高次非球面単焦点眼内レンズ TECNIS Eyhanceの臨床評価

J&J主催のWeb Seminarを視聴しました。

で、言わんとするところは、

アイハンスは、従来の単焦点レンズを超える単焦点IOLである。
緑内障があっても使える。

供給不安が解消したので、「ターゲットを拡張したい、しかし、手持ちのsymphonyやsynergyとの競合は避けたい」ということかな。

DIB00Vがアイハンス。ちょっと、露骨かな~。

僕が個人的に感じるのは上記のように、Farでの焦点深度が深いためか、遠方での度数ずれ許容度が高いような印象を受ける。デフォーカス曲線が-0.5D前後までなだらかなことが好結果をもたらしてるのだろう。

眼内レンズの入れ替え手術

眼内レンズの度数変更を希望する場合に行う手術。

  1. 眼内レンズとカプセルの癒着を粘弾性物質ではがす。
  2. レンズを前房に脱出させる。
  3. レンズ切断鋏でレンズ分割。
  4. 分割片を摘出

という手順で、カプセルと角膜内皮に留意すれば、簡単な手技である。

つかう鋏は

参考動画

術後屈折度にコンシャスな患者さんが増えており、変更希望があれば間を置かず実施するのが良ろし。

2023年の目標(手術編)

挿入レンズのターゲットずれを極小化する
そのためには、リアルタイムでズレ検出し、フィードバックをかける必要がある。

既に、当院では、術後屈折をデーターベース化&グラフ化しているが、
①採用レンズが多岐にわたる。
②全患者さんのデータをとってくる。
ため、集計に長時間かかる。

そこで、ISAMデータベース(MDB)はやめてSqlServerに移植する予定。

AI画伯

本年も、よろしくお願いします。ᕱ⑅ᕱ


☞当院の決定式はBarrett Ⅱ。現在のところ、、
・アイハンス→ほぼねらい目通り。
・クラリオン→0.5~0.8Dくらい近視化。
・NIDEK→ほぼねらい目通り。
NIDEKレンズはやや入れにくいような気がするが意外と優秀。
圧倒的に入れやすいのがクラリオン。

miLoopハンズオン

先日のmiLoopを模擬眼で使ってみた。

ポイントは

  1. ハイドロをしっかり行う。
  2. 挿入時にはリング先をCCC縁に近づける。
  3. ハンドルを左に回旋させた状態を保ってリングを開く。
  4. リングが完全に開いてから、手前引き気味&揺らし気味にしてハンドルを右回旋させる。

米国ではそこそこ普及しているが、日本では全然ということでした。
そやろな~という感じ。


参考url

分割システム miLOOP.pdf
Hand positioning of ZEISS miLOOP – YouTube

眼内レンズIntensityについて

Intensityの最新情報@リッツカールトン大阪を聴いてきました。

Intensity SeeLens type

-1次、-2次の今まで捨て置かれてた球面収差を利用することにより、3焦点+2焦点=5焦点を実現している。
そのため、光ロスが従来型レンズよりも40%少なく、93.5%の光透過率をもつ。

-1次,-2次の収差を回収している
defocus曲線は5つのこぶを持つ

レンズ中央部は中間距離になっている点は、他社レンズが中央を遠方に設定している点と異なる。
ただし、瞳孔径の大きさに応じて、power配分が大きく変わる+上記の収差回収により、なだらかなdefocus曲線を獲得している。

瞳孔が小さくなると、近見のpowerが大幅に向上する

「近見視力が他社レンズより劣る」と、えの眼科クリニック絵野亜矢子先生は提示されていましたが、ツカザキ病院野口三太郎先生によると「両眼挿入の場合には、近見における眼鏡装用率も大幅に改善する」

【感想】

  • 両眼挿入のできる若者で、瞳孔異常がない、ハログレ最小化を希望する人が対象。
  • 回折格子がついているレンズとしては究極系に近い。ただ、世の中の流れ的には回折格子を廃止する方向なので微妙かな。
  • 開発元のイスラエルのHanita社は、MiniwelのイタリアSifi社をサポート体制において大きく凌駕する。

miLoopについて

この記事では、Zeptoという前嚢切開器具、miLoopという核分割器具がフェムトセカンドレーザーの代替候補として挙げられている。

miLoopについて書く。

MiLoop外観

IOLのインジェクター風の先から輪っかがでてきて、それを嚢内で回転させて核を挟み込む、という仕組みである。

手術手技が、Devide&conquerであろうと、chopであろうと、水晶体を押し込む力が発生するが、押すより引くという発想転換が欧米風でよい。

硬い核の除去に適するというのが、下の動画。

https://eyetube.net/videos/miloop-for-nucleus-fragmentation-in-hypermature-cataract

しかし、この動画では小瞳孔から実にうまく除去している。

https://eyetube.net/videos/miloop-mastered

iris retractorなしで分割し、ベンチュリーのphacotipを瞳孔中央に保持したまま処理を終えている。

したがって、汎用性があるデバイスではないか?と感じるが如何。

ミニウェル・プロクサを片眼のみに挿入できるか?

