三好眼科 三好輝行先生のご講演@瀬戸内眼科コロシアム2022

お元気そうで、慶賀の至りであります。
大橋先生は不動の4番バッターと紹介されていましたが、小生的には白内障手術界の永守会長かしらん[1]

不肖、私めが、会長のご高見を以下にまとめさせて頂きます。

  • 多焦点レンズにはすべてCapsular Tension Ringをいれる。∵多焦点レンズは偏心に弱い。
  • 多焦点レンズは、ループが鼻上側に来るようにする。∵dysphotopsiaは外側下方から発生するからである。
  • 術前に遠近両用CLでシミュレーションをする。違和感を訴える患者さんが抽出でき、過剰な期待値を下げることができる。
  • AMOのレンズはグリスニング・ホワイトニング、カルシウム沈着が発生にくい[2]
  • 単焦点レンズは翌日は喜ぶが、だんだん満足度が低下する。多焦点レンズはそれが少ない。特に理容師、若年者。
  • 術後不満の半数以上がドライアイなのでアイドラidraを使って評価している。
  • ミニモノビジョンは明視域を上げる。↓ではレンティスコンフォートの明視域が大きく改善している。

存外、NIDEKのレンズが優秀である。


1.三好先生ご自身は稲盛和夫元京セラ会長を尊敬しておられ、講演内でも「本業で得られた喜びは、趣味で得られた喜びより比較にならないくらい大きい」という言葉を引用されていました。

2.眼内レンズ、コンタクトレンズには以下の二種類の製法がある。

・レースカット製法:レンズを塊から削り出す方法
・モールディング製法:鋳型にレンズを流し込んで製造する方法
レースカット製法のほうがコストはかかるが、グリスニングは生じにくい。
アルコンのレンズは(ClareonもPanOptixも)モールディング製法。AMO、NIDEKのレンズはレースカット製法。

2022/11/8追記

アルコンによるとClareonは含水率1.5%、かつてのアクリソフは含水率0.4%。「グリスニングは房水吸引によっておこるためClareonでは発生しにくくなっている」とのこと。

バイオレットライト透過眼鏡について

患者さんから近視の予防効果について質問されました。
「バイオレットライトの波長領域を選択的に透過する」とのことです。


[個人的見解]

バイオレットライトによる眼軸長伸展の抑制効果にはエビデンスがある[1]

では、「バイオレットライトの波長を選択的に透過する方が、全波長を透過させるより効果が高い」と云えるのかな?

すなわち、「タンパク質摂取は体に良い」を敷衍して、「タンパク質を選択的に摂った方が、まんべんなく食すより良き」と言えるのかな?

患者さんにお答えするには、このあたりの検討が必要とはおもう。


1.参照 「あなたのこども、そのままだと近視になります」を読みました │ 眼科医のブログ (tarumi.co.jp)

新生血管緑内障のVEGF治療

新生血管緑内障の患者さんを「観血的に御高療方よろしくお願い申し上げます」と大学病院に紹介した。すると、2日後に眼圧が40mmHg→20mmHg、前房出血も消失した状態で帰院された。

大学では、手術などはせず、アイリーア硝子体注射を施行しただけであり、しかもこれが著効したのである!


新生血管緑内障のVEGF治療は、欧米では2015年くらいから[1]日本では2019年前後から[2]普及した模様である。
緑内障診療ガイドライン(第5版)によると「VEGF薬の眼内投与の有効性が報告されている(エビデンスレベルC)」「手術前に抗 VEGF 薬の眼内投与を併用することで術中・術後合併症を抑制できることが報告されている(エビデンスレベルB)」なので、まずは、VEGFを打って、だめなら観血治療という流れであろう。


アイリーア以外のVEGF薬は、新生血管緑内障に対する保険病名が獲得できていない。最近、アイリーアは押され気味だが、この一点において、十分に存在意義がある。


1.Aflibercept for the treatment of neovascular glaucoma

2.Efficacy and Safety of Intravitreal Aflibercept Injection in Japanese Patients with Neovascular Glaucoma: Outcomes from the VENERA Study

2022/11/7追記
バイエル薬品によると「血管新生緑内障(NVG)の特許期限は2029年ごろ予定で、具体的な月日に関しては未定とのことです。後発品に関しては症例数も少なく、恐らく発売しないだろう」

ミニウェル・プロクサを片眼のみに挿入できるか?

