ミニウェル・レディについて

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MiniwellReady外観

EDoF(焦点深度拡張型レンズ)の先駆けとなったレンズで、アラガン社のsymphonyがでるまではEDoFレンズの代表でした。その後の一連のEDoFの流行の発端を作ったレンズで、現在でも、一部手術者に絶大な人気があります。

それは「ハロー、グレア、単眼複視など、多焦点 IOL で一 番問題とされた問題点を大部分取り除くことに成功している」という大きな利点があるためです[1]

ただし、

  1. やや近方視力が弱い。
  2. 日本国内で認可されていないために、手術代、診察代がすべて自費となり高価となる。

という問題点があります。

保険適用、選定医療を用いるなら、似た性格のSymphony、ActiveFocusを用いることが多いです[2]

なお、当院では、海外で実際に使用されている先進的な多焦点眼内レンズを取り寄せ、レンズを選択できる体制を整えております。


[1]静的固定レンズが多焦点性,焦点深度を拡張させるための手法としては,①回折格子,②屈折加入,③小開口,④球面収差,⑤コマ収差の 5 つの手法に限られています。①,②はすでに多焦点 IOL として用いられており、⑤は像質が不良であることより,実質的には①から④の手法が現実的です。その④の球面収差を利用した機構をもちいたものが MiniWell Ready です。光学的デザインにより焦点深度を伸ばすことを可能にし,連続的な焦点を実現しています。近方加入度数は 3.0D です。

[2]Symphonyはエシュレット回折型のEDoF、ActiveFocusは狭義のEDoFではありませんが、低加入度数の多焦点IOLはEDoFと似た臨床結果 が得られます。IOL&RS誌 Vol. 33 No.1 2019 p.38

多焦点レンズと選定医療

日本で承認された多焦点レンズの手術は「選定医療」扱いとなっています。

「選定医療」とは、「追加費用を負担することで保険適用外の治療を、保険適用の治療と併せて受けることができる医療サービスの一種」「病院の差額ベッド代とおなじで本来保険給付される標準的医療に対する付加価値についての差額を自費として支払う制度」となります[1]

多焦点レンズのうち、日本国内「選定医療」の対象として認可されているのはアルコン社とアラガン社の眼内レンズのみです。

しかし、ヨーロッパでは、他の先進国に比較して眼内レンズ認可基準が緩いことから、新機軸の多焦点レンズがいろいろ発売されています。(眼内レンズメーカーは、まずヨーロッパで新製品を発表するほどです)

次回はそういった先進機能をもつ多焦点眼内レンズについてご紹介します。

保険診療、選定医療、自由診療のイメージ図

[1]「選定医療とは」厚生労働省 (mhlw.go.jp)


2023/7/31追記

FineVision社のFineVisionHPも選定医療に追加指定されました。

「iPS細胞由来RPE細胞移植」を聴講しました。

コロナの影響で、オンラインばかりだった学会ですが、久しぶりにリアル聴講が可能な「2大学合同眼科カンファレス@県医師会」が開かれたので参加してきました。

その中で「網膜色素上皮(RPE)不全症を対象としたiPS細胞由来RPE細胞移植の臨床研究計画」をトピックとして取り上げます。

神戸アイセンター(旧神戸中央市民病院眼科)は、加齢黄斑変性症滲出型に対してiPS細胞移植を行って安全性と有効性を確認してきました[1]

「この知見を活かして、萎縮型の黄斑変性疾患にもiPS細胞移植を行う」治験を開始するということです[2][3]

萎縮型黄斑変性疾患の対象病変としては、「RPE萎縮を伴う加齢黄斑変性、クリスタリン網膜層、網膜色素変性症の追円疾患、RPE関連遺伝子異常を伴う網膜色素変性」などが挙げられていました。

僕が重要だと思ったのは、萎縮型加齢黄斑変性症、つまり、かつて活動性があった黄斑変性が「枯れて」RPE萎縮を残して視力喪失をきたした疾患を対象にするということです。

滲出型加齢性黄斑変性は、硝子体注射(IVA,IVR)が標準治療としてほぼ確立しているのに対して、萎縮型黄斑変性症については、ほぼなすすべがない状態です。

従って、もし萎縮型加齢黄斑変性に対して効果が実証できれば、滲出型加齢黄斑変性よりもはるかに大きなインパクトがあると思います。

治験の参加要件は「視力0.3以下、対眼視力は問わない」ですから、対象者の範囲はかなり非常に広いことになる。

開業医にもエントリー細目の通知があるということでした。50名枠ですが、当院でも萎縮型の患者さんは多いので、条件が整い次第、神戸アイセンターの「変性外来」に対象患者さんをご紹介する予定。。

【2020/12/20追記】

正確なエントリー基準を問い合わせたところ、以下のようでした。

・臨床的にRPE不全症に該当する網膜変性疾患と診断されている。
・年齢20歳以上の男女である。蛍光眼底造影においてwindow defectを認める。
・矯正視力0.3以下、あるいは視野はゴールドマン動的量的視野(指標:V-4)で測定し視野20度以内、あるいはエスターマン静的量的視野で70点以下。

今回の臨床研究では、移植細胞とHLAが一致しない患者の組み入れを踏まえ免疫抑制剤投与を予定しております。そのため現時点では対象患の年齢の上限は設けておりませんがおおむね65歳ぐらいまでの患者を想定いたしております。

