眼内レンズ展望 Vivity(2)

X-wave technologyと銘打つのは、革新的でヒ・ミ・ ツ な技術というニュアンスかしらん?

奈辺をXと謳うのか、調べました。

大きいほうは「1μm以下のスムーズな盛り上がり」
小さいほうは「2.2mmの凹曲面」

この同心円状構造等が「先行する波面と遅延する波面」を作り出すらしい。

佐藤眼科 様から引用

アイハンスや旧Miniwellでは不足する加入度数を、回折格子なしで付加を以て「X-wave technology」と称すのであろう。 cf.(別記)


回折格子がないので、ハログレが皆無ではないが少ない。

 

☞続きます。


(別記)
Optical Principles of Extended Depth of Focus IOLs (alconscience.com) から追加。

The emergent wavefront mimics the anterior lens surface shape after light passes through the surface transition elements. The wavefront is delayed when it passes through the central part of the surface transition elements and advanced when passing outside of the central part. The delayed part of the wavefront travels slower and focuses closer to form an image towards the near end of the extension and the advanced part of the wavefront travels faster and focuses further to form an image at the far end of the extension. As the wavefront propagates, it collapses down resulting in the wavefront being stretched forward and backward thereby creating a continuous extended focal range.

●wavefrontが先行するとか遅延するとかの表現は、extended focal rangeにおいてレンズ外側がfarに、同心円がnearに合うという意味っぽい。

真ん中の同心円構造については、

●波形を矩形に成型する働きがある様子。

以上二つが、X-wave technologyのヒ・ミ・ ツ


2023/5/19追記

「wavefrontが先行するとか遅延するとか」は、屈折度が違う物質を通るために実際に光の速度が遅くなるとのことでした。担当さん談。
1μ盛り上がっている部分が、わずかに光速度を遅くするということらしい。担当さん談2。

眼内レンズ展望 Vivity

既報してたViviyが、漸く6月から発売される。

渉猟するに、先行施設とか営業動画やら散見するが、日本語論文は見当たらん。
お上から、箝口令がしかれてるんだろう。

で、英ペーパーを読みました。


IFが高いのは、Extended depth-of-focus (EDOF) AcrySof® IQ Vivity® intraocular lens implant: a real-life experience

Saying..

  • 54人、108眼にVivityを挿入し前向き研究を行った。
  • 遠見、中間、近見視力、見え方の質を調査した。

遠・中・近視力


LogMAR表記分かりにくいので、視力表記すると、

LogMAR小数視力
矯正視力01
80cm裸眼視力0.050.89
60cm裸眼視力0.060.87
30cm裸眼視力0.150.71

以前のEyhanceデフォーカスカーブに重ねると、

黒:単焦点 灰色:Eyehance 青:Vivity

優秀な成績ですね!

術後の愁訴

ハロー・グレア、スターバーストが皆無とはいかない。
むしろ、そこそこあるようだ。

瞳孔サイズと見え方

We found a positive correlation
between the pupil sizes and the Quality of Vision score (Tau-
Kendall coefficient 0.42; p < 0.01).

という点は、他の回折型レンズIntensityと似る。真ん中の盛り上がり部分が影響を及ぼしているのかしらん。
要は、若くて瞳孔異常が少ない方が宜し、ということ。

☞続きます。

高次非球面単焦点眼内レンズ TECNIS Eyhanceの臨床評価

J&J主催のWeb Seminarを視聴しました。

で、言わんとするところは、

アイハンスは、従来の単焦点レンズを超える単焦点IOLである。
緑内障があっても使える。

供給不安が解消したので、「ターゲットを拡張したい、しかし、手持ちのsymphonyやsynergyとの競合は避けたい」ということかな。

DIB00Vがアイハンス。ちょっと、露骨かな~。

僕が個人的に感じるのは上記のように、Farでの焦点深度が深いためか、遠方での度数ずれ許容度が高いような印象を受ける。デフォーカス曲線が-0.5D前後までなだらかなことが好結果をもたらしてるのだろう。

眼内レンズの入れ替え手術

眼内レンズの度数変更を希望する場合に行う手術。

  1. 眼内レンズとカプセルの癒着を粘弾性物質ではがす。
  2. レンズを前房に脱出させる。
  3. レンズ切断鋏でレンズ分割。
  4. 分割片を摘出

という手順で、カプセルと角膜内皮に留意すれば、簡単な手技である。

つかう鋏は

参考動画

術後屈折度にコンシャスな患者さんが増えており、変更希望があれば間を置かず実施するのが良ろし。

2023年の目標(手術編)

挿入レンズのターゲットずれを極小化する
そのためには、リアルタイムでズレ検出し、フィードバックをかける必要がある。

既に、当院では、術後屈折をデーターベース化&グラフ化しているが、
①採用レンズが多岐にわたる。
②全患者さんのデータをとってくる。
ため、集計に長時間かかる。

そこで、ISAMデータベース(MDB)はやめてSqlServerに移植する予定。

AI画伯

本年も、よろしくお願いします。ᕱ⑅ᕱ


☞当院の決定式はBarrett Ⅱ。現在のところ、、
・アイハンス→ほぼねらい目通り。
・クラリオン→0.5~0.8Dくらい近視化。
・NIDEK→ほぼねらい目通り。
NIDEKレンズはやや入れにくいような気がするが意外と優秀。
圧倒的に入れやすいのがクラリオン。

miLoopハンズオン

先日のmiLoopを模擬眼で使ってみた。

ポイントは

  1. ハイドロをしっかり行う。
  2. 挿入時にはリング先をCCC縁に近づける。
  3. ハンドルを左に回旋させた状態を保ってリングを開く。
  4. リングが完全に開いてから、手前引き気味&揺らし気味にしてハンドルを右回旋させる。

米国ではそこそこ普及しているが、日本では全然ということでした。
そやろな~という感じ。


参考url

分割システム miLOOP.pdf
Hand positioning of ZEISS miLOOP – YouTube

眼内レンズIntensityについて

Intensityの最新情報@リッツカールトン大阪を聴いてきました。

Intensity SeeLens type

-1次、-2次の今まで捨て置かれてた球面収差を利用することにより、3焦点+2焦点=5焦点を実現している。
そのため、光ロスが従来型レンズよりも40%少なく、93.5%の光透過率をもつ。

-1次,-2次の収差を回収している
defocus曲線は5つのこぶを持つ

レンズ中央部は中間距離になっている点は、他社レンズが中央を遠方に設定している点と異なる。
ただし、瞳孔径の大きさに応じて、power配分が大きく変わる+上記の収差回収により、なだらかなdefocus曲線を獲得している。

瞳孔が小さくなると、近見のpowerが大幅に向上する

「近見視力が他社レンズより劣る」と、えの眼科クリニック絵野亜矢子先生は提示されていましたが、ツカザキ病院野口三太郎先生によると「両眼挿入の場合には、近見における眼鏡装用率も大幅に改善する」

【感想】

  • 両眼挿入のできる若者で、瞳孔異常がない、ハログレ最小化を希望する人が対象。
  • 回折格子がついているレンズとしては究極系に近い。ただ、世の中の流れ的には回折格子を廃止する方向なので微妙かな。
  • 開発元のイスラエルのHanita社は、MiniwelのイタリアSifi社をサポート体制において大きく凌駕する。

miLoopについて

この記事では、Zeptoという前嚢切開器具、miLoopという核分割器具がフェムトセカンドレーザーの代替候補として挙げられている。

miLoopについて書く。

MiLoop外観

IOLのインジェクター風の先から輪っかがでてきて、それを嚢内で回転させて核を挟み込む、という仕組みである。

手術手技が、Devide&conquerであろうと、chopであろうと、水晶体を押し込む力が発生するが、押すより引くという発想転換が欧米風でよい。

硬い核の除去に適するというのが、下の動画。

https://eyetube.net/videos/miloop-for-nucleus-fragmentation-in-hypermature-cataract

しかし、この動画では小瞳孔から実にうまく除去している。

https://eyetube.net/videos/miloop-mastered

iris retractorなしで分割し、ベンチュリーのphacotipを瞳孔中央に保持したまま処理を終えている。

したがって、汎用性があるデバイスではないか?と感じるが如何。

ミニウェル・プロクサを片眼のみに挿入できるか?

「片眼に単焦点レンズを入れたが、僚眼にはミニウェル・プロクサをいれたい」という御要望があった。
そこで調べたが、結論は「無理っぽい」です。


片眼プロクサ and/or 両眼プロクサの御所望は結構多いらしい。
しかし、Sifi社は『ミニウェル・レディを優位眼に、ミニウェル・プロクサを非優位眼に入れることを「Well Fusion」と呼び、両者は補完的に働く』に拘りおる由で、プロクサを単独販売しない。
これは、優れて欧州的と云うべし。


「Well Fusion」を購入してプロクサのみ挿入する手はあろうが、コスト倍で非定型挿入というリスクが発生する。
どうしても非回析型の近方レンズを入れるなら、既存のアイハンスを入れるか、Vivity登場を待つのは如何か知らん?

HUS(Heads Up Surgery)について

第24回兵庫県学科フォーラムでHeads Up Surgeryの講演を聴きました。
顕微鏡をのぞかずに、3Dディスプレイ+3D眼鏡で行う手術です。

AlconのNgenuityとZeissのARTEVO 800が有名処だけど、演者の県尼長谷川 麻里子先生はNgenuityを使ってました。

長所は、

・画面の明るさを上げ、低照度でも手術ができるため網膜光障害を低減できる。
・優れた拡大倍率により、詳細な手術画像が得られる。
・色相や彩度の調節により視認性を向上できる。
・画面分割により術前情報を共有できる。
・術者のエルゴノミクスを改善できる。
・教育的指導に有用

硝子体手術屋さんにはメリットが大きいと思う。

←顕微鏡像 →Ngenuityで処理後

画質改善は明らかだ。

一方、白内障手術では、白黒画像にするとCCCや皮質処理がやりやすくなる程度の益。

私の感想

・手術するのに3D眼鏡をかけるのヤだな。
・さりとて、眼鏡なしだと平面的だよな。
・白内障手術的にはウレシみ少ないかな?

  

次ステップの遠隔ロボット手術もみすえて、各社しのぎを削るの構図。

けど、ローカルでlatency70msは少しラグいんでは?
FPSのネット対戦だと苦しいping値だ。