「片眼に単焦点レンズを入れたが、僚眼にはミニウェル・プロクサをいれたい」という御要望があった。
そこで調べたが、結論は「無理っぽい」です。


片眼プロクサ and/or 両眼プロクサの御所望は結構多いらしい。
しかし、Sifi社は『ミニウェル・レディを優位眼に、ミニウェル・プロクサを非優位眼に入れることを「Well Fusion」と呼び、両者は補完的に働く』に拘りおる由で、プロクサを単独販売しない。
これは、優れて欧州的と云うべし。


「Well Fusion」を購入してプロクサのみ挿入する手はあろうが、コスト倍で非定型挿入というリスクが発生する。
どうしても非回析型の近方レンズを入れるなら、既存のアイハンスを入れるか、Vivity登場を待つのは如何か知らん?

「自分でできる人生が変わる緑内障の新常識」を読みました。

診察の結果「緑内障です」
 ↓
「点眼をしっかりして眼圧コントロールしましょう」となった場合、100%確率で

「目を疲れさせなければ大丈夫でしょうか?」
「スマホは見ないほうが良いでしょうか?」

と、質問がある。
当院では、緑内障の日常生活注意点.pdfを説明している。


今回、Nikkeiグッディで紹介されてた「自分でできる人生が変わる緑内障の新常識」を読んでみた。

著者は、平松類先生で、Youtubeでも発信されておられる。

この本から、エビデンスレベルA、Bを抜き出すと以下の通り。

  1. 目に良いといわれるルテインは緑内障にも良い。 A
  2. ビタミンA、Cは緑内障に良い。 A
  3. スクワットは眼圧を上げやすい。 A
  4. 運動習慣のある人のほうが、緑内障は進行しにくい。 A
  5. カシスは視野欠損の進行を抑え、緑内障の眼圧を下げる作用がある。 B
  6. マインドフルネスは眼圧を平均4mmHgほど下げる。 B
  7. ヨガの呼吸法は眼圧を下げる可能性がある。 B

一方、Nikkeiグッディのキャッチーな見出しは、

  1. 血糖値を上げやすい食品は避ける。 C
  2. メタボは緑内障にとって良くない。 C
  3. リラックスするために入浴と睡眠に工夫を。 D
  4. コンタクトレンズはあまりお勧めしない。 なし
  5. スマホやパソコンで目を酷使しないよう注意。 C

で、いずれもレベルC、Dか、レベル表示がない項目である。


●エビデンスのレベル分類

「自分でできる人生が変わる緑内障の新常識」では、

レベルA:複数のランダム化比較試験、またはメタアナリシスで実証されたデータ
レベルB:一つのランダム化比較試験、または非ランダム化比較研究で実証されたデータ
レベルC:レベルBより劣るが、一定のデータがあるもの
レベルD:参考にとどめておく。

一方、緑内障診療ガイドライン(第5版)では、

A(強):効果の推定値に強く確信がある
B(中):効果の推定値に中程度の確信がある
C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
D(非常に弱い):効果の推定値がほとんど確信できない

 レベルCを「一定のデータがある」とみるか、「確信は限定的である」と読むかで、この本とNikkeiグッディ記事の印象はかなり異なる、と感じた次第。

オンライン資格確認

医療機関向けには、

患者さん向けには、

こ、怖い*゚Д゚。フラグが見える。絶対に喰ってはイカン感じだ。


ところが、Yahooニュース 及び オンライン資格確認説明会によると

厚労省は、2023年4月までの導入を義務付けるとのこと。間に合わなかった場合、直ちに罰則は与えないが、地方厚生局が丁寧に指導して導入を後押しするとのこと。

怖すぎる。。。

 ・
 ・
 ・

当院は、敢えてこの毒饅頭を戴くこととする。皿まで食す[1]こととする。

下賜いただくカードリーダは、パナソニック製に既に決めた。
次は、電子証明書発行申請である。


1:業者に頼まず、自前で実装する、という意。


2022/11/14追記

「皆もすなるマイポといふものを、私もしてみむとてするなり」
しかし!
「アルファベットを入力するべきなのに数字しか入力できない」「総務省のアプリとデジタル庁のアプリが二本立て」とか、、ないわ~。
丸投げ&縦割りを肌身に感じることができた点が、ポイントだとしか云えぬなり。

HