「兵庫県眼科オープンカンファレンス 特別講演 糖尿病網膜症」を聴講しました。

村田敏規教授@信州大学「早期の視力改善と硝子体注射からの離脱」というお題。
糖尿病黄斑症の第一人者の先生で、朴訥とした話しぶりにお人柄が表れていましたな。

早期視力改善について
  • 視力低下後4M以内に注射開始すれば矯正視力1.0回復する。しかも1,2回でOK。
  • 中心窩陥凹が真ん中に戻れば翌日に1.0でる。
  • 早期には視細胞障害がないのでElipsoidZone(IS/OS line)が保たれているからである。
  • 遷延化浮腫では視細胞障害が生じており、網膜内の層構造も壊れてしまっているので回復しない。
ベオビュー推しについて
  • 日本人群ではベオビュー硝子体注射直後から網膜厚が減少する。日本人で特に顕著であった。
  • 通常の抗VEGF薬と違って二回目のショットが6週後でいいのがよろしい。
  • 欧米ではほとんど使われない。→座長から「この話を聞いてベオビュー使おっかなー」という人挙手してください。→ほとんどなし。やはり、血管炎とか血管閉塞起こすときくと怖いわな~。
硝子体注射からの離脱について
  • DryMacula(<280μ)が7.4か月継続すると虚血細胞が選択的に間引くかれていく=虚血壊死に陥る。ただし、明確なエビデンスがあるわけではなく仮説。
  • 50%で離脱が可能となる。
  • では、残り50%はどうするのかという質問に対しては毛細血管流へのfocal PC、硝子体手術で対処。
その他
  • 初回ショットでただちに300μ以下になる人は離脱できやすい。350μをこしてると離脱しにくい。
  • 第二世代のベオビュー、バビースモは抑え込む能力が高い。アイリーア8mgについては言及なし。
  • 質問でAMDではどうか?→AMDの場合には中心窩そのものの視神経細胞が間引かれるとヤバイので上記理論は当てはまらない。

 


以下、小生の個人的解釈&まとめ。

  1. 早期治療介入+第二世代抗VGEF訳を使う。
  2. DryMaculaを半年くらい維持できればPRPなしでPRP的効果を実現できる。

 

 

MiSightの院内講習を受けました。

MiSightは は、デフォーカス組み込み型の近視抑制レンズ としてすでに認可済みのソフトCLです。
ただし、「医師がe-learningを受講→スタッフ全員がメーカー主催講義受講」が必須条件であったため、処方可能となるまで1年以上かかってしまいました。。


今までは、シード1dayPureEDoFを近視抑制レンズとして処方して参りました。
しかし、本来はEDoF型遠近レンズという位置づけであり、近視治療はオフラベル使用でした。

その点、Misightは近視抑制コンタクトレンズとして認可を受けており、それが上記処方制限の所以でもあります。


両コンタクトの比較
項目 MiSight 1 day(CooperVision) 1dayPure EDoF(SEED)
光学方式 Dual-focus(デュアルフォーカス)/デフォーカス型 EDoF(Extended Depth of Focus:拡張焦点深度)型
基本思想 遠方矯正と近視性デフォーカスを別々の光学ゾーンで作る 高次収差などを利用して、網膜像の焦点深度を連続的に拡張する
レンズ構造 同心円状の4ゾーン。遠方矯正ゾーンと治療ゾーンを交互に配置 「Annual Rings(年輪)」のように、異なる光学成分を多数のリング状に配置
度数・光学特性の変化 矯正ゾーンと治療ゾーンの境界で、光学作用が比較的明確に切り替わる 単純な二重焦点ではなく、光学特性が連続的・非単調に変化する
中心部 遠方視力を補正するDistance Correction Zone 遠方視を確保しながら、EDoF光学系の一部として機能
治療光学 治療ゾーンで約+2.00 Dの近視性デフォーカスを形成 選択的な高次球面収差(Higher-Order Spherical Aberration)などを利用し、焦点深度や網膜像質を調整
焦点のイメージ 遠方矯正焦点と網膜前方の治療焦点という複数の焦点群を形成 1点または2点の焦点ではなく、前後方向に焦点深度の広い光学領域を形成
主な近視抑制刺激 網膜前方に意図的な近視性デフォーカスを形成する 網膜上~網膜前方の像質を維持しつつ、網膜後方の像質を低下させるような網膜像質の制御を狙う
加入・デフォーカス量 治療ゾーン:約+2.00 D Low/Middle/High の3タイプ。概ね+0.75 D/+1.50 D/+2.25 D相当の焦点深度設計
小児近視治療としての国内位置づけ 近視進行抑制治療用として国内承認あり。近視の視力補正と進行抑制を目的として使用 国内では基本的に遠近両用コンタクトレンズとして承認されており、小児近視進行抑制を目的とする使用は適応外使用
両コンタクトの設計思想の違い

MiSight:網膜前に約2 Dの像を作る。
1DayPureEDoF:網膜前方の像質を比較的良くし、網膜後方の像質を比較的悪化させる。

両コンタクトの瞳孔径による遠近配分の違い

MiSight:瞳孔径によって「遠方視と近方視」の比率がかなり変わる。
1DayPureEDoF:瞳孔径によって、「遠方視と近方視」の比率があまり変わらない。

ここに両コンタクトの設計思想の違いが大きく表れる。

両コンタクトの近視抑制効果

効果に差異がないというのは、ここで書いた通り。

両コンタクトの価格

MiSight:6000円!←認可レンズだから??
1DayPureEDoF:3000円


処方上の説明&留意ポイント
  • 10時間以上6日以上の必要あり
  • 過矯正にせず、低矯正にとどめる
  • ハログレがでることもある

2026/10/19追記 以下の違いに留意。

  • MiSight、1dayPure EDoFなどの近視抑制ソフトコンタクトレンズは、中心~周辺網膜へ近視性デフォーカスを与える。
  • オルソケラトロジーは、主として周辺網膜に近視性デフォーカスを形成する。

人工網膜の国内初治験について。

「人工網膜」国内初の治験開始、電極チップ使い物の形を判別可能に…難病「網膜色素変性症」の失明患者対象 という記事をみつけたので、調べてみました。

上記記事より引用

阪大の森本 壮たけし 准教授(眼科学)は「色の判別は難しいが、物の存在が分かるだけでも生活水準は飛躍的に向上する。患者に光を届けるため、実用化を目指したい」

治験は今年から始まり、阪大、愛知医科大、杏林大の3施設で、失明した患者計6人に実施する。

 


「BBCでも似たようなこと言ってたわ」と思って調べると、

米国で開発され英国などの欧州でも導入された「Argus II(アーガス2)」という装置が有名で、一時期CEマーク(欧州での医療機器認可)を取得し臨床応用が進みました。しかし、以下のような課題がありました。

  • 網膜に電極を鋲で直接固定するため、長期運用時の網膜組織へのダメージが懸念された。

  • 採算性やデバイス維持の問題からメーカーが事業を撤退・縮小するケースがあり、持続的なサポートが課題となった。

と、事実上撤退状態にあるらしい。


ロボット手術 みたく、「隣国は、すでに実用化しているんだろうーなー」

  • 中国でも非常にアグレッシブな人工網膜・視覚再生研究が行われています。 中国の研究は「新素材やナノテクを駆使して、いかに解像度を上げて人間の目に近づけるか(あるいは超えるか)」という先端チャレンジに強みがあります。

  • 一方で、日本の大阪大学の取り組みは「長期間安全に体内で動かす医療機器として、いかに確実に患者の元へ届けるか」という実用化・薬事承認のフェーズで世界の一歩先を進んでいると言えます。

 


“One-Year Outcome of 49-Channel Suprachoroidal-Transretinal Stimulation Prosthesis in Patients With Advanced Retinitis Pigmentosa” (Investigative Ophthalmology & Visual Science, 2016)

「ロボット手術を目指して」を聴講しました。

第12回黄斑疾患フォーラム@尼崎 都ホテル

上田高志先生のご講演でした。つい先日まで東大眼科の准教授でこの分野を研究していた御高名な先生のようです。

  • 網膜硝子体手術のような微細操作が求められる場面で、人間では100ミクロン程度の振戦が避けられないが、ロボットは微動だにしない。
  • ダビンチは解剖学的に困難な場所にアプローチできるため、付加価値が大きい。
  • ヨーロッパではpreciseという眼科ロボットがある。ただし、精度が増すというだけなので、ダビンチにくらべ市場訴求にかける。

白内障手術に関しては、「一人の術者が10人分こなして生産性が上がるかも」で、開発中とかの話なし。


この分野でも、中国がトップレベルにあり、preciseと同様のシステムを構築し、すでに18例ほど実戦投入したとのことでした。
研究にかける金額が東大とはけた違いらしい。🥲

新しい緑内障薬ロープレッサについて。

セタネオに続き、新しい緑内障薬が発売される予定です。
「まだ未発表です」とのことでしたが日経メディカルに載ってました。

よると、新薬の名前はロープレッサ点眼液0.02%で、成分はネタルスジルメシル酸塩です。

  1. リバスジル(グラナテック)との共通点
    • Rhoキナーゼ(ROCK)阻害によって房水流出を促進
  2. ノルエピネフリン・トランスポーター(NET)への作用
    • 房水産生を抑制

房水流出↑+房水産生↓ → グラナテックより効いて、一日一回の点眼でOK

2のNET(ルエピネフリントランスポーター)阻害薬は、ノルエピネフリンの再吸収を抑える。
かつて存在したピバレフリンと同様の交感神経作動薬だが、再吸収抑制という点が異なる。
交感神経作動により、緑内障薬の充血を抑制するかというと、さにあらずで、充血発生率は50%に及ぶらしい。

DUESりも充血を気にする患者さんは多い。
ので、充血発生頻度の一覧を掲載する。

Representative Drugs Hyperemia Incidence (%) Nature of the Redness & Clinical Context
グラナテック Ripasudil (Glanatec) 50% – 75% Physiological & Transient: Caused by direct relaxation of blood vessel smooth muscle. Redness is usually mild-to-moderate, peaks 1–2 hours after drop instillation, and often fades within a few hours.
ロープレッサ Rhopressa 50% – 55% Physiological & Persistent: Similar to pure ROCK inhibitors, but often lasts longer. It is also associated with conjunctival micro-hemorrhages (tiny red spots on the white of the eye) in about 20% of patients.
キサラタン、エイベリス、セタネオ系 • Latanoprost (FP)
• Bimatoprost (FP/Prostamide)
• Omidenepag isopropyl (selective EP2 agonist)
15% – 45%
(Drug dependent)
Inflammatory/Vasodilatory: FP agonists cause redness via nitric oxide release and prostaglandin-induced vasodilation.
• Latanoprost: ~15%
• Omidenepag (EP2): ~22%
• Bimatoprost: ~45%
アイファガン Alphagan P (0.1%, 0.15%), Brimonidine 0.2% 10% – 25% Allergic/Delayed Reaction: Brimonidine is an alpha-2 agonist that actually causes acute vasoconstriction (whitening the eye initially). However, with chronic use, 10–25% of patients develop a delayed allergic conjunctivitis, resulting in severe redness, itching, and follicles.
エイゾプト Dorzolamide (Trusopt), Brinzolamide (Azopt) 1% – 10% Very Low: Topical CAIs do not have significant vasodilatory properties. Redness is rare and usually due to localized chemical irritation, burning/stinging upon instillation, or mild ocular surface dryness.

