患者さん説明用に
- 保険医療か選定医療か?
- ハロー・グレアが多いか少ないか?
- 見える範囲は?
という3つの観点から、選べる選択表を作成しました。
↓
眼内レンズ選択表
白内障手術
患者さん説明用のシミュレータを収集しました。
☞ 2焦点レンズがAcitive Focus、3焦点自然視覚レンズがPanoptix、焦点深度拡張型自然視覚レンズがVivity
☞ 左右分割表示されてるので、わかりよい。
☞ Alconクラレオンレンズの見え方の違いを表示。
☞ Eyehance、Synphony、Synergyのシミュレータ
☞ 参天製薬のサイト。Youtube上でも閲覧できる。レンズ製品名は不詳。
☞ 有料サイト(3千円/月)だが、全種網羅してる。
・低加入度数分節型眼内レンズ=LentisComfort
・高次非球面眼内レンズ=Eyehance
・焦点深度拡張型眼内レンズ=Synergy
・3焦点眼内レンズ=Panoptix
・連続焦点型眼内レンズ=Vivity
当ブログの白内障多焦点レンズの種類 も↑に準拠。
VRゴーグルで疑似体験とかすぐ思いつくんだが、寡聞にしてきかない。
案外難しいのかな?
住友病院の御手洗先生のご講演 @ 大阪Ophthalmic Conference.
「多焦点眼内レンズ挿入→黄斑前膜発生→膜除去手術」で、視機能はどうなるか?という論文のレビューでした。
タイトル見たときは「軽度ならOK」みたいな話かと思ったが、「軽度でもダメっぽい!」という至極全うな結論でした。
VivityとPanOptixは棲み分けをする。
Vivity | Panoptix | |
見える範囲の希望 | 中間距離まで | 近方まで |
ハログレの忌避度 | ハログレを嫌う人が対象 | ある程度許容できる人が対象 |
神経質かどうか | 神経質な人でも可 | 神経質な人は不可 |
眼疾患の有無 | 許容度が高い | 眼疾患がある場合は不可 |
●ActiveFocusは既に廃盤であり、Vivityがその上位アップグレードという感じ。
●術後の視力測定時にはオートレフ値ではなく、自覚屈折度を優先する。これは、近視に傾きやすいため。
cf.瞳孔径が小さいと近視化しやすい。
●面白いと感じたのは単焦点よりもBlurred visionが改善するということ。(Blurred Visionは屈折ずれにより生じると説明されていた)
ここら辺にも書いたように、「Farでの焦点深度が深いためか、遠方での度数ずれ許容度が高い」ためだろう。
2023/7/2追記
Alcon Vision Educator で、単焦点、Vivity、Panoptixのsimulation像を見ることができる。よくできており、患者さんの説明用に重宝している。
Vivity動画で公平な視点と感じ入ったのが、limitations with the Vivity IOLとEDOF Lens – Alcon Vivity の2品です。
作成者はProfessor Uday Devgan MD, renowned Los Angeles cataract surgeon, teaches the Best Techniques for Cataract Surgery という属性の眼科医。
Vivityは2年前から使い込んでる由で、かなり実践的なこと言ってます。
(口語を意訳しました)
Vivityの売りは焦点深度を深めることだが、コストを伴う。そのコストとはコントラスト感度が低下することだ。dysphotopsiaも思ったよりある。
Alconのパンフにも「夜間コントラスト感度が低下する」ことを周知せよと記載されている。
☞「頂上をならし平坦化することにより、見える範囲を広げる」と「コントラスト感度の低下」はトレードオフの関係にある。
患者の瞳孔径が2.5mmなら、Vivityの中心光学域(2.2mm)が瞳孔領の80%以上を占めてしまう。すると術後正視を狙っても近視気味となる。
小瞳孔でも挿入可能だが、近視になりやすいので、+0.5~+0.75D狙いで正視に近づける。
一眼目の結果が近視気味なら、二眼目は正視に近づける調整を行うべし。
☞ X-wave technologyの原理からすれば平仄がいく。瞳孔サイズが重要というのは以前紹介した論文でも強調されていた点。
既に夜間視力に障害がある場合は、良い適応である。
☞「夜間コントラスト感度が低下する」という欠点が露呈しないということ。
「角膜清明で表面平滑で黄斑機能も完璧」がよい。
3焦点レンズが挿れられない場合でもVivityなら可といわれているが、私としてはやや懐疑的である。
☞コントラストを低下させるレンズを、すでに感度低下している人に入れるのはよくない。
この先生は、動画の最後で
多くの眼科医に白内障手術を行ってきたが、90%以上は単焦点レンズを選び、多くの場合やや近視気味に合わせる。私自身もそうするだろう。
眼科医としては最良の見え方こそが大事であり、眼鏡をかけることは大したことではない。
日本の紹介動画では、こうはいかんだろう。
冒頭で「公平な視点」と述べた所以。
2023/5/19追記
↑に関し「周りの60歳以上眼科医も、ご自身にPanOptixをどんどんいれてます!`Д´」と関係者、語りき。
X-wave technologyと銘打つのは、革新的でヒ・ミ・ ツ な技術というニュアンスかしらん?
