前回お知らせした、新レンズの名称はブレスオーコレクトです。
発売元のseedが述べるメリットとデメリットは以下の通り。
- 酸素透過度(DK値)が高く安全性が高い。
- 日本人に多い平面的な角膜に適合したカーブを持っている。
- 素材が柔らかいので破損しにくい。
- オートレフ値以外に角膜トポを取り込むことができるのでフィッティンングしやすい。
短所
- 初期導入価格が高い、レンズ一枚当たりの価格も高い
- アライメンtカーブは決め打ちで変更ができない。
- 定額制がないために、「何枚でも無料交換」ができない。

前回お知らせした、新レンズの名称はブレスオーコレクトです。
発売元のseedが述べるメリットとデメリットは以下の通り。
短所
当院で扱っているオルソケラトロジーレンズは、アルファーコーポレーションのオルソKで、最初期から存在するだけあって、難症例などに対する対処方法が確立されており、安心感が高いレンズです。
ただし、処方可能なのは-6Dまで(場合によっては-7D前後まで可能)なのでそれ以上の高度近視については対処ができません。
以前はオ〇ートというブランド名で高度近視に対してもオルソケラトロジーを処方する眼科医がいて、オーソドックスな医師からは白眼視されていました。
東レのオルソケラトロジーレンズは以前は-4Dまでの対応でしたが、最近-8Dまで対応するようになり、しかも、「レンズやわらかいので破損しにくい。日本製の為、日本人の目に合う。」という触れ込みなので、当院でも取り扱いを開始する予定です。
正式に採用したら、当院HPでも告知します。
以下に、国内で承認されているオルソレンズの一覧を示します。
メーカー | レンズ名称 | 適正範囲 | 特徴 |
アルファ・コーポレーション | オルソK | 近視-1.00D~-6.00D BC40.00~46.25(乱視-1.00以下) | 日本で初めて認可を受けた。国内製造 |
東レ | ブレスオー | 近視-1.00~-8.00D BC39.00~47.00(乱視は球面の1/2以下、倒乱視は1/2以下かつ-0.75D以下) | レンズやわらかいので破損しにくい。日本製の為、(角膜の突出度が少ない)日本人の目に合う。 |
テクノピア | マイエメラルド | 近視-1.00~-4.00D BC38.00~48.00(乱視-1.00D以下 ) | 長年にわたる技術革新と世界各国での実績 |
原題は「A 3-year Randomized Clinical Trial of MiSight Lenses for Myopia Control」です。MiSightはクーパービジョンが発売しているDIMSレンズ(デフォーカス組み込みレンズ)の使い捨てディスポレンズです。日本では未認可です。
論文を以下に要約すると、
治験参加者は8歳から12歳の近視児童。
治験デザインはMiSightレンズ装用者53名、プロクリアー1Day(コントロール)装用者56名。二重盲検。
結果「3年後の結果で、-0.73D近視進行が抑制され、0.32mm眼軸長延長が抑制された。
近視治療の効果を見ると、0.01%アトロピン点眼には及ばないが、オルソケラトロジー程度の効果はあるようですね。オルソと違う点は日中普段使いできるという点かな。
個人輸入で試すことは可能なようですから、ご希望の方はお申し付けください。
「パキコロイド症候群」は、眼科のbuzzFeedである。
pchychoroid=pachy(厚い)+choroid(脈絡膜)から日本語では「脈絡膜が分厚い症候群」
以下、日本の眼科[1]から引用します。
中心窩脈絡膜厚が 200〜250 μm 以上で,Haller 層血管の拡張に加え,IA で
脈絡膜血管透過性亢進所見を認め,RPE の異常を伴い,眼底に drusen が少ないという特徴を有するものとされている。
しかしながら、
最も重要であるはずの,脈絡膜厚の増大所見についても,絶対的な数値基準が設けられていない[1]
PSD(Pachychoroid spectrum disorder) という疾患概念が Freund らによって提唱され,多くの研究者から賛同を得ている。何故ならば,後述の CSC,pachychoroid pigmentepitheliopathy (PPE),pachychoroid neovasculopathy (PNV)や PCV といった PSD の病型を,一連の変化に基づく同一スペクトラム上の疾患である可能性を示したからである。
