実践フィラー注入テクニックを読みました。

前回のジュビダーム講習で、岩城佳津美先生著「実践フィラー注入テクニック」を勧められたので読みました。


講習で実習したMDコードの各部位の動画は以下の通り。

↑ただ、講習内容とは、やや異なるような気もする
MDコード以外に、ガルデルマ社のTrueLiftメソッドが紹介されていました。


いきなり身内で治験するのもどうかと思うので、まずは顔面シミュレータで練習することにします。

ジュビダームの実践講習を受けました。

眼周囲の窪み・クマは形成外科とか美容外科じゃなくって眼科医自身がやるべき、と思って受講しました。
顔面の血管走行、MDコードに基づく注入手技を、マネキンを使った講義形式で2時間半ほど。

「SNS上で詳細を提示してはいけない」につき、受講感想のみを書きます。


  1. 『眼科手術では「はっきりみえる環境下」で手技操作を行う』が、基本中の基本だが、ジュビダーム注入はblindの操作が多い点、難しい。
  2. 指導者側、受講者側ともに前向きに知識を教授+吸収しようという熱気が感じられた。
  3. MDコードを批判する向きもあるようだが、このコード体系に基づいた治療戦略、指導方法はよく練られていると感じられた。

「まず身内でやってみてください!」ということであったので、華岡青洲の妻をお願いしようかしらん。

2024年の新年ご挨拶

2023年目標の振り返り

  • 2023年の目標(説明編)→「express ムンテラとexpress会計」は実現できた。
  • 2023年の目標(手術編)→「データベースをSqlServerに移行してターゲーット屈折度の違いを短時間で計算できるようにする」は実現。
  • 2023年の目標(近視治療編)→「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は未達。

昨年は、人力作業をPCに移行させるべく藻掻いたため「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は至らず。。

2024年目標

  • 「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は繰り延べ。
  • 説明動画を、できるだけリアルな形で作成し、できれば個々の患者さんのデータを取り込んで提示。
  • 眼周囲の美容的手段を習得する。

本年もよろしく、お願いいたします。



ジクアスLX3.0%発売記念を聴講しました。

参天製薬の記念講演だったのですが「ジクアスとムコスタの使い分け」が聴けるというので参加。


前半は以前にもこのブログで紹介した京都府立医大横井教授と埼玉医大石川聖先生のお話でした。

BUP分類は6種類だったが「横井先生が追加し現在8種類となっており、これらはドライアイ専門家でも鑑別できない」
ん~?いうことで、簡便にBUP判別するBUT法を紹介されました。

BUT0秒0~3秒3秒~
BUPSpot Break, Area BreakLine Break, Dimple BreakRnadom Break
BUT vs BUP

上記を踏まえて、前回のBUP分類をリライトすると

BUT分類Break Up パターン(BUP)原因異常層推奨治療
0秒Area Break涙液減少(重症)液層涙点プラグ、ジクアス
Spot Break水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
0~3秒Line Break涙液減少(軽症)液層ヒアレイン、ジクアス
Dimple Break水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
3秒~Random Break蒸発亢進型油層ヒアレイン、ジクアス
BUTからBUPに変換する

「ジクアスとムコスタの使い分け」は、うぐいす眼科の細谷友雅先生の担当。

●ムコスタをつかうのはfrictionが主体の疾患。

結膜弛緩症
上輪部角膜結膜炎
糸状角膜炎
lid wiper epitheliopathy

●ジクアスLXの特徴

  • 「べたつきやすい」のであらかじめ伝えておく。
  • 「ジクアス」ほどしみない。
  • 目ヤニが出やすい。
  • 減りが早い。

●選択基準

  • 「カラカラアイ」にはジクアス
  • 「ゴロゴロアイ」にはムコスタ

ドライアイの点眼治療コスト

ドライアイ点眼薬の新薬は高い。
点眼薬コストを列挙する。

単品の場合

点眼薬先発品薬価後発品薬価先発品の3割負担後発品の3割負担
0.1%ヒアレイン272.4104.681.7231.38
0.1%フルメトロン17389.551.926.85
ジクアス529.7187158.9156.1
ジクアスLX1060なし318n/a
ムコスタ3046.4460.5913.92138.15
単位は円

2剤組み合わせの場合

点眼薬組み合わせ先発品薬価後発品薬価先発品の3割負担後発品の3割負担
0.1%ヒアレイン+0.1%フルメトロン445.4194.1133.6258.23
0.1%ヒアレイン+ジクアス802.1291.6240.6387.48
0.1%ヒアレイン+ジクアスLX1332.4399.72
0.1%ヒアレイン+ムコスタ3318.8565.1995.64169.53
ジクアス+ムコスタ3576.1647.51072.83194.25
ジクアスLX+ムコスタ4106.41231.92
単位は円

ジクアスLXとムコスタ先発品が、とみに高い。
理由→ジクアスLXは新発品で後発品が存在しない。ムコスタ先発品は使い切りタイプなので高くつく。


前回のべたTFOT(Tear Film Oriented Therapy)が治療根拠なれば、ジクアスLX最強説だが、「ジクアスLX(1060円) ÷ 0.1%ヒアレイン+0.1%フルメトロン(58.26円) ≒ 20倍」 ほどの御利益があるかといわれると、正直ビミョーな気もする。

