「自分でできる人生が変わる緑内障の新常識」を読みました。

診察の結果「緑内障です」
 ↓
「点眼をしっかりして眼圧コントロールしましょう」となった場合、100%確率で

「目を疲れさせなければ大丈夫でしょうか?」
「スマホは見ないほうが良いでしょうか?」

と、質問がある。
当院では、緑内障の日常生活注意点.pdfを説明している。


今回、Nikkeiグッディで紹介されてた「自分でできる人生が変わる緑内障の新常識」を読んでみた。

著者は、平松類先生で、Youtubeでも発信されておられる。

この本から、エビデンスレベルA、Bを抜き出すと以下の通り。

  1. 目に良いといわれるルテインは緑内障にも良い。 A
  2. ビタミンA、Cは緑内障に良い。 A
  3. スクワットは眼圧を上げやすい。 A
  4. 運動習慣のある人のほうが、緑内障は進行しにくい。 A
  5. カシスは視野欠損の進行を抑え、緑内障の眼圧を下げる作用がある。 B
  6. マインドフルネスは眼圧を平均4mmHgほど下げる。 B
  7. ヨガの呼吸法は眼圧を下げる可能性がある。 B

一方、Nikkeiグッディのキャッチーな見出しは、

  1. 血糖値を上げやすい食品は避ける。 C
  2. メタボは緑内障にとって良くない。 C
  3. リラックスするために入浴と睡眠に工夫を。 D
  4. コンタクトレンズはあまりお勧めしない。 なし
  5. スマホやパソコンで目を酷使しないよう注意。 C

で、いずれもレベルC、Dか、レベル表示がない項目である。


●エビデンスのレベル分類

「自分でできる人生が変わる緑内障の新常識」では、

レベルA:複数のランダム化比較試験、またはメタアナリシスで実証されたデータ
レベルB:一つのランダム化比較試験、または非ランダム化比較研究で実証されたデータ
レベルC:レベルBより劣るが、一定のデータがあるもの
レベルD:参考にとどめておく。

一方、緑内障診療ガイドライン(第5版)では、

A(強):効果の推定値に強く確信がある
B(中):効果の推定値に中程度の確信がある
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
D(非常に弱い):効果の推定値がほとんど確信できない

 レベルCを「一定のデータがある」とみるか、「確信は限定的である」と読むかで、この本とNikkeiグッディ記事の印象はかなり異なる、と感じた次第。

オンライン資格確認

医療機関向けには、

患者さん向けには、

こ、怖い*゚Д゚。フラグが見える。絶対に喰ってはイカン感じだ。


ところが、Yahooニュース 及び オンライン資格確認説明会によると

厚労省は、2023年4月までの導入を義務付けるとのこと。間に合わなかった場合、直ちに罰則は与えないが、地方厚生局が丁寧に指導して導入を後押しするとのこと。

怖すぎる。。。

 ・
 ・
 ・

当院は、敢えてこの毒饅頭を戴くこととする。皿まで食す[1]こととする。

下賜いただくカードリーダは、パナソニック製に既に決めた。
次は、電子証明書発行申請である。


1:業者に頼まず、自前で実装する、という意。


2022/11/14追記

「皆もすなるマイポといふものを、私もしてみむとてするなり」
しかし!
「アルファベットを入力するべきなのに数字しか入力できない」「総務省のアプリとデジタル庁のアプリが二本立て」とか、、ないわ~。
丸投げ&縦割りを肌身に感じることができた点が、ポイントだとしか云えぬなり。

HUS(Heads Up Surgery)について

第24回兵庫県学科フォーラムでHeads Up Surgeryの講演を聴きました。
顕微鏡をのぞかずに、3Dディスプレイ+3D眼鏡で行う手術です。

AlconのNgenuityとZeissのARTEVO 800が有名処だけど、演者の県尼長谷川 麻里子先生はNgenuityを使ってました。

長所は、

・画面の明るさを上げ、低照度でも手術ができるため網膜光障害を低減できる。
・優れた拡大倍率により、詳細な手術画像が得られる。
・色相や彩度の調節により視認性を向上できる。
・画面分割により術前情報を共有できる。
・術者のエルゴノミクスを改善できる。
・教育的指導に有用