従来から、陳旧性の中心性漿液性網脈絡膜症が、将来の黄斑変性疾患の足場になるということはいわれていたのを、OCT所見をもとに「スペクトラム」として定義しなおしたという感じかな。
いつも思うが、海外の研究者はこういった「概念」「フレームワーク」をバーンと打ち出すのが得意だ。日本人研究者や、臨床医はそれらを追っかけるのに必死で、身内で重箱の隅をつつくような定義ごっこをしている印象がある。
国民性の違いかな?違いなんやろうな。。
[1].日本の眼科 92:5 号(2021)
当院では、近視治療薬としては定番のミドリンMに加えて、ピレンゼピンと0.01%アトロピンを処方してきました。(ただし、ピレンゼピンは製造中止になったので現在は処方してないです)
ところが、最近では上記以外にも、新しい近視治療薬が検討されているようなので、以下、あたらしい眼科2020年5月号p.539 大野京子先生の論文から引用します。
【7-メチルキサンチン(7-methylxanthine)】
経口7-メチルキサンチンの近視進行と眼軸長に対する効果を観察したランダム化比較試験(n=77)である。近視の子供は両グループに分け,グループ1は2年間7-メチルキサンチン400mgを毎日1回服用し,グループ2は1年目がプラセボ,2年目から7-メチルキサンチンを服用した。
1年目の結果,7-メチルキサンチンを摂取した子供は眼軸延長率と近視度数の増加が大幅に低下した。2年目の7-メチルキサンチンの治療により,両グループともに1年目と比べて近視進行が抑制されたが,休薬の観察期間には,眼軸延長と近視度数の進行がまた早まった。
この物質は、キサンチン誘導体(カフェイン、テオフィリンなど)の一種で、チョコレートやコーヒーに含まれているようだ[1]
【ケトロラックトロメタミン(ketorolactromethamine)】
ケトロラックトロメタミンは非ステロイド性抗炎症薬の一種であり,アレルギー性結膜炎のかゆみを緩和できる。あるコホート研究では,アレルギー性結膜炎のある子供はない子供と比較し,近視の発症するリスクが高いことが示唆された。ケトロラクトロメタミンは近視ヒヨコの眼軸延長を減少し,近視の進行を抑制させる報告もあった。
この物質は、非ステロイド生消炎鎮痛剤(NSAID)の一種です。
[1].Trier K. Systemic 7-methdyxanthine in retarding axial eye growth and myopia progression: a 36-moth pilot study. J Ocul Biol Dis Inform 2008 Dec 1:85-93
以前、当院ではMCレンズ(カールツァイス製)を処方していたのだが、いつの間にか製造中止になってしまった。
あたらしい眼科2020年5月号p.531 長谷部聡先生によると
MyoVision(CarlZeiss Vision)として市販されるレンズは,平均30%の近視進行抑制効果を示した。しかしこの値は、近視の家族歴がある学童に限定した後付けのサブグループ分析から得られたものであった。
追試として国内では、家族歴のある学童に対象を限定して7大学共同でRCTが実施された。ところが期待に反して、屈折度、眼軸長いずれにおいても抑制効果はみられなかった。
「MCレンズはたんに同心円状に遠近度数を入れ込んだだけの老眼鏡レンズで効果がなかった」というのが真相のようです。
これにたいして、DIMSレンズ(デフォーカス組み込みレンズ)という新発想のレンズが紹介されている。
従来のRRGレンズやMSCLによる治療は周辺部網膜で後方へのデフォーカスを取り除くことを主眼としてきたが、3次元空間で生活している限り、方法論としての限界があった。これに対する逆転の発想が,「デフォーカス組み込みレンズ」である。
眼軸長の視覚制御の仕組みが、どのようにデフォーカスの極性〔フォーカスが網膜の前方にあるか後方にあるか)を判断しているか、調節微動、色収差、軸外非点収差など諸説あるが結論は得られていない。
しかし、複数の動物実験において、極性の異なる二つのフォーカスを同時に与えると、眼軸長の視覚制御が機能不全に陥る可能性が示されている。
この実験結果に基づき、defocus incorporated multiple segment(DIMS)眼鏡が考案された。
表面に微小なレンズがびっしり仕込まれていレンズで、以前のMCレンズとは異なる原理のようだ。白内障手術で用いるEDoFレンズに似ている印象。