 


2026/07/31追記

ロープレッサは治験段階でのドロップアウト率が50%弱あったということである。某談。

多焦点レンズの画像を更新しました。(+AI噺)

VisionSimulator の画像が更新されたので、当院の画像も呼応させました。

リビングや買い物の表示が、

 ⇒ 

  ⇒ 

と、分かりやすくなってます。


当院スタッフに「AIに聞いてくれる?」というと「チャッピーに尋ねてみる」とのこと。
●僕の3大AI評価
Gemini → クラスの人気物になりたいらしい。いい加減なとこもあるお調子者。
Claude → 理系上等。出木杉君で高杉君。愛想ない。
チャッピー → そつなくこなす委員長。出木杉君ほどじゃないが、ちゃんとできてる。

ミニモノビジョンの術前屈折度と希望加入度数の関連について

最近実施したミニモノビジョン症例について報告します。
当院では、FESTに基づいて優位眼から先に手術を行い、術後にコンタクトレンズを装用して非優位眼への負荷度数を決定しています。

そこで、「術前屈折度と希望加入度数の関連」についてしらべてみた。

中等度の相関がみられる。 Pearson correlation (r) ≈ -0.65(Moderate: 0.40 to 0.69)

 

つまり術前近視気味だった人のほうが、より強い加入度数を好むということ。

術前に近視が強い人ほど、ミニモノビジョンの左右差に耐えうる力が強いと考えられるかもしれん。

 

 

アップニークについて

かつてMyd-P希釈液を眼瞼下垂に対して処方したことがあるが、散瞳をきたし断念した経緯がある。

今回、参天製薬から発売されたアップニークは、交感神経刺激薬だが、あまり散瞳しない。

その理由は

  1. 0.1%と非常に低い濃度
  2. α1受容体(交感神経を興奮させる)だけでなく、α2受容体(交感神経の興奮を抑える)にも作用する。

私も使用してみたが、散瞳は全く感じない。瞼は心持ち上がったよーな?
アップニーク使用前              アップニーク使用後


保険未適用で、自由診療扱いです。当院では

  • 診察・検査費用(毎回 1,950円)
  • 点眼薬費用(5,500円/30本・箱)

同意書 置いてます。興味ある方、ご高覧くださいませ。

2026/10/27 追記
1日一回朝点眼です。

BalancedTipについて(続き)

奈辺が”Balanced”かというと

Alcon descibes the INTREPID Balanced Tip as giving increased torsional amplitude at the distal end and reduced tip movement at the incision

Bent Tip:
先端も動くが、シャフトも比較的動く
→ 創口で摩擦・熱が出やすい

Balanced Tip:
先端の動きは大きい
シャフト/創口部の動きは小さい
→ 切削効率と創口安全性のバランス


前回述べたように、
Balanced tip serves as an exceptional cutting engine that emulsifies dense, central nuclear quadrants with minimal Cumulative Dissipated Energy (CDE)
しかし、
Larger spatial movement requires more total kinetic energy, yet the machine records lower “ultrasound energy” (Cumulative Dissipated Energy, or CDE).
When you read the “ultrasound power” or CDE on an Alcon Centurion screen, you are tracking a mathematical formula derived from the electrical power (voltage and current) sent to the piezoelectric crystals in the OZil handpiece. [1]

つまり、CDE表示は供給電力を表しているのであって、実際に前房内で生成される運動エネルギーとは異なる。
運動エネルギー自体は、「振幅が192 µmでKelmanTipの130 µmより大きいため 68%増える」
結果、(統計的に有意ではないが)術後の角膜内皮減少率が大きくなるらしい。 [2]

Mackool™  Systemからの悲願であった角膜バーンは減らせたが、その分やや中心部のほうに負担寄せ気味ともよめるかな?

1.(PDF) Comparison of cumulative dissipated energy between the Infiniti and Centurion phacoemulsification systems
2.Comparison of 45-degree Kelman and 45-degree balanced phaco tip designs in torsional microcoaxial phacoemulsification – PMC