJINSと組んで商品化に取り組んでおられるらしい!

それについては、次回以降で御報告する。

近視治療の効果

WHOと近視の共同研究をしているBrien Holden Vision Instituteというオーストラリアの研究所がある。

その研究所のHPに、近視軽減効果の予測頁があり、各種の治療方法とその効果の予測が記載されている。

当院でも採用しているアトロピン点眼とオルソケラトロジーの効果について、「10歳で-2Dの近視の子供が17歳時点でどのくらいの近視に進展するのを防ぐことができるか」を予測させてみた。

<高濃度アトロピン>

<低濃度アトロピン>

<オルソケラトロジー>

アトロピン点眼の効果が意外に高く驚く。日本国内の「オロソケラトロジーが決め手」という受け止めとは異なる。

ただし、オルソケラトロジーでは裸眼視力が改善される点への考慮はなく、あくまで近視抑制効果のみ評価している点に留意する必要がある。

アトロピン点眼とオルソケラトロジーを併用すれば、裸眼視力も改善し、近視抑制効果も最大限に獲得できるのかもしれない。

たかが近視、されど近視!

学校検診の季節となりました。

「1、2ケ月で急激に視力が低下した」と言って検診用紙を持ってこられる患者さんが多い時期です。

スマホやタブレットが浸透してきたためか、小学校低学年でも相当程度、近視が進行してしまっているお子さんを見受けます。

そのようなお子さんや、ご両親には「高校3年生までに-6Dをこすような高度近視にならないように」とご説明しています。

それは、高度近視になると、以下のような合併症が、将来発生する可能性が高いからです。

正視と比しての合併症オッズ比

長寿時代となり、人生の後半期に器質的な眼合併症で苦しまないためには、近視がもっとも進行する小児期に正しく管理を行い、必要以上の近視進行を防ぐことが大切です。