緑内障専門医から見たアイハンスの実力

2022/3/24のwebセミナーを聴講しました。

埼玉医大の庄司 拓平准教授は、緑内障分野で活躍されておられる先生です。埼玉医大では眼内レンズをほぼアイハンスに入れ替えたとのことでした。

緑内障患者さんは慎重な性格の人が多く、白内障手術を嫌がる人が多いが、白内障手術による眼圧降下作用が大いに期待できるという話。

ただし、従来、緑内障患者さんの眼内レンズとして多焦点レンズの選択肢がなかった。

緑内障の術後QOLにはコントラスト感度が重要なので、従来の多焦点レンズは回析格子を持つため、パワーロスが発生しコントラスト感度も低下するためです。

その点、アイハンスは「回析格子を持たない構造であるため、緑内障患者さんにおいても何ら問題なく『全取っ換え』」しているとのことでした。


当院でも、従来は緑内障や黄斑疾患があるため躊躇われた症例について、積極的にアイハンスを挿入していく予定。。

問題点は、現在プレミアム価値がついているため高額で(←患者さんには負担ありません)、入手が困難になりつつある点かな。

水晶体嚢拡張リング(CTR)講習会を受講しました。

水晶体嚢拡張リングは、今までドイツから個人輸入していたのだが、このたび国内メーカーのHOYAからも発売されることになった。

ただし、HOYAから購入するには講習会を受けないといけない。

白内障手術に習熟した術者が、日本眼科学会の指導下で製造販売業者等が実施する講習会を受講した上で、使用する必要がある。

講習会の内容は、CTRを使っている術者なら皆知っているような内容であったが、注目したのはインジェクター一体型のCTRが発売されるということでした。

いままでは、「拡張リング出して、インジェクターとシンスキーフックも!」といって、個々にセッティングしていたが、一体型だと「拡張リングインジェクター出して!」の一発完了だ。

チン氏帯が脆弱というのはヤバめな状況なので、すぐ出せてすぐ挿入できるというのは素晴らしい。

緑内障での視神経保護作用薬の話

神戸大学中村誠教授の講演を聴きましたので、以下に概略を述べます。(@2022/3/5の神戸市立医療センター中央市民病院眼科オープンカンファレンス)

点眼薬のアイファガンやキサラタンに視神経保護作用があることは知られているが、「ニコチンアミド(=VB3)の内服にも保護作用がある」ことが動物実験や臨床試験で示された。

動物実験

ニコチンアミドが、上図左の二つの代謝サイクルを回った後、NADHがでてくる。このNADHが、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化(←ATPを作る過程)で発生する様々な活性酸素に対する保護作用を有する。

上図中のNicotinamide mononucleotideというのは、今井眞一郎教授で有目になったNMNという抗加齢物質である。今、VB3が抗加齢とか神経保護におけるHotSpotなのだと認識させられる。

臨床試験

「ニコチンアミド1日1~3g+ピルビン酸1.5g~3g内服」したところ、視野増悪が有意に抑えられたという臨床試験(約1年)である。

何故、ニコチンアミドに加えてピルビン酸を加えているかというと、

上記の神経細胞内の代謝図に示すように、ピルビン酸はほぼ自由に乳酸と置換される。この乳酸はグルコースを介さずにTCAサイクルに取り込まれ直接的な栄養源となる。この乳酸が再びピルビン酸に戻されるときNADHが発生し、視神経保護作用を発生する。即ち、中枢神経系においては、グルコースは悪者で、乳酸こそが直接的にエネルギーを産み出し、かつ、視神経保護作用を有する物質である。

このあたりの議論も、アルツハイマーは脳の糖尿病とか、ケトン体が認知症対策に有効といった話題と通底するものがある。

以上より、私の感想。

1.ニコチンアミド(VB3)や乳酸・ピルビン酸内服が緑内障視野の進行予防に有効だというランダム化前向き臨床治験を行い、一般開業医が用いうるエビデンスを提供していただきたい。

2.緑内障での視神経保護と、認知症予防や抗加齢は不可分の関係にある。

3.抗加齢目的でも高価なNicotinamide mononucleotideではなく、ニコチンアミド(VB3)や乳酸・ピルビン酸でいいんでは?

老眼対策の点眼薬(体験談)

老眼対策のVUITY™ (pilocarpine HCI ophthalmic solution) の記事は、反響が大きかったので、被験者約1名(女性、軽度老眼、正視眼)に、自費診療で体験してもらった。

遠近両用コンタクトの場合にはどうしても遠方視時のWaxyVision(ぼやけた見え方)が気になるということだったので、

  • +0.5Dのコンタクト+1.0%サンピロ
  • +1.0Dのコンタクト+1.0%サンピロ

を比較してもらった。

彼女の感想は、以下の通りです。

★+0.5遠視用レンズ & 1.0%ピロカルピン

(近く)
そこそこ見える。
裸眼でPCモニターやスマホもある程度見える。
小さい字は見えない。

(遠く)
少しぼやけるが問題ないレベル。
運転も問題なし。

(トータル)
遠近両用コンタクトレンズの近くも遠くももやのかかったような感じがなく自然にちかい。
1年前の老眼の進み具合に戻った感じ。

★+1.0遠視用レンズ & 1.0%ピロカルピン

(近く)
くっきりはっきりめちゃくちゃよく見える。
遠近両用コンタクトレンズ(+2.50)よりも断然よく見える。

(遠く)
かなりぼやける。視力としては0.4か0.5くらいの印象。
運転できるけど、やや不安な感じ。遠近両用コンタクトレンズの遠くの見え方よりも劣る。

(トータル)
完全デスクワークで電車通勤ならいいと思う。

+0.5遠視用レンズ & 1.0%ピロカルピン が、具合良いようです。

トライアルご希望の方は、お申し付けください。自費診療扱いとなります。