硝子体手術屋さんにはメリットが大きいと思う。

←顕微鏡像 →Ngenuityで処理後

画質改善は明らかだ。

一方、白内障手術では、白黒画像にするとCCCや皮質処理がやりやすくなる程度の益。

私の感想

・手術するのに3D眼鏡をかけるのヤだな。
・さりとて、眼鏡なしだと平面的だよな。
・白内障手術的にはウレシみ少ないかな?

  

次ステップの遠隔ロボット手術もみすえて、各社しのぎを削るの構図。

けど、ローカルでlatency70msは少しラグいんでは?
FPSのネット対戦だと苦しいping値だ。

老眼治療の新しい点眼薬

前週の慶応大学教授根岸一乃先生の講義後半は、老眼治療についてでした。

Vuityの二重盲検試験の結果は以下の通りで、当院のオレオレ検証と並行する。凡そ、3~4時間までが効き目と見受ける。

欧米では、老眼治療の点眼薬が治験進行中であり、検討されている。

Vuityについては当ブログで既報なので、他薬剤の関連リンクを貼ります。
MicroLine
CSF-1
PRX-100
UNR844
VP1-001

なお、この記事が、簡潔かつ詳細である。


学会会場でのQ&A

Q.5焦点のレンズ(訳注:Hanita社のIntensity)はどうか?
A.使用経験はないが摘出例はある。決定版というほどではないであろう。

Q.(水晶体弾性を増加させる)治験点眼薬はどういう機序か?
A.水晶体のリポイックアシッドによる水晶体クリスタリン蛋白の架橋を断つことによって、水晶体の弾力性を取り戻す。

Q.ピロカルピンを入れてると、かつてよく散瞳不良例が見られたがどうか?
A.治験薬は消炎剤を組み合わせて、散瞳不良を防いでいるようである。

Q.シナジーとパンオプティクスの使い分けは?
A.患者さんに選択肢を任せる。3焦点指名ならパンオプティクス、より近くが見える方が良い and/or 新しく出たレンズがよいならシナジー


2023/1/24追記

某製薬会社が老眼点眼に興味がある由で当院を訪問されました。
ノバルティスが開発断念したこともご存じで、かなり研究されている様子でした。
遠からず、Vuityの国産品が発売されるかもしれません。

PanOptix vs Synergy

2022年9月10日、第27回大阪眼科手術シンポジウムを聴講しました。講師は慶応大学教授根岸一乃先生。

国内承認されている3焦点レンズPanoptixとSynergy
どちらがよいのか!というビミョーな命題についてでした。

PanoOptixのMTF
SynergyのMTF

症例数は少ないが、コントラスト感度が良いのはSynergyである。これは臨床印象と一致しているとのことでした。ここまでは利益相反なしな話。


以下は、J&J社(旧AMO)の協賛論文からである。

あまり差はないが、焦点深度はSynergyが広いといってる。

これも、近見はSynergyのほうがやや良いと言ってる。


関東ではSynergyがPanOptixよりも優勢で、関西と異なると聞き及んだが、慶大教授が上記のように仰られるならば、むべなるべしとは思う。☞詳説

根岸教授は、老眼治療についても積極的で、なんと来年は老視学会が設立されるとのことだった。これについては、また次週触れます。

2022/9/19追記
学会会場でのQ&Aでは
Q.シナジーとパンオプティクスの使い分けは?
A.患者さんに選択肢を任せる。3焦点指名ならパンオプティクス、より近くが見える方が良い and/or 新しく出たレンズがよいならシナジー

法令線にヒアルロン酸を入れました。

以前、下眼瞼のたるみにヒアルロン酸をいれたのだけど、法令線にも入れました。

通常、法令線にはジュビダームウルトラを使うのだが、小皺タイプの法令線なのでレスチレンリドを使ったとのこと。

ジュビダームとレスチレンの違いは

銀座禅クリニックから引用

前回は、自分で自分に適用できるかな?とか書いたけど、無理っぽいです。やはり、餅屋にお願いするのが吉かな。。

「第19回兵庫県東部緑内障を考える会」を聴講しました。

●第一演者は近畿大学眼科教授松本長太先生でした。

これは良い!と思ったのは、「簡易に自分で緑内障チェックできるチャート」である。
上記チャートは、印刷⇒回転を自分でする必要があるが、クアトロチェッカーならディスプレイ上で完結し、さらに簡単。

眼科医会はACと協調して緑内障の啓蒙運動中だが、セルフチェック法として拡散したら?と感じた。

●第二演者は井上眼科医院特別顧問富田剛司先生でした。

緑内障OCTを見るうえで、GCCの上下差を見ることが大切である。

GCC(神経節細胞複合体層)の上下差注目とか、Temporal Raphe Signが前視野緑内障検出に有用、というお題は最近よく聞くトピックである。

緑内障点眼薬の比較

上から順に、キサラタン、トラバタン、タプロス、ルミガン、エイベリス。
ルミガンが一番下がるのは経験的に知ってたが、統計的にもそうなんだなっと。が、PAP(Prostaglandin-associated periorbitopathy)=色素沈着、睫毛異常、DEUS=眼球陥凹も一番キツいんですょね~。
エイベリスは眼圧降下効果はやや弱い?が、「DEUS、PAPは起きにくいんです」が売り文句。
すなわち、作用と副作用は表裏であり、「副作用が一切でないが、効き目は素晴らしい」は成立しない、ってこと。

老眼対策の点眼薬(副作用の対策)

1%サンピロを投与している患者さんで充血、頭痛を訴える人がいる。
やや、女性の方に多い印象である。

自己実験してみた。

←は点眼なし、→は1%サンピロ点眼5分後

コリン作動薬であるから、充血はするだろうし、血中に入れば頭痛も起こりうるだろう。しかし、かつて緑内障治療薬として処方していた頃には聞かなかったと記憶する。

緑内障治療している場合と、健康体に処方している場合では、副作用に対する感受度が異なるのかもしれない。


対策は、

  • 涙点を1分程度は抑える。
  • 濃度を0.5%に下げて、点眼回数は増やす。

ただ、点眼を続けていくうちに馴れてくるようです。

低加入度数型の近視抑制コンタクトレンズ

以前、EDoF型の近視抑制レンズについてご紹介した。
当院でもオルソ困難・卒業の際、シード1dayPureを重用している。

今回、そのシードのライバル社?から「低加入度数コンタクトレンズも使えます」という論文[1]-[3]を教えてもらった。

要旨は以下の通り。

+0.50D を加入した低加入度数CL と単焦点CL で近視抑制の比較を行った。

年齢 10~16 歳、近視度数-0.75~-3.50D、乱視度数-1.00D 以下の小児 24 名を2 群に分け、両レンズを 1 日使い捨てで 12 ヶ月間使用した。

装用開始 1 ヶ月後以降で 11 ヶ月間の眼軸長変化量は低加入度CL で 0.09 mm、単焦点CL で 0.17 mm であった。

文中の低加入度CLの実体は、2WEEKメニコンデュオ で、本来は「モバイルライフをサポート」である。
この論文と比べて、症例が少ない & 中立的なエビデンスいるよな、という印象。


ネット渉猟すると、メニコンは欧州でMenicon Bloomを展開している。また、Menicon Bloom Dayなるコンタクトレンズを彼の地で販売しており、

Menicon Bloom Day は、Visioneering Technologies, Inc社が、近視矯正及び近視進行抑制用としてCEマーク認証を取得した、1日使い捨てソフトコンタクトレンズ「NaturalVue®(ナチュラルビュー)マルチフォーカルコンタクトレンズ」のOEM商品であり、この度、当社が欧州において販売する契約を締結いたしました。

然し、

日本国内においては、近視進行抑制に関する規制や承認基準が整備されておりません。本製品の承認も取得しておりません。


かくして、本邦では

Seed=ブレスオーコレクト+シード1dayPure
   VS
Menicon=オルソK+2WEEKメニコン デュオ
という構図と相なる。。


1.ソフトコンタクトレンズによる近視進行抑制とその光学的機序
2.Effect of low-addition soft contact lenses with decentered optical design on myopia progression in children: a pilot study
3.光学中心偏心デザインの低加入度ソフトコンタクトレンズの小児近視進行への影響:パイロット研究. :2の抄訳。

「SPK(点状表層角膜炎)の診方、考え方、治し方@西明石」を聴講しました。

2022/8/6、西明石ホテルキャッスルプラザで、横井 則彦先生(京都府立医科大学眼科学教室 病院教授)の講演でした。

「臨床に活きるわかりみTips」を、ご披歴いただいたので、以下雑駁にご紹介する。

定番のドライアイの治療薬

  • BUT短縮型はジクアス。痛覚レセプターのアゴニストでしみるが、8割がたは1か月で慣れる。最初に「しみる」と言っておき、ステロイドを併用する。
  • 糸状角膜炎型はムコスタ。ムコスタは眼瞼と角膜の摩擦を軽減する。
  • ヒアルロン酸は水分を吸うので、濃度が濃いと逆に働くこともある。京府病院ではあえて薄めて処方することもある。
  • ちなみに、欧米ではムコスタ、ジクアスが認可されていない。

その他の治療薬

  • フラジオマイシンを含む薬剤ベルベゾロンF、リンデロンAは薬剤性角膜障害、皮膚のアレルギー障害を起こす。そのため、一切使わない。リンベタを使え!
  • BAKの透過亢進、知覚神経の障害が起こると角膜基底細胞の分裂障害が起こり、上皮細胞の被覆をおぎなうため上皮細胞が動き出す。従って、上皮細胞の移動サインは危険サインである。
  • タリムスは痛いし熱いことがる。痛がる人には効かない。その場合、やや弱いがパピロックミニを処方すると痛くないはず。

マイボーム腺炎角膜上皮症

  • 角膜フリクテンの形をとるものと角膜上皮の全般障害を来るものがある。
  • マクロライド少量長期療法を行う。これはクラリスロマイシン200mg/日を最長3か月まで使う。にきび治療に使う薬剤であり、40歳以下ならP.Acnes由来なので100%治る。40歳以上ではP.Staphyloに変わるためか100%とはいかなくなる。
  • クラリスロマイシンにはステロイドと同様の抗炎症作用がある。しかも、ステロイドと違ってリバウンドしない。→質問「アゾマイシン点眼は使わないのでしょうか?」 答え「2週以後の指示が面倒なので使わない。」

角膜全面のSPK

  • フルオが動けば点眼で治る。
  • フルオが動かなければ涙点プラグのみ。

緑内障薬剤性類天疱瘡

  • 緑内障薬剤性類天疱瘡をおこすすと瞼球癒着(円蓋部をみると結膜が引きつれている)が起こる。点眼中止しステロイド使う。

コンタクトレンズの酸欠

  • 全面障害が起こっている場合には、ワンデーCL+BAKフリーのジクアス

抗がん剤による薬剤性上皮障害

  • 抗がん剤TS-1:テガフール、ギメラシル オテラリルカリウム
  • カドサイラ
  • 担当医に連絡してほかの薬に変更を依頼する。

講義を聴いて私の感想

  • 基礎から説き起こすご高演が多い中、「いきなり、ギターソロ」なお役立ち講義だった。