サギングアイ症候群について

先週、自分は

と同年代といったが、絵心のある娘が

を描いてくれた。

波平よりは保ってるかな~。

ただ、目の周り、特に下方部位がたるんでくるのは如何ともしがたい。この弛緩してたるむことをsagと英語では表現する。

表題のサギングという分かりにくいカタカナはsaggingが正体です。

「ガッテン」という番組でやっていたので、自分が該当するか調べてほしいという患者さんから御依頼があったので、この疾患について調べてみた。


この文献とかここによると、要するに「加齢に伴い、眼球回りの直筋、斜筋、コラーゲンなどの支持組織が弛緩してたるむ、つまり文字通りsagをきたすことによって、開散麻痺が発生し10△以下の内斜視、上下斜視を起こす」という疾患らしい。「ガッテン」では「眼科医の中でも、1年ほど前に周知されたばかり」とある。

こういう疾患名がついてたことは初めて知った。しかし従前から、ご高齢の方で、「最近両眼で見た場合にのみ物が二重に見える」→「眼球運動障害の可能性があるので、MRIとりましょう」ということは数々あった。もちろん頭蓋内病変が検出されたことはほぼない。

今後は「サギングアイ症候群かもしれないが、念のため頭蓋内病変も否定しておきましょう」と説明する必要があるな。。


「ガッテン」という番組は終了との由だが、このような疾患を取り上げるということ自体ネタ切れ状態だったのかと、苦衷お察し申し上げる。

眼科医サージャンの寿命

「新春随想寅年生まれ」日本の眼科2022年1月号を読んだ。

私も、すでに

Namiheiと同年代で、イオンに買い物に行くと、GGカードどうすか?と言われる今日この頃である。

しかし、清水公也先生は72歳でいまだにバリバリ手術されているそうだ。僕が見習いのころ、当時珍しかったライブサージェリーをやってのけ、そのビデオ映像を100回以上は見たっけ。

永原國宏御大も、お元気にやっておられる。横浜のF先生も一向に衰えていないようである。

私もそうした大先輩を見習って、今までの経験を還元し「も~、いーかげんにしなはれ!」といわれるまでサージャンを続けていきたいと、心から願っている。

アイハンス眼内レンズの早期レポート

以前、告知したように、当院では積極的にアイハンス眼内レンズを採用している。

そこで、先日アイハンスを挿入した患者さんの遠見視力、中間視力、グレア・ハローの有無をアンケートしたので記載する。

術後1週間の視力改善度

遠見視力が改善しているのは当然だが、中間視力の改善もかなりみられる。ハローグレアについては一名のみ訴えたが、この人は術前から同様の症状があったのでアイハンス眼内レンズとは別の要因が働いているかもしれない。

レンティスコンフォートを入れた場合は、夜間運転時のハローグレアを訴える人がそこそこいたので、実感としてこのレンズは使いやすいと感じる。

2022年の当院の展望(近視治療編)

当院はすでに、「アトロピン点眼オルソケラトロジー2大メーカー取り扱い、EDoF型コンタクトレンズ採用」と他クリニック以上のオプションを提示しております。

当院の近視治療オプション

以前は、アトロピン点眼かオルソケラトロジーの2択パターンが殆どだったが、EDoF型コンタクトレンズを採用して以来、「夜間装用は嫌だ」「どうしてもオルソレンズが合わない」「自費診療ではなく、保険診療でやりたい」という患者さんにも対応できるようになった

また、近年、アトロピン点眼とオルソケラトロジーの併用が抑止効果を高める[1][2]という論文がでてきている。今までは、併用療法は効果があるだろうがエビデンスが希薄だったが、かなりの自信をもって併用療法をお勧めることができるようになった。

選択肢が増えた結果、当院としてもそれらの呈示や組み合わせに工夫を凝らし、患者さんにベストな提示をしていきたいと考えている次第。


1.Efficacy of combined orthokeratology and 0.01% atropine solution for slowing axial elongation in children with myopia- a 2-year randomize trial

2.特集:近視 オルソケラトロジーと低濃度アトロピン点眼液の併用による近視進行予防

2022年の当院の展望(説明編)

