前回のジュビダーム講習で、岩城佳津美先生著「実践フィラー注入テクニック」を勧められたので読みました。
講習で実習したMDコードの各部位の動画は以下の通り。
↑ただ、講習内容とは、やや異なるような気もする
MDコード以外に、ガルデルマ社のTrueLiftメソッドが紹介されていました。
いきなり身内で治験するのもどうかと思うので、まずは顔面シミュレータで練習することにします。
眼周囲の窪み・クマは形成外科とか美容外科じゃなくって眼科医自身がやるべき、と思って受講しました。
顔面の血管走行、MDコードに基づく注入手技を、マネキンを使った講義形式で2時間半ほど。
「SNS上で詳細を提示してはいけない」につき、受講感想のみを書きます。
「まず身内でやってみてください!」ということであったので、華岡青洲の妻をお願いしようかしらん。
昨年は、人力作業をPCに移行させるべく藻掻いたため「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は至らず。。
本年もよろしく、お願いいたします。
参天製薬の記念講演だったのですが「ジクアスとムコスタの使い分け」が聴けるというので参加。
前半は以前にもこのブログで紹介した京都府立医大横井教授と埼玉医大石川聖先生のお話でした。
BUP分類は6種類だったが「横井先生が追加し現在8種類となっており、これらはドライアイ専門家でも鑑別できない」
ん~?いうことで、簡便にBUP判別するBUT法を紹介されました。
BUT | 0秒 | 0~3秒 | 3秒~ |
BUP | Spot Break, Area Break | Line Break, Dimple Break | Rnadom Break |
上記を踏まえて、前回のBUP分類をリライトすると
BUT | 分類 | Break Up パターン(BUP) | 原因 | 異常層 | 推奨治療 |
0秒 | ![]() | Area Break | 涙液減少(重症) | 液層 | 涙点プラグ、ジクアス |
![]() | Spot Break | 水濡れ低下型=親水性低下型 | 上皮 | ジクアス、ムコスタ | |
0~3秒 | ![]() | Line Break | 涙液減少(軽症) | 液層 | ヒアレイン、ジクアス |
![]() | Dimple Break | 水濡れ低下型=親水性低下型 | 上皮 | ジクアス、ムコスタ | |
3秒~ | ![]() | Random Break | 蒸発亢進型 | 油層 | ヒアレイン、ジクアス |
「ジクアスとムコスタの使い分け」は、うぐいす眼科の細谷友雅先生の担当。
●ムコスタをつかうのはfrictionが主体の疾患。
結膜弛緩症
上輪部角膜結膜炎
糸状角膜炎
lid wiper epitheliopathy
●ジクアスLXの特徴
●選択基準
ドライアイ点眼薬の新薬は高い。
点眼薬コストを列挙する。
点眼薬 | 先発品薬価 | 後発品薬価 | 先発品の3割負担 | 後発品の3割負担 |
0.1%ヒアレイン | 272.4 | 104.6 | 81.72 | 31.38 |
0.1%フルメトロン | 173 | 89.5 | 51.9 | 26.85 |
ジクアス | 529.7 | 187 | 158.91 | 56.1 |
ジクアスLX | 1060 | なし | 318 | n/a |
ムコスタ | 3046.4 | 460.5 | 913.92 | 138.15 |
点眼薬組み合わせ | 先発品薬価 | 後発品薬価 | 先発品の3割負担 | 後発品の3割負担 |
0.1%ヒアレイン+0.1%フルメトロン | 445.4 | 194.1 | 133.62 | 58.23 |
0.1%ヒアレイン+ジクアス | 802.1 | 291.6 | 240.63 | 87.48 |
0.1%ヒアレイン+ジクアスLX | 1332.4 | 399.72 | ||
0.1%ヒアレイン+ムコスタ | 3318.8 | 565.1 | 995.64 | 169.53 |
ジクアス+ムコスタ | 3576.1 | 647.5 | 1072.83 | 194.25 |
ジクアスLX+ムコスタ | 4106.4 | 1231.92 |
ジクアスLXとムコスタ先発品が、とみに高い。
理由→ジクアスLXは新発品で後発品が存在しない。ムコスタ先発品は使い切りタイプなので高くつく。
前回のべたTFOT(Tear Film Oriented Therapy)が治療根拠なれば、ジクアスLX最強説だが、「ジクアスLX(1060円) ÷ 0.1%ヒアレイン+0.1%フルメトロン(58.26円) ≒ 20倍」 ほどの御利益があるかといわれると、正直ビミョーな気もする。
因って、製薬各社は新発点眼薬を勧めてはくるが、開業医としては肯んじない部分がある。
