クボタメガネについての感想文

患者さんから「クボタメガネについて知っていますか?」と問われたのだが、不勉強より識らず、調査してみた。⇦貴重な情報ありがとうございました。

Googleると、窪田製薬の“近視矯正メガネ”、2021年中に台湾でまず販売へ 価格は50万円以下にが上がってくるのでさっそく読む。

「通常眼軸長は年齢とともに伸びる、もしくは成長が止まるというものであり、人工的な光により眼軸長が対象眼と比較して短くなるということは、世界でも前例がありません」

「人工的な光により眼軸長が対象眼と比較して短くなるということは、世界でも前例がありません」という文言の意味が
①「眼軸長の進展具合がコントロール眼よりも少ない」という意味なのか
②「被験者の眼軸長が実際に短くなった」という意味なのか

ほぼ①のような気がするけれども、②と読めなくもない気もする(1)


そこで、窪田製薬ホールディングスにといわせたところ、このペーパーをいただいた。

超々要約すると

AR技術を使ってDISMと同じ原理の眼鏡を作成した。

こんな感じの眼鏡をかけると、

被検者の目には上記のように映るようである。

つまり、上記の①②のどちらかというと、①の意味だと分かる。

文中にもあるように、眼球の成長に伴って、至的な刺激をプログラマブルであるという点は、条件が固定されているDISM型コンタクトに対する優位点であろう。

したがって、50万円以下という価格が見合うかどうかは、個々人の現況にたいして「至的な刺激をプログラマブル」し、アップロードできるようになるかどうかにかかってくると感じた。


1:窪田製薬の英文プレスリリースにも、「axial length decreases」とあるが、「compared to the control eye」なので、表現がややミスリーディングな気はする。

Smart glasses made in Japan could slow down or even reverse myopia」という紹介文をよめば、「眼軸長が短縮するかもしれない」と期待するのが普通であろう。

いずれにせよ、やや広告的な表現が多いと感じる次第なので、アカデミックなペーパーを出していただき、①的な意味においてDISM型コンタクトとの比較を論じるべきと思う。

EDoF型の近視抑制コンタクトレンズ

現在のところ、DIMSレンズ(デフォーカス組み込みレンズ)は、日本国内では承認されていない。しかし、デフォーカス機構とは異なった機序のEDoF型タイプのコンタクトレンズはすでに国内承認されている。

そのEDoF型タイプのコンタクトレンズが眼軸長抑制に働くという論文を紹介する。

論文内容を要約すると、

コントロール群と、デフォーカスコンタクトレンズ装用群、EDoF型コンタクトレンズ装用群を対象に近視の進行程度を調べた。

コンタクトレンズ装用群ではデフォーカスコンタクトレンズ装用群、EDoF型コンタクトレンズ装用群ともに、眼軸長伸長が優位に抑えらえた。

抑制効果は、デフォーカスコンタクトレンズ装用群、EDoF型コンタクトレンズ装用群の間で差がなかった。

実は、EDoF型のコンタクトレンズは、シード1dayPureというものがすでに市販されている。このレンズは、本来は老眼世代に対する遠近両用コンタクトである。

つまり、DIMSレンズ(デフォーカス組み込みレンズ) を個人輸入しなくても、このレンズで十分近視抑制効果が期待できるということである。


すでに、近視治療に熱心な医療機関では採用されているということであるので、当院でも早速導入し、アトロピン点眼、オルソケラトロジーに次ぐ第3の治療法として患者さんにはご説明する予定である。


2021/11/5追加情報:上記のシード1dayPureを利用した前向きのコーホート研究が阪大主導で実施中である。「約100人を対象に単焦点・Low(EDoF)・Mid(EDoF)にて研究を実施している」と聞き及ぶので、かなりはっきりした統計結果が得られるだろう、と期待する。

焦点深度拡張型CLを軽度叉は中等度近視と診断された小学生に処方することにより、当該レンズで近視進行抑制効果がどの程度あるか、また、焦点深度の違いにより近視進行抑制効果に差があるかを検証する


2024/3/18追記

質問があったので、調査の上追記す。

左:1Dayピュアマルチステージ・ビューサポート 真中:アルコンクーパービジョンの遠近両コンタクト 右:1Dayピュアイードフ

・1Dayピュアイードフ→全網膜で網膜上と網膜手前に焦点を持つ。
・1Dayピュアマルチステージ・ビューサポート→中心部分は網膜上、周辺部分が網膜手前に焦点を持つ。
つまり、両者のデフォーカス機構は全く異なる。

レンティスコンフォートWEBセミナーを聴講しました。

2021/10/14(木曜日)、金沢医科大学 佐々木洋先生の講義を受講した。

レンティスコンフォートはハロー、グレア、スターバーストが発生しにくいため、夜間運転する人に適応があることは以前にも書いた

講義の概要

講義内では、他レンズとの比較画像をシミュレータで作成し発表されていたので掲示する。

上記画像の見え方を要約すると、

  • 単焦点はハローグレアはあまり出ない
  • 2焦点は強いハロー
  • 3焦点は中心部に比較的強いハロー
  • 焦点深度拡張型はスターバストが強い。
  • 連続焦点型は ハローとスターバースト両方が強い。
  • LENTISは単焦点と変わらない。