次回は、実際にこのレンズの処方について述べます。
スマホによる急性内斜視を起こしている患者さんが増えてます。
当院で患者さんにお渡ししている説明用紙を示します。
【スマホ急性内斜視とは】
一方の視線が鼻側に寄る「内斜視」のうち、生後6ヵ月以降に突然発症するものを急性内斜視と呼びます。近年若者を中心に「急性内斜視」が増えています。内斜視は、眼球を内側に向ける「内直筋」と外側に向ける「外直筋」が関係しています。
近くを見る時は、内直筋が縮んで眼球を内に寄せる「寄り目」の状態で焦点を合わせます。
急性内斜視になると、内直筋が縮んだままになり、遠くを見ても寄り目が戻らなくなり、両目の視線が一致しなくなり、物が二重に見えるようになります。片目を隠すと 1 つに見えるが、物の遠近感や立体感がつかみにくくなります。
【症状】
・両眼で見た時に物が二重に見える(複視)
・寄り目になる。
【原因】
スマートフォン(スマホ)の使い過ぎです。10~20代に多く、スマホの連続使用時間が長い為と言われています。スマホはパソコンよりも目に近い位置で画面を見るため、長時間凝視すると内直筋が収縮したままになりやすいです。
【治療】
スマホの使用を控えて、近くを見るのをやめて、目を休ませます。それでも改善しない場合は、像を移動させることのできるプリズムレンズの眼鏡で複視を矯正します。どうしても治らない場合は、手術で内直筋の位置を変えることもあります。
【注意点】
日常生活の改善が必要です。スマホを見ないようにしましょう。どうしてもスマホを見るときは、画面を目から30cm以上離します。使用中も10分に1回は、3~4メートル離れたところを見て、長時間連続でスマホの画面を見ないようにしましょう。ベッドやソファで寝ながらスマホを見ていると、画面が目に近づきますので注意しましょう
スマホは、近視を進めるし、内斜視を誘発するしで、眼にとっての「ジャンクフード」
完全に接触しないことは不可能だろうが、「敬して遠ざけるべき」存在なことは間違いない。
マイノリティリポートみたいなが (・∀・)イイ!! かも..
近視研究会が提唱する近視予防の7原則を以下掲載する。
<追記>
坪田先生はさらに「アンチエイジング薬として有効なメトホルミンをマウスに投与したところ、近視抑制効果がみられた」「まだ2回成功しただけ」と記されている。正規の論文として日の目を見ることがあれば、ぜひこのコラムでも取り上げたいと思います。
「バイオレットライトを使ったメガネ型医療機器の製造・販売承認取得、眼鏡を研究中で2023年ごろには実用化を目指している[1]」とのことです。
坪田先生は、坪田ラボというベンチャー企業のCEOで、国公立大学教授とは一味も二味も違う展開をされておられます。
さらに、クロセチンというサプリメントも発売済みで、
坪田一男、栗原俊英、鳥居秀成と大阪大学大学院医学系研究科眼科学教室の西田幸二教授、高静花寄附講座准教授ら、ロート製薬株式会社らの研究グループが共同研究において、小学生69名に対し、クチナシ由来の色素成分「クロセチン」を投与するランダム化比較試験を施行し、クロセチンが小児の眼軸長伸長、屈折度数の近視化を有意に抑制することを確認しました。
ロートクリアビジョンジュニアEXがその製品バージョンのようです。
エビデンス的には、バイオレットライト>クロセチンという印象だな。
「唯一、誰もが認めるエビデンスは戸外活動を2時間以上すること」ということです。
坪田先生は、「屋外で活動する」→「バイオレットライトが目に入る」→「眼軸長伸長を抑制する」という機序を考えておられるようです。
バイオレットライトは下図のような光波長で、屋内のガラス窓のうちにいると浴びることができない。
動物実験ではバイオレットライトによる抑制効果は証明されているらしい。
僕なりに解釈すると、眼は本来外敵から身を守るために進化獲得した組織器官で、屋外で「敵に襲われる可能性がある」と脳が感じていることが、眼軸長維持に有効なのだろう。屋内で安全にスマホやタブレットを見ている生活を続ければ、脳は「敵に襲われる心配はなく、近くを見ることに専念すればよい」と感じて眼軸長の維持をやめるのだと思う。「近視は、子供の生活習慣病」と僕が主張するゆえんでもある。
したがって、単にバイオレットライトを浴び得ればいいという単純な構図でもないような気はするが、坪田先生はJINSと組んで商品化に取り組んでおられるらしい!
それについては、次回以降で御報告する。