眼内レンズIntensityについて

Intensityの最新情報@リッツカールトン大阪を聴いてきました。

Intensity SeeLens type

-1次、-2次の今まで捨て置かれてた球面収差を利用することにより、3焦点+2焦点=5焦点を実現している。
そのため、光ロスが従来型レンズよりも40%少なく、93.5%の光透過率をもつ。

-1次,-2次の収差を回収している
defocus曲線は5つのこぶを持つ

レンズ中央部は中間距離になっている点は、他社レンズが中央を遠方に設定している点と異なる。
ただし、瞳孔径の大きさに応じて、power配分が大きく変わる+上記の収差回収により、なだらかなdefocus曲線を獲得している。

瞳孔が小さくなると、近見のpowerが大幅に向上する

「近見視力が他社レンズより劣る」と、えの眼科クリニック絵野亜矢子先生は提示されていましたが、ツカザキ病院野口三太郎先生によると「両眼挿入の場合には、近見における眼鏡装用率も大幅に改善する」

【感想】

  • 両眼挿入のできる若者で、瞳孔異常がない、ハログレ最小化を希望する人が対象。
  • 回折格子がついているレンズとしては究極系に近い。ただ、世の中の流れ的には回折格子を廃止する方向なので微妙かな。
  • 開発元のイスラエルのHanita社は、MiniwelのイタリアSifi社をサポート体制において大きく凌駕する。

miLoopについて

この記事では、Zeptoという前嚢切開器具、miLoopという核分割器具がフェムトセカンドレーザーの代替候補として挙げられている。

miLoopについて書く。

MiLoop外観

IOLのインジェクター風の先から輪っかがでてきて、それを嚢内で回転させて核を挟み込む、という仕組みである。

手術手技が、Devide&conquerであろうと、chopであろうと、水晶体を押し込む力が発生するが、押すより引くという発想転換が欧米風でよい。

硬い核の除去に適するというのが、下の動画。

https://eyetube.net/videos/miloop-for-nucleus-fragmentation-in-hypermature-cataract

しかし、この動画では小瞳孔から実にうまく除去している。

https://eyetube.net/videos/miloop-mastered

iris retractorなしで分割し、ベンチュリーのphacotipを瞳孔中央に保持したまま処理を終えている。

したがって、汎用性があるデバイスではないか?と感じるが如何。

認知症予防と視力

ニューヨークタイムズの記事です。
大雑把に意訳すると

認知症の予防薬として、目が飛び出るほど高い薬が開発されているが、ほとんど効かない。リスク要因を取り除く方が、実効性がある。
JAMA研究によれば、全リスクファクターを取り除けば62%の認知症を防げる。1.8%は視力を保つことによって防ぎうる。

以前ご紹介した、白内障手術によって、認知症が防げると同工です。

他のリスクファクターとしては
高血圧、低教育、難聴、喫煙、肥満、鬱状態、運動不足、糖尿病、社会的孤立
が挙げられています。


白内障手術で認知症を防ぐとはいっても、ある程度が進んでしまうと

  1. 手術のリスク対効果が理解できなくなる。
  2. 痛覚に対する閾値も低下する。

となり、局所麻酔では手術が困難。しかし、家族さんは「全身麻酔は怖い」なので、結局そのままということがある。

何事にも、限度がある。
その限度は全身状態、眼局所だけではなく、認知レベルにも規定される。

三好眼科 三好輝行先生のご講演@瀬戸内眼科コロシアム2022

お元気そうで、慶賀の至りであります。
大橋先生は不動の4番バッターと紹介されていましたが、小生的には白内障手術界の永守会長かしらん[1]

不肖、私めが、会長のご高見を以下にまとめさせて頂きます。

  • 多焦点レンズにはすべてCapsular Tension Ringをいれる。∵多焦点レンズは偏心に弱い。
  • 多焦点レンズは、ループが鼻上側に来るようにする。∵dysphotopsiaは外側下方から発生するからである。
  • 術前に遠近両用CLでシミュレーションをする。違和感を訴える患者さんが抽出でき、過剰な期待値を下げることができる。
  • AMOのレンズはグリスニング・ホワイトニング、カルシウム沈着が発生にくい[2]
  • 単焦点レンズは翌日は喜ぶが、だんだん満足度が低下する。多焦点レンズはそれが少ない。特に理容師、若年者。
  • 術後不満の半数以上がドライアイなのでアイドラidraを使って評価している。
  • ミニモノビジョンは明視域を上げる。↓ではレンティスコンフォートの明視域が大きく改善している。

存外、NIDEKのレンズが優秀である。


1.三好先生ご自身は稲盛和夫元京セラ会長を尊敬しておられ、講演内でも「本業で得られた喜びは、趣味で得られた喜びより比較にならないくらい大きい」という言葉を引用されていました。

2.眼内レンズ、コンタクトレンズには以下の二種類の製法がある。

・レースカット製法:レンズを塊から削り出す方法
・モールディング製法:鋳型にレンズを流し込んで製造する方法
レースカット製法のほうがコストはかかるが、グリスニングは生じにくい。
アルコンのレンズは(ClareonもPanOptixも)モールディング製法。AMO、NIDEKのレンズはレースカット製法。

2022/11/8追記

アルコンによるとClareonは含水率1.5%、かつてのアクリソフは含水率0.4%。「グリスニングは房水吸引によっておこるためClareonでは発生しにくくなっている」とのこと。