しかも、レンティスのハロー、グレアの経時変化は以下のように、1ケ月以上経過するとほぼ消失するとのことである。

単焦点レンズとの距離別の視力比較は、全距離で単焦点レンズを上回る成績である。

講義の結論

  1. グレアハローが少なく、全距離視力で単焦点レンズを上回っていて、保険適応できる。
  2. 「単焦点レンズしか使用できない症例以外すべて」が適応である。

当院でもレンティスコンフォートを紹介しているが、実際には、単焦点か通常の自費の多焦点を選択する人が多い。なぜかな?


あと、個人的に参考になった点は

  • マイクロモノビジョン(左右差を±0.5Dから±0.75D)を採用する満足度が向上する。片眼手術後に患者さんに選んでもらう。
  • 乱視が残ると患者さんの満足度が低くなるので、トーリック型のレンティスコンフォートを選ぶべし。

ロービジョン対策用のデジタルデバイス

RETISSAというロービジョン対策用の電子デバイスが発売され、とても意欲的な商品と感じたのでご紹介する。

この機械は、網膜に直接レーザー書き込みを行って認識させるということで、従来の拡大読書器とは一線を画する。

僕も実際に使わせてもらったが、非常に鮮明な像が見えるので驚いた。

GoolgeGlass などの眼鏡と違った意味での体験も現出できるのではないかと思わせるプロダクトといえる。


Cavetats

①網膜に投影するので、網膜機能が損耗している場合には効果が少ない。不正乱視対策用メガネと謳っているのはそのためだろう。

②70万円前後と高価なので、公的助成対象にならないと、使用できる患者さんは限られるであろう。

第23回兵庫県眼科フォーラム「眼圧が低いのに進行する緑内障」を聴講しました。

2021/10/2、東北大学中沢徹教授のweb講義を受講しました。

眼圧が低いのに進行する緑内障には以下の3パターンがある。

1.実は眼圧が高い。

・プラトー虹彩(前眼部OCTで虹彩の根元が立ち上がる所見がある)の場合、緑内障リスクが高まる。

対処:白内障手術を行って水晶体を後方に後退させる。

2.実は血流が悪い。

・最低血圧-眼圧≦50mmHgだと緑内障リスクが高くなる。

・高血圧治療薬を内服し、過剰に血圧をさえることは緑内障リスクを高める。

・朝と夜の血圧を測って夜の血圧が低い場合にも緑内障リスクが高まる。

・フラマー症候群のうち「冷え性、低血圧、のどが渇きにくい、完璧主義」が緑内障と関連がある。

対処:内科と連携して血圧変動を減らす。フラマー体質の場合には当帰芍薬散内服。

3.実は酸化ストレスが高い。

男性で太っていて心疾患がある場合や、女性であごがとがっていていびきがある場合には睡眠時無呼吸症候群であることがあり、緑内障リスクが高まる。

対処:睡眠時無呼吸症候群の場合にはCPAP治療を行う。酸化ストレスが高い場合には、食事、運動、サプリメント内服

前回、「瞑想をすると眼圧が下がる」という論文を紹介したが、瞑想も酸化ストレスを下げるのかもしれない。

「日常生活で気を付けることはありますか?」ときかれた場合「血圧を下げすぎないようにして、運動、食事、瞑想」「当帰芍薬散やサプリメントも有効かも」と答える必要があるな。。

コントラスト感度を落とした眼鏡で近視を抑制する。

眼軸長伸長を抑制する方法として、低濃度アトロピン点眼と、オルソケラトロジーを当院では採用している。「DIMSレンズ(デフォーカス組み込みレンズ)の実用化が待たれる」と以前に書いた

ところが、全く新しい発想の眼鏡が日本の眼科2021年9月号に掲載されていたので、紹介しする。

神経学者Neitzは、健常者においても網膜における強いコントラスト信号が眼軸長過伸展のトリガーとなっており、逆にコントラストを低減させる眼鏡を装用すれば近視進行を抑制できると考えた(コントラスト理論)。

しかし、現時点でのエビデンスは極めて限られている。レーザーホログラフィー技術を用いて中央部のクリアゾーンを除き、主にコントラストのみを低下させる眼鏡レンズが作成され2年間の大規模RCTが進行中である(Cypresst rial)。

中間分析では、屈折度数と眼軸長における抑制率は,それぞれ平均74%と59%であった。

元論文によると、文中のCypress Trial中は、2022/1/31まで実施予定であり、上記の中間分析とは開始12か月後の中間結果とのことである。

This alternative hypothesis, that high retinal contrast signals the eye to grow, predicted that reducing contrast will slow axial growth and prevent myopia progression. A pilot study to test this hypothesis was performed in children with rapidly progressing myopia. The children wore spectacles made to their prescription in which one lens was a standard of care corrective lens, while the contralateral lens incorporated optical elements that modestly reduced contrast. Remarkably, over the three-month trial period, axial growth was drastically reduced in the treated eyes compared to controls. When the lenses were then switched between eyes (i.e., contralateral crossover), the formerly treated eye resumed its growth, and former control eyes virtually stopped growing.