奈辺をXと謳うのか、調べました。
この同心円状構造等が「先行する波面と遅延する波面」を作り出すらしい。
アイハンスや旧Miniwellでは不足する加入度数を、回折格子なしで付加を以て「X-wave technology」と称すのであろう。 cf.(別記)
回折格子がないので、ハログレが皆無ではないが少ない。
☞続きます。
(別記)
Optical Principles of Extended Depth of Focus IOLs (alconscience.com) から追加。
The emergent wavefront mimics the anterior lens surface shape after light passes through the surface transition elements. The wavefront is delayed when it passes through the central part of the surface transition elements and advanced when passing outside of the central part. The delayed part of the wavefront travels slower and focuses closer to form an image towards the near end of the extension and the advanced part of the wavefront travels faster and focuses further to form an image at the far end of the extension. As the wavefront propagates, it collapses down resulting in the wavefront being stretched forward and backward thereby creating a continuous extended focal range.
●wavefrontが先行するとか遅延するとかの表現は、extended focal rangeにおいてレンズ外側がfarに、同心円がnearに合うという意味っぽい。
真ん中の同心円構造については、
●波形を矩形に成型する働きがある様子。
以上二つが、X-wave technologyのヒ・ミ・ ツ
2023/5/19追記
「wavefrontが先行するとか遅延するとか」は、屈折度が違う物質を通るために実際に光の速度が遅くなるとのことでした。担当さん談。
1μ盛り上がっている部分が、わずかに光速度を遅くするということらしい。担当さん談2。
既報してたViviyが、漸く6月から発売される。
渉猟するに、先行施設とか営業動画やら散見するが、日本語論文は見当たらん。
お上から、箝口令がしかれてるんだろう。
で、英ペーパーを読みました。
IFが高いのは、Extended depth-of-focus (EDOF) AcrySof® IQ Vivity® intraocular lens implant: a real-life experience
Saying..
LogMAR表記分かりにくいので、視力表記すると、
LogMAR | 小数視力 | |
矯正視力 | 0 | 1 |
80cm裸眼視力 | 0.05 | 0.89 |
60cm裸眼視力 | 0.06 | 0.87 |
30cm裸眼視力 | 0.15 | 0.71 |
以前のEyhanceデフォーカスカーブに重ねると、
優秀な成績ですね!
ハロー・グレア、スターバーストが皆無とはいかない。
むしろ、そこそこあるようだ。
We found a positive correlation
between the pupil sizes and the Quality of Vision score (Tau-
Kendall coefficient 0.42; p < 0.01).
という点は、他の回折型レンズやIntensityと似る。真ん中の盛り上がり部分が影響を及ぼしているのかしらん。
要は、若くて瞳孔異常が少ない方が宜し、ということ。
☞続きます。
J&J主催のWeb Seminarを視聴しました。
で、言わんとするところは、
アイハンスは、従来の単焦点レンズを超える単焦点IOLである。
緑内障があっても使える。
供給不安が解消したので、「ターゲットを拡張したい、しかし、手持ちのsymphonyやsynergyとの競合は避けたい」ということかな。
DIB00Vがアイハンス。ちょっと、露骨かな~。
僕が個人的に感じるのは上記のように、Farでの焦点深度が深いためか、遠方での度数ずれ許容度が高いような印象を受ける。デフォーカス曲線が-0.5D前後までなだらかなことが好結果をもたらしてるのだろう。
眼内レンズの度数変更を希望する場合に行う手術。
という手順で、カプセルと角膜内皮に留意すれば、簡単な手技である。
つかう鋏は
参考動画
術後屈折度にコンシャスな患者さんが増えており、変更希望があれば間を置かず実施するのが良ろし。
挿入レンズのターゲットずれを極小化する
そのためには、リアルタイムでズレ検出し、フィードバックをかける必要がある。
既に、当院では、術後屈折をデーターベース化&グラフ化しているが、
①採用レンズが多岐にわたる。
②全患者さんのデータをとってくる。
ため、集計に長時間かかる。
そこで、ISAMデータベース(MDB)はやめてSqlServerに移植する予定。
本年も、よろしくお願いします。ᕱ⑅ᕱ
☞当院の決定式はBarrett Ⅱ。現在のところ、、
・アイハンス→ほぼねらい目通り。
・クラリオン→0.5~0.8Dくらい近視化。
・NIDEK→ほぼねらい目通り。
NIDEKレンズはやや入れにくいような気がするが意外と優秀。
圧倒的に入れやすいのがクラリオン。