[1]加齢黄斑変性に対する自己iPS細胞由来網膜色素上皮シート移植―安全性検証のための臨床研究結果を論文発表― | 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 (amed.go.jp)

[2]神戸市:「網膜色素上皮(RPE)不全症に対する同種iPS細胞由来RPE細胞懸濁液移植に関する臨床研究」について (kobe.lg.jp)

[3]効果判定の主要指標は、FAGのwindow Defectの縮小率

白内障多焦点レンズの種類

多焦点レンズ
  • 回析格子を利用して明視距離を作り出しす回析型レンズ
  • 球面収差を利用して焦点深度を深くする球面収差型(EDoF型)レンズ

の2種類が存在する。両者のハイブリッド型もある。

すべて、選定医療対象レンズ。

高次非球面レンズ(単焦点プラス)
  • 球面収差を利用して焦点深度を深くする球面収差型(EDoF型)レンズ

の1種類のみである。

すべて、保険適用レンズ。

☞中間距離、近方距離は、角膜面加入度数に換算(×0.75)して計算しています。

【結論】

多焦点レンズを選ぶ場合、車運転するならPanOptix、近方作業重視ならSynergy。ハログレ―最小化を希望するならVivity.

<2021/12/5追記>

保険適用、夜間運転ならアイハンス一択とします。現時点で究極のプレミアムレンズ。

<2022/6/26追記>

自費診療ならミニウェルフュージョンシステムを推します。

<2020/12/28追記>

見え方のシミュレーションは、 比べてわかるレンズの違い がわかりやすいと思う。

<2022/11/19追記>
HOYAから、アイハンスと同思想のレンズが+1.0加入で発売される予定とのこと。HOYAはPanOptix対抗品もだすらしい。

<2023/4/4追記>
AMO談「SynergyはPanOptixよりも近方がみえる(35cm vs 40cm)。そのため眼鏡不要率が90% vs 70%である。一方、その代償としてハログレスターバーストは多い。」したがって、都会は近方作業が多いためSynergy普及率が高い。一方、田舎は車運転が多いためPanOptix普及率が高い。
一理あるかも。

<2023/7/25追記>
ヴィヴィティの情報、画像を追加記載しました。

<2023/7/31追記>
眼内レンズの選択表をつくりました。

眼内レンズの種類

単焦点レンズ乱視用レンズモノビジョン多焦点レンズ
特徴もっとも一般的に使
われている。
1つの距離にピントを
合わせる。
単焦点眼内レ
ンズに乱視度
数が含まれて
いる。
わざと左右の度を変え
片方は正視、もう片方
は近視にして、遠くも
近くも見る方法。
光の性質(屈折や
回折)を利用して
遠くと近くに焦点
が合うように設計
されている。
長所保険適応。
焦点を合わせた距離
が、はっきり見える。
夜間の光の眩しさや
にじみが出ない。
眼鏡なしで見
える。
保険適応。
乱視を矯正す
ることによって
術後の裸眼視
力をよくするこ
とができる。
片方の目で遠くに、も
う片方の目で近くに焦
点を合わせることによ
り眼鏡なしで生活でき
る可能性がある。
遠くも近くもある程
度、眼鏡なしで見
える。
短所遠くを見えやす く合
わせると老眼鏡が、
手元が見えるように
合わせると遠く用の
眼鏡が必要。
術後に目の中
で レンズが動
い た 場 合 は 、
再度位置を調
節する手術が
必要になる場
合がある。
完全に乱視を
矯正できるわ
けではない。
立体的にものを見る力
に多少問題がでる。
度数の誤差が生じる場
合がある。
脳が適応できず左右
の目の切り替えができ
ない可能性がある。
保険適応外のた
め高額。
暗い場所で光が
眩しく感じたり、に
じんで見える。
薄暗い場所で文
字が見え難い。
慣れ る まで時間
がかかる。
価格保険適応(3割負担
片目48000円程度)
保険適応(3割
負担片目480
00円程度)
保険適応(3割負担片
目48000円程度)
自費負担
(片目約24~33万円)

白内障手術の基本的な手技は、ほぼ固定している。すなわち、「無縫合,小切開、超音波Chop&devide&conquer吸引、折り畳みレンズ挿入」という手術テクニックそのものは、この20年ほど前から大略変わっていない。

しかし、眼内に挿入するレンズはまさに日進月歩である。

上記表は、当院で最初に患者さんに説明するときに用いているものだけど、最近は多焦点乱視レンズを選択する人が増えてきてる。

やはり、若いころから遠近両用メガネ、遠近両用コンタクトをしている人(特に高度近視の方)が白内障手術をするときには、多焦点レンズを希望することが多いようです。

次回は、多焦点レンズの進化と選択について書きます。

リモートで臨床眼科学会を聴講

【演題

低加入度数分節型眼内レンズLentis comfort

vs

三焦点眼内レンズPanOptixの臨床成績比較 @ 広島大学

結論】

「遠視力では差がなく、中近視力はPanOptixのほうがよかった」

感想】

Lentis comfortは保険適用で、PanOptixは自費(40万円)であるから、経済原理からして違いが出るよな。

【利益相反公表基準:該当】無