患者さんに分かりやすい説明をするのは、実に難しい。

当院では、医師が概略を説明し、スタッフがタブレット呈示し、会計でその用紙をお渡し、Web上でも存分に御覧じろとというスタイルだ。

試行錯誤と自分自身の体験から、上記がベストだと信じている。

が、己が信じているからと言って、患者さんがすべからく納得できておるかとゆーと、、その一点において、甚だ疑問である。特に、待ち時間が長いというお叱りの聲あり。

じっくり説明すれば時間はかかるし、短時間処理をめざせば説明はおろそかになる。

その隘路を、かく拓くべく、

  • POS入力をSpeech-To-Textエンジンでリアルタイムに行う。
  • スタッフの人員余力、患者さんの待ち時間をリアルタイムで把握して配分する。
  • Web上で公開している説明紙を、各人のLINE上に直接配布する。

辺り、、かな。本年は。

That’s IT!

2022年の当院の展望(手術編)

当院の白内障手術は量を追わず、短時間手術も求めず、じっくり、丁寧、無痛な手術。そして、角膜浮腫が一切なく翌日から翌日からはっきり見える、を目指している。

上記目標については、ほぼ々々達成できている。

加えて、2021年11月からは、眼内レンズにはアイハンスを積極採用しており、遠方視力を保ちつ、かつ、中間視力も獲得できるようにした。しかも、グレアハローは僅少なのである。

そういう意味において、白内障サージャンとして希求できる歓び、患者さんの幸せを最大化しうる年としたい。

中橋知沙 画

「障害年金の診断基準が変更になります」について

?とおもったので、日本年金機構へ問い合わせたところ、「今回はあくまで、障害年金のみの変更で、障害者手帳については変更はありません

微妙にやりにくい。障害者手帳と障害年金は似て非なるというか、障害者手帳∋障害年金のようである[1]

障害者手帳

障害者手帳の制度
障害者手帳の診断基準

障害年金

障害年金の制度
障害年金の診断基準

障害年金の診断基準の変更点

結論

眼の障害で2級または3級の障害年金を受給されている方は、障害等級が上がり、障害年金の金額が増額となる可能性があります。


1.眼の疾患による障害年金について

AIによる診断

「医⽤⼈⼯知能の活⽤ ―AIによる新たな臨床的知⾒の創出―」日本の眼科2021年11月号を読んだ。

教師あり学習から得られる気付きとして、

眼底画像から年齢・性別・⾎圧などを⾼精度で予測するアルゴリズムにおいて拡張期血圧の予測には血管(29%)よりも血管や乳頭以外の部分(97%)に着⽬しているとされ,ここからは例えば,「拡張期血圧の予測には脈絡膜血管の状態が重要かもしれない」などと考察することができるかもしれない。

教師なし学習から得られる気付きとして、

これまでパキコロイド新生血管の定義は定まったものが存在せず,研究者がその都度恣意的に設定してきた。AIを応用することで,加齢黄斑変性にパキコロイド新生血管が混⼊していることやその境界が明確になり,更には,「パキコロイド新生血管にはポリープ状病巣が多いのではないか?」という研究者の予想とは異なり,パキコロイド新生血管と加齢黄斑変性ではポリープ状病巣の頻度に差がないという新たな気付きを得ることができたのである。

この「教師あり学習」と、「教師なし学習」は、必ず出てくる単語だが、おーざっぱにいうと、

  • 教師あり学習≒重回帰分析みたいな外部変数がある統計手法。内部変数の説明貢献度が高いとか低いとかを問う。
  • 教師なし学習≒主成分分析みたいな外部変数なしの統計手法。全体構造をよりよく説明する内在的ベクトルを探す。

な感じではある[1]

説明可能なAI[2]という観点からすると、「教師あり」のほうは理解しやすい。一方、「教師なし」のほうは第一成分や第二成分までくらいしか分からんのでは?

開業医としては、患者さんに説明可能な臨床モデルの研究を望みたい。


1.機械学習をどこよりもわかりやすく解説! 教師ありなし学習・強化学習だけでなく5つのアルゴリズムも完全理解! | AI専門ニュースメディア AINOW

2.説明可能なAI – 日本 | IBM

美容レーザーでドライアイ治療

「美容レーザーのIPL(Intense pulsed light)でドライアイ治療を行う」ときくので、情報を収集してみた。

すると、、

●IPLは、本来は酒皶という皮膚科領域の治療レーザーである[1]。☜酒皶とは、酒飲みの「赤ら鼻」
●2003年ごろから、MGD(Meibomian gland dysfunction=マイボーム腺機能不全)によるドライアイ治療に応用されてきた[2]

ドライアイで実際に多いのは、涙液量不足より脂不足タイプで全体の86%を占める。この脂不足タイプは点眼が効かない。

僕自身、点眼がききにくい症例については「心理的側面も加味すべきだ」と感じ治療してきた。しかし、Rolando Toyos氏らによると「IPL治療によってMGDを改善すれば脂不足タイプのドライアイも快癒する」「マイボーム腺梗塞や、再発性の麦粒腫に対しても効果がある」

作用機序は、以下のものが提唱されている。

つまり、温罨法や蒸しタオル法のように「単に温度を上げているだけではない」と仰られている。


営業担当に「でも、お高いんでしょう?」と訊ねると、白内障手術機械になんなんとする価格!
しかも、この治療が、東京では普及しており、自費診療で一回1万円も頂戴するやに聞き、いやましに驚く[3]

正直「ないわー」という印象で、医療においても二極化が斯くの如く進捗しているのだと実感した、、次第。


1.Treatment of rosacea with intense pulsed light: significant improvement and long-lasting results

2.Intense Pulsed Light Treatment for Dry Eye Disease Due to Meibomian Gland Dysfunction; A 3-Year Retrospective Study

3.2021-11-25-第29回阪神眼形成カンファレンス。八王子友愛眼科の今野公士先生の提示資料。

AMOテクニスのアイハンス眼内レンズについて

日本国内では2021年11月から新発売のレンズである。高次非球面設計により、単焦点レンズのいいところは残しつつ、見える範囲が広がったレンズとされる[1]

デフォーカス曲線は以下の通りである。

黒線は非球面レンズ(従来の単焦点)、灰色が非球面高次レンズ(アイハンス)

「通常は認識しない高度収差のパワーを中間距離に振った」ということのようで、AMOが得意とする焦点深度拡張の亜型ともいえる。グレアやハローも単焦点レンズと同程度である[2]

保険適用できる視覚領域の拡張レンズとしては、レンティスコンフォートが上市されているが、今一人気がない。おそらく、単焦点レンズと比較してのハローやグレアの増加デメリットが嫌われるのであろう。

その点、このアイハンスは名前が示す通り、「単焦点レンズのいいところは残しつつ、見える範囲が広がったレンズ」なので、ほぼ問題ないように思える。さまでは、近見には振っていないため「老眼鏡は基本的に必要となる」が、その点は従来の単焦点レンズでも同じだ。

当院では、近見に特化した合わせ方を希望しない患者さんに対しては、この眼内レンズを推していく所存。実は、仕入れ価格はわりかし高いのだが、保険適用レンズなので患者さんの負担額は単焦点レンズと全く同一である。

そのことによって、より多くの患者さんが、白内障手術後により良い体験を享受してもらえれるのであれば、眼科医冥利に尽きる、と云へる。


1.Visual outcome, optical quality, and patient satisfaction with a new monofocal IOL, enhanced for intermediate vision: preliminary results

2.Clinical evaluation of a new monofocal IOL with enhanced intermediate function in patients with cataract


2022/9/11追記

先日、40代の若い患者さんの片眼にアイハンスを入れたところ、やや霧視が発生するので、対眼には単焦点を入れてほしいとの希望があり、ALCONクラリオンを挿入した。
すると両眼でかなり近いところまで見え、かつ、霧視症状も文字通り霧散したとのことであった。
これは、亜Monovisionともいうべき手法であり、Miniwellをいれるよりも保険がきくし、良き?という感触を得た次第。←この手法は非常に評価が高く、多くの反響を呼んでます as of 2023/5/15.

2022/9/12追記

外来で「アイハンスにトーリックレンズはあるのか?」とご質問いただきました。回答は「存在はするが、市場には存在しない」ということです。
担当者は「サーセン、生産が追い付かないッス」としか言わないんで、セガサターン事案を危惧しております。。

2024/8/262追記

現在、当院ではアイハンスのトーリックレンズを積極的に採用しております。