この辺り、御高名先生の御講演では考慮されてないですよねー。
前回、「涙液層破壊パターンをAI判定し治療提示してほしい」と書きました。
早急には無理っぽいので、人力判定による治療選択について調査しました。
上図のどの層が障害されているのかをBreak Up パターン(BUP)から判定し、適切な治療選択を行う必要がある。
そこで「ドライアイ診療の新時代 (MB OCULISTA(オクリスタ) (2023年11月号(No.128)」に準拠し、即戦仕様のまとめ表を作成しました。
●BUP分類
分類 | Break Up パターン(BUP) | 原因 | 異常層 | 推奨治療 |
Line Break | ![]() | 涙液減少(軽症) | 液層 | ヒアレイン、ジクアス |
Area Break | ![]() | 涙液減少(重症) | 液層 | 涙点プラグ、ジクアス |
Spot Break | ![]() | 水濡れ低下型=親水性低下型 | 上皮 | ジクアス、ムコスタ |
Dimple Break | ![]() | 水濡れ低下型=親水性低下型 | 上皮 | ジクアス、ムコスタ |
Rapid Expansion | ![]() | 水濡れ低下型=親水性低下型 | 上皮 | ジクアス、ムコスタ |
Random Break | ![]() | 蒸発亢進型 | 油層 | ヒアレイン、ジクアス |
ドライアイには炎症性疾患としての側面があり、フルメトロンを併用することが多い。
するとヒアレイン+フルメトロンの処方になって、ジクアスやムコスタを入れる余地がなくなってしまう。
緑内障点眼薬のように、ヒアレイン+ジクアス+ムコスタの合剤を作ってくれるとありがたいんですがね~。
参天製薬が開発したティアミルというドライアイ測定装置を数週間使用させていただきました。
スタッフがiPhoneでフルオ染色の角膜映像を取り込む→クラウドにアップロード→診察室のiPadにダウンロードし患者さんに説明。
TFOD(Tear Film Oriented Diagnosis)、TFOT(Tear Film Oriented Therapy)の重要性を再認識させてくれた点が、最大のポイントかも。
従来より手術顕微鏡と云えばZeiss一択で、当院でも長きにわたって同社製OPMI MDOを使用してきました。
OPMI MODは名機で、あえて最新機種を使わず頑固にこの機種を使い続けるサージャンも多いときく。
当院のOPMI MODも相変わらず視界は良好なんだが、いかんせんXY軸の動きが鈍くなってきたので、A社、T社、Z社のデモ機を比較してLeica顕微鏡を選定しました。
以下、ライカ社と他社レンズの比較
ZeissとLeicaの見え具合が図抜けていることは間違いない。
Leica顕微鏡は、加えて術者の願望をかなり上手にくみ取っていることがわかる。一方のZeiss社はやや名声に胡坐をかいてる感あり。
私は「周到な準備+最高の装備+不断の研鑽」こそが、結果を産むと信じでいる。
当院ではLeica顕微鏡で引き続き、バリバリ手術続行していく所存ですので、よろしくお願い申し上げます。
日経新聞に目薬で近視の進行抑制という記事が掲載されました。
アトロピンやクロセチンとは異なる機序の新薬を、坪田先生とロート製薬が共同研究しているという内容。
ロート製薬に問い合わせ、下記のScleral PERK and ATF6 as targets of myopic axial elongation of mouse eyesを教えていただきました。
マウス実験で
endoplasmic reticulum(ER) stress(※)↑→ PERK and ATF6系の活性↑→眼軸長↑
⇩
4-phenylbutyric acid (4-PBA)投与→endoplasmic reticulum(ER) stress↓→眼軸長↓
⇩
4-phenylbutyric acid (4-PBA)は、近視治療に有望である。
と、いうのが2022/10発表の論文骨子である。
この度、国内第I相臨床試験(以下、「本試験」)に向けての準備が整いましたので、本試験を開始いたします。
と、いうのが2023/11発表の記事である。
坪田先生はベンチャー経営されているだけあって、動きが速いなと感心する。
ただ、violet lightといい、意外と実用化に時間かかる感じでありましょうか。
(※)小胞体の中に、折り畳み不全のタンパク質が蓄積したときに認められる状態のことをendoplasmic reticulum(ER) stressといい、4-phenylbutyric acid (4-PBA)は、この折り畳み不全タンパク質が正しく折りたたむのを手助けするchaperone(介添え人)として働くらしい
この研究によると、
高度近視のオッズ比、高いな。
近視児の両親に「タバコ吸ってませんね?」と確認せねば、、である。