「専門分野から見たアイハンスの臨床評価」を受講しました。

硝子体術者として慶応大学の國方彦志先生、緑内障術者として島根医大の谷戸正樹先生のご講演。

単焦点レンズと比べて、遠見視力、コントラスト感度特性に差はないが、-1.5D当たりの中間視力が優れている。
ハログレのアンケート調査でも差はない。

という予定調和な内容でした。


アイハンスは、トーリックレンズに力を入れているようであり、

「フロスト加工ので回転しにくい」とのことです。
当院でも、-1.5D以上の乱視者全員に採用しています。

アイハンスの適合レンズの選定url
ちなみに、アルコンはこちら


両演者ともターゲットは-0.5D~0Dに合わしている由。
当院では、ここで言った理由によりほぼ0Dを狙い。希望時には対眼でマイクロモノビジョン的にマイナス度数を入れています。

多焦点レンズ記事のおまとめ

最近、多焦点レンズを希望される方が、若干増加してきた印象である。
皆さん、よく勉強しておられ、当ブログも読み込んでおられる。

ただ、何分の散文集につき、所在が分かりづらい指摘もあり、おまとめしてみた。


・多焦点レンズ一覧

当院で取り扱っている多焦点レンズの比較

・各種レンズの記事

PanOptixとSynergyの比較

PanOptixとVivityの比較

Synergyについて

Synergyの目標ターゲット

Odysseyについて

Vivityについて(1)

Vivityについて(2)

Vivityについて(3)

Eyehanceについて(1)

Eyehanceについて(2)

Eyehanceについて(3)

Eyehanceについて(4)

Eyehanceについて(5)

Eyehanceについて(6)

EyehnaceとVivityの比較

Lentis Comfortについて

Miniwellについて

Intensityについて

・見え方のSimulator

多焦点眼内レンズのシミュレータ

多焦点眼内レンズのシミュレータ2

・モノビジョン

ミニモノビジョンについて


上記のうち、「シミュレータで見え方を確認して、決めました」という人が存外に多く、その有用性に気付かされる。

LASIK後の眼内レンズ度数算定式

過去LASIKを受けた患者さんに白内障手術を行う場合、通常の眼内レンズ算定式は適用できない。

LASIK施行症例ではIOL度数計算が難しく、通常の角膜屈折力及び度数計算式を用いると、術後に遠視化する。
屈折矯正術後のPEA+IOL挿入術後に遠視化する要因はいくつかあるが、主にIOL挿入術前の角膜屈折値の評価誤差と、前房深度予測誤差の二つによる。

当院でもそのような症例が増加傾向にあるので、LASIK施行後の眼内レンズ算定式について調べた。

日本眼科医会の「4.屈折矯正手術後眼でのIOL度数計算式」によると

・Barrett True-K式は厚肉光学を用いたBarrett Universal II式が元になっており、計算に必要なパラメータは眼軸長、K値、前房深度で、水晶体厚、角膜横径は任意である。lens factor(LF)という独自の定数を用いるが、詳細は非公表である。
・Haigis-L式では、角膜屈折力を用いず、眼軸長と術前前房深度の重回帰式からELP(effective lens position)を予測する。屈折矯正手術前のデータが不要である。

・Barrett True-K式は、APACRS(Asia Pacific Association of Cataract & Refractive Surgeons)からオンライン計算が可能である。

・Haigis-L式は、ASCRS(American Society of Cataract and Refractive Surgery)→「Prior Myopic LASI/PRK」からオンライン計算が可能である。

Barrett True-K式のほうが、眼科医の支持が多い印象だけど、当院では両者測定のうえ判断しています。


1.中村友昭:LASIK術後眼のIOL度数計算. 日本白内障屈折矯正学会雑誌 Vol.24 (2010)

2.磯谷尚輝 etal:LASIK後の白内障手術における眼内レンズ度数計算式の精度. 日本視能訓練士協会誌 Vol.37(2008)

3.日本眼科学会:眼内レンズ度数計算式およびトーリック度数計算式の使用にあたって (nichigan.or.jp)

ライカの手術顕微鏡を導入しました。

従来より手術顕微鏡と云えばZeiss一択で、当院でも長きにわたって同社製OPMI MDOを使用してきました。
OPMI MODは名機で、あえて最新機種を使わず頑固にこの機種を使い続けるサージャンも多いときく。

当院のOPMI MODも相変わらず視界は良好なんだが、いかんせんXY軸の動きが鈍くなってきたので、A社、T社、Z社のデモ機を比較してLeica顕微鏡を選定しました。


以下、ライカ社と他社レンズの比較


ZeissとLeicaの見え具合が図抜けていることは間違いない。
Leica顕微鏡は、加えて術者の願望をかなり上手にくみ取っていることがわかる。一方のZeiss社はやや名声に胡坐をかいてる感あり。