パイロットスタディーで、3か月間「通常レンズ」と「低コントラストレンズ」を左右に装着した眼鏡を使用させたところ、低コントラストレンズのほうが著しく眼軸伸長が抑えられたとある。


SightGlassという会社が眼鏡を作成しているようなので、「販売しているんですか?」とメールを出しておきました。返事が来たら掲載します。

マインドフルネスと緑内障

「瞑想をすると眼圧が下がる」「繊維柱帯における遺伝子発現も変化する」という、やや香ばしい感のある論文を読んだ。

Effect of Mindfulness Meditation on Intraocular Pressure and Trabecular Meshwork Gene Expression: A Randomized Controlled Trial

毎日45分間の瞑想を3週間にわたって続けたところ

①最大限点眼を行った場合(≒1mmHg)よりも、眼圧が下がった(≒5mmHg)

②繊維柱帯において拡張作用のある遺伝子が発現し、抗炎症作用のある遺伝子が発現していた。

①はともかく、②はマジ?という気はする。

過去にも、自律訓練法が有効であったとする論文もあるので、精神のありようと眼圧には何らかの関係があるのだろう。

僕の感想

緑内障気質は、昔から指摘があり、瞑想により眼圧を下げることは可能かもしれない。

・「日常生活で気を付けることはありますか?スマホとか見なければ緑内障進行しませんか?」とよくきかれる。そういった場合「マインドフルネスを心がけましょう」かな。

・②については、厳密な追加検証を期待する。

ロービジョンケアについて

日本眼科医会から「クイック・ロービジョンケアハンドブック」が発行されたので引用する。

●眼科医の一言は極めて重要
●良いムンテラのポイントは、病名はっきり、寄り添う
一言、前向きな表現
●情報提供が重要

要点は、視力予後不良な方に対して、①正確な情報提供 ②前向きな指針 ということを同時に行う必要性があるということ。

 

緑内障の末期であるとか、高度近視による黄斑分離症を起こしている方に対してどのような説明をするかは、常に苦慮する。正確な情報提供に重きを置きすぎると患者さんを失望させることがあり、一人の人間として心苦しい。一方で、根拠が薄い楽観論を陳述するのは、エビデンスに立脚すべき医師として忸怩たる思いもある。

患者さんの年齢、理解力、性格を勘案したうえで、①②の狭間の奈辺を得るかは、今のところAIにはできない作業であろう。開業医としてのraison d’etreなりもそこらあたりにあるやもしれない。

草枕の顰に倣えば、「知に働けば嘆かしむ、情に竿さば誤れる」といったところかしらむ。。とかくに、目医者はいきにくい。

第17回オキュラーサーフェス研究会をweb聴講しました。

特別講演は、内野美樹先生の『アイペインとドライアイの治療戦略』であった。

以下、要約を示す。

ドライアイの痛みには、末梢痛だけではなくて、神経痛+中枢痛が関与する。

神経痛+中枢痛に対する治療として

・内服薬:リリカ→サンバルタ→タリージェ

・星状神経節神経ブロック

・鍼灸治療

ストレス軽減療法:強みをうまく利用する。引きこもりを出すことができる先生がいる。Value of considering psychological strength in patients with eye pain.


僕の経験では、中枢性の要因が大きい患者さんに対して薬物治療は効かない。

今回の講義でいうところの「ストレス軽減療法」が奏功する。すなわち、「エクササイズして、規則正しい睡眠を取り、バランスが取れた食生活を送る」である。

一方、そういう患者さんに限って、つらい症状を一発で消去できる薬・サプリメントを探し求めている。曰く「体がだるいので運動はしたくない」「食生活は変えられない」「睡眠薬をやめるわけには行かない」…

それらを「チルチルミチルの青い鳥症候群」と、僕は呼んでいるのである。

ギガっこ デジたん!

日本眼科医会の啓発コンテンツです。

本会では、文部科学省によるGIGAスクール構想にあわせ、1人1台デジタル端末を利用する子どもたちのために、目の健康啓発マンガ 『ギガっこ デジたん!』のポスターとリーフレットを企画制作しました。

作画がいい。誰が書いてるんだろう。

↑のyutube動画の声優さんもいい声だ。内容は、もちろんPolitically and Medically Correct

 

しかし、「ギガっこデジたん!」って命名は、、どうなんだろう。。