因って、製薬各社は新発点眼薬を勧めてはくるが、開業医としては肯んじない部分がある。
この辺り、御高名先生の御講演では考慮されてないですよねー。

ドライアイのTFOT(Tear Film Oriented Therapy)

前回、「涙液層破壊パターンをAI判定し治療提示してほしい」と書きました
早急には無理っぽいので、人力判定による治療選択について調査しました。

上図のどの層が障害されているのかをBreak Up パターン(BUP)から判定し、適切な治療選択を行う必要がある。
そこで「ドライアイ診療の新時代 (MB OCULISTA(オクリスタ) (2023年11月号(No.128)」に準拠し、即戦仕様のまとめ表を作成しました。

●BUP分類

分類Break Up パターン(BUP)原因異常層推奨治療
Line Break涙液減少(軽症)液層ヒアレイン、ジクアス
Area Break涙液減少(重症)液層涙点プラグ、ジクアス
Spot Break水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
Dimple Break水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
Rapid Expansion水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
Random Break
蒸発亢進型油層ヒアレイン、ジクアス
BUPパターンは京都府立医大のHPから引用

ドライアイには炎症性疾患としての側面があり、フルメトロンを併用することが多い。
するとヒアレイン+フルメトロンの処方になって、ジクアスやムコスタを入れる余地がなくなってしまう。

緑内障点眼薬のように、ヒアレイン+ジクアス+ムコスタの合剤を作ってくれるとありがたいんですがね~。

参天ティアミルの使用経験

参天製薬が開発したティアミルというドライアイ測定装置を数週間使用させていただきました。
 

仕組み

スタッフがiPhoneでフルオ染色の角膜映像を取り込む→クラウドにアップロード→診察室のiPadにダウンロードし患者さんに説明。

大いに評価できる点

  • 綿糸法、シルマーテストなどの静的データと異なり、動画を患者さんに提示することができ説得力が増す。
  • データが積み重なっていけば、治療効果を実感しやすい。

今一歩と感じた点

  • 撮影結果はドクターが手動判定する。「AI判定して、推奨治療を提案する」では??
  • サブスクリクション制である。

TFOD(Tear Film Oriented Diagnosis)、TFOT(Tear Film Oriented Therapy)の重要性を再認識させてくれた点が、最大のポイントかも。

ライカの手術顕微鏡を導入しました。

従来より手術顕微鏡と云えばZeiss一択で、当院でも長きにわたって同社製OPMI MDOを使用してきました。
OPMI MODは名機で、あえて最新機種を使わず頑固にこの機種を使い続けるサージャンも多いときく。

当院のOPMI MODも相変わらず視界は良好なんだが、いかんせんXY軸の動きが鈍くなってきたので、A社、T社、Z社のデモ機を比較してLeica顕微鏡を選定しました。


以下、ライカ社と他社レンズの比較


ZeissとLeicaの見え具合が図抜けていることは間違いない。
Leica顕微鏡は、加えて術者の願望をかなり上手にくみ取っていることがわかる。一方のZeiss社はやや名声に胡坐をかいてる感あり。

私は「周到な準備+最高の装備+不断の研鑽」こそが、結果を産むと信じでいる。
当院ではLeica顕微鏡で引き続き、バリバリ手術続行していく所存ですので、よろしくお願い申し上げます。

新しい近視治療点眼薬(慶応大学とロート製薬の共同研究)

日経新聞に目薬で近視の進行抑制という記事が掲載されました。
アトロピンクロセチンとは異なる機序の新薬を、坪田先生とロート製薬が共同研究しているという内容。

ロート製薬に問い合わせ、下記のScleral PERK and ATF6 as targets of myopic axial elongation of mouse eyesを教えていただきました。


マウス実験で

endoplasmic reticulum(ER) stress(※)↑→ PERK and ATF6系の活性↑→眼軸長↑
 ⇩
4-phenylbutyric acid (4-PBA)投与→endoplasmic reticulum(ER) stress↓→眼軸長↓
 ⇩
4-phenylbutyric acid (4-PBA)は、近視治療に有望である。

と、いうのが2022/10発表の論文骨子である。

 

この度、国内第I相臨床試験(以下、「本試験」)に向けての準備が整いましたので、本試験を開始いたします。

と、いうのが2023/11発表の記事である。

 

坪田先生はベンチャー経営されているだけあって、動きが速いなと感心する。

ただ、violet lightといい、意外と実用化に時間かかる感じでありましょうか。


(※)小胞体の中に、折り畳み不全のタンパク質が蓄積したときに認められる状態のことをendoplasmic reticulum(ER) stressといい、4-phenylbutyric acid (4-PBA)は、この折り畳み不全タンパク質が正しく折りたたむのを手助けするchaperone(介添え人)として働くらしい💦

左は正常眼の強膜線維芽細胞、右は折り畳み不全のタンパク質が蓄積した近視眼の強膜線維芽細胞

受動喫煙で近視が進む

この研究によると、

  • 受動喫煙群では等価球面度数が0.09D、眼軸長が0.05mm伸長していた。
  • 中等度近視と高度近視のオッズ比は、それぞれ1.30、2.64となる。
  • 近視の平均発症年齢が低くなる。

高度近視のオッズ比、高いな。
近視児の両親に「タバコ吸ってませんね?」と確認せねば、、である。