「片眼に単焦点レンズを入れたが、僚眼にはミニウェル・プロクサをいれたい」という御要望があった。
そこで調べたが、結論は「無理っぽい」です。


片眼プロクサ and/or 両眼プロクサの御所望は結構多いらしい。
しかし、Sifi社は『ミニウェル・レディを優位眼に、ミニウェル・プロクサを非優位眼に入れることを「Well Fusion」と呼び、両者は補完的に働く』に拘りおる由で、プロクサを単独販売しない。
これは、優れて欧州的と云うべし。


「Well Fusion」を購入してプロクサのみ挿入する手はあろうが、コスト倍で非定型挿入というリスクが発生する。
どうしても非回析型の近方レンズを入れるなら、既存のアイハンスを入れるか、Vivity登場を待つのは如何か知らん?

HUS(Heads Up Surgery)について

第24回兵庫県学科フォーラムでHeads Up Surgeryの講演を聴きました。
顕微鏡をのぞかずに、3Dディスプレイ+3D眼鏡で行う手術です。

AlconのNgenuityとZeissのARTEVO 800が有名処だけど、演者の県尼長谷川 麻里子先生はNgenuityを使ってました。

長所は、

・画面の明るさを上げ、低照度でも手術ができるため網膜光障害を低減できる。
・優れた拡大倍率により、詳細な手術画像が得られる。
・色相や彩度の調節により視認性を向上できる。
・画面分割により術前情報を共有できる。
・術者のエルゴノミクスを改善できる。
・教育的指導に有用

硝子体手術屋さんにはメリットが大きいと思う。

←顕微鏡像 →Ngenuityで処理後

画質改善は明らかだ。

一方、白内障手術では、白黒画像にするとCCCや皮質処理がやりやすくなる程度の益。

私の感想

・手術するのに3D眼鏡をかけるのヤだな。
・さりとて、眼鏡なしだと平面的だよな。
・白内障手術的にはウレシみ少ないかな?

  

次ステップの遠隔ロボット手術もみすえて、各社しのぎを削るの構図。

けど、ローカルでlatency70msは少しラグいんでは?
FPSのネット対戦だと苦しいping値だ。

センチュリオン設定

先日来、白内障手術機械のCenturionを使ってるが、他サージャンの設定を見せてもらうと、たった一つの設定で手術を全うしておられる方、多数。

業者さんに聞くと、特に日本で30歳以下の術者は、唯一設定を好むらし。今まで、マルチフェーズで細かく設定を使い分けてきた身として驚く。

、、みたいな?

実践すると、本当に一本設定で完走できそうである。そして、このオートマ感こそがActiveFluidicsの真の訴求点といえるかもである。


が、まぁ、術者としてのトリビアな矜持とか、実際上の必要性とかあるので、私は2本は設定します。


2022/8/5追記

0.04ccがサージ閾値 @ IOP=55mmHg≒ボトル高70cm≒やや高め?

ミニウェル・レディ、ミニウェル・プロクサについて(2)

ミニウェル・レディの見え方について、日本語資料を入手しましたー。

夜間運転のシミュレーションは以下の通り。ハロー・グレアはほぼない。何なら単焦点レンズよりも少ないかしらん。

遠方から近方までの視力表の見え方シミュレーション。

さすがに、遠方の見え方は単焦点が一番よいかな。


今なぜ、このレンズが脚光を浴びているかについて考按する。

Sifi社からミニウェルがEDoFレンズの嚆矢として発売されたとき、巨人AMO社やALCON社も当然このレンズを研究したはず。しかし、市場投入するにあたって球面収差だけでは近見困難なので、回折格子を導入した。
 ↓
市場拡大に伴い副作用面に対する不満、すなわち光エネルギーのロスとかハログレが問題視されるようになった。
 ↓
温故知新的に球面収差onlyのミニウェルが見直された。Sifi社も近方不足は認識していたためproxaをWell Fusionとして発売した。
 ↓
意識高い系な人達が着目して盛上がってる + AMOやALCONも回折格子を持たないレンズ発売。⇐ いまここ。


適応についても、考按する。

「神経質な方、期待度が過度に高い方は避けた方がよい」である。ここから引用すると

considering a MINI WELL®, make sure you choose patients with appropriate psychological and clinical profiles. Ideally,
you’re looking for easy-going Generation X-ers, with relatively active lifestyles and realistic expectations for the surgical procedure. In addition, and critically, they should have healthy eyes – in particular a
healthy tear film and no dry eye syndrome (which is one of the main contributing factors to IOL failure).
イージーゴーイングなX世代の人たち(1960年代中盤から1970年代終盤に生まれた世代)で、活発なライフスタイル、現実的な期待度、眼疾患がない(特にドライアイがないこと)を対象者とするべきである。

しかしながら、現状このレンズを意識高く抱いてる人って、「神経質な方、期待度が過度に高い方」じゃね?と感じる。このレンズを採用するクリニック側は「自費診療」という∞リスクを負担する。患者さん側も、また然りである。

この供給サイドと需要サイドのスプレッドが、かなり開いてるので、高額な料金設定となる ⇒ ますます「期待度が過度に高い方」が対象となる、、のでは?

このスプレッドを最小化すべく、当院ではWell Fusion両眼100万円で応需します。

挿入動画


2022/6/14追記

輸入業者からWellFusionの追加資料。

Well Fusionの特徴と利点


2022/9/11追記

AMOテクニスのアイハンス眼内レンズについて │ 眼科医のブログ (tarumi.co.jp) の追記に書いたように片眼アイハンス、片眼クラリオンという呉越同舟セットが意外と好評である。Miniwell検討者も一度考慮すべきかも。