私は「周到な準備+最高の装備+不断の研鑽」こそが、結果を産むと信じでいる。
当院ではLeica顕微鏡で引き続き、バリバリ手術続行していく所存ですので、よろしくお願い申し上げます。

緑内障眼に対する多焦点眼内レンズの適応

2023/10/14 北里大学医療衛生部 神谷和孝教授@大阪眼科手術の会です。

前提の与件

日本眼科学会の公式見解:緑内障眼は多焦点レンズ挿入の除外対象

2焦点レンズ時代

かつての2焦点レンズのころはコントラスト感度の低下が著しかった。

3焦点レンズ・EDoFレンズ時代

3焦点レンズ、EDoFレンズと技術進展に伴い、最近ではコントラスト感度の低下はほとんど見られないという報告が増えてきている。

結論

  • 軽症例で、中心閾値低下がみられない。
  • ドライアイ、不正乱視、黄斑疾患がない。
  • 本人が希望

以上の条件が満たされるなら、緑内障眼でも挿入可能か?と風向きが変わりつつある。


追加
アイファガン点眼(交感神経α2作働薬)には縮瞳効果があり、グレハロ軽減に役立つ。

Synergyの目標ターゲット

PanOptixやアイハンスは、やや近視側に振るのが通説になってる。
しかしSynergyはやや遠視側に寄せる。

以下、大内雅之先生 TECNIS発売10周年記念講演から引用。

上図の3焦点はPanOptixでFirstNegative、SynergyはFirstPositiveといってます。

以前のエントリーに掲載した下図Defocus曲線を見れば、SynergyはPanOptixとくらべて±0.5Dでの傾きが非対称である。

ここで紹介した下図でも同様の傾向。

IOL BがPanOptix

結論

  • PanOptixの場合には近見がやや弱いので、FirstNegativeというのは臨床上よろしい。
  • 一方、Synergyは近見が強いし、Far非対称なのでFirstPositiveで運用するのが理にかなっている。

多焦点眼内レンズのシミュレータ

患者さん説明用のシミュレータを収集しました。


わかる!白内障

☞ 2焦点レンズがAcitive Focus、3焦点自然視覚レンズがPanoptix、焦点深度拡張型自然視覚レンズがVivity

Alcon Vision Educator

☞ 左右分割表示されてるので、わかりよい。

Compare the Images to Discover the Difference Each Clareon

☞ Alconクラレオンレンズの見え方の違いを表示。

TECNIS Vision Simulator

☞ Eyehance、Synphony、Synergyのシミュレータ

白内障眼内レンズ360度VRシミュレーション

☞ 参天製薬のサイト。Youtube上でも閲覧できる。レンズ製品名は不詳。

Vision Simulator EyesArc

☞ 有料サイト(3千円/月)だが、全種網羅してる。

・低加入度数分節型眼内レンズ=LentisComfort
・高次非球面眼内レンズ=Eyehance
・焦点深度拡張型眼内レンズ=Synergy
・3焦点眼内レンズ=Panoptix
・連続焦点型眼内レンズ=Vivity

当ブログの白内障多焦点レンズの種類 も↑に準拠。


VRゴーグルで疑似体験とかすぐ思いつくんだが、寡聞にしてきかない。
案外難しいのかな?

軽度黄斑疾患と多焦点眼内レンズ

住友病院の御手洗先生のご講演 @ 大阪Ophthalmic Conference.

「多焦点眼内レンズ挿入→黄斑前膜発生→膜除去手術」で、視機能はどうなるか?という論文のレビューでした。

  • 単焦点眼内レンズと比して、遠見矯正視力は変わらないが裸眼視力は遠近とも悪化する。
  • そのため、多焦点レンズの意義が薄れる。
  • 多焦点レンズ挿入後に、黄斑前膜が発生した場合には早期除去が望ましい。

 タイトル見たときは「軽度ならOK」みたいな話かと思ったが、「軽度でもダメっぽい!」という至極全うな結論でした。

Vivityの院内講義を受講しました

VivityとPanOptixは棲み分けをする。

VivityPanoptix
見える範囲の希望中間距離まで近方まで
ハログレの忌避度ハログレを嫌う人が対象ある程度許容できる人が対象
神経質かどうか神経質な人でも可神経質な人は不可
眼疾患の有無許容度が高い眼疾患がある場合は不可

 

●ActiveFocusは既に廃盤であり、Vivityがその上位アップグレードという感じ。

●術後の視力測定時にはオートレフ値ではなく、自覚屈折度を優先する。これは、近視に傾きやすいため。
cf.瞳孔径が小さいと近視化しやすい。

●面白いと感じたのは単焦点よりもBlurred visionが改善するということ。(Blurred Visionは屈折ずれにより生じると説明されていた)
ここら辺にも書いたように、「Farでの焦点深度が深いためか、遠方での度数ずれ許容度が高い」ためだろう。


2023/7/2追記

Alcon Vision Educator で、単焦点、Vivity、Panoptixのsimulation像を見ることができる。よくできており、患者さんの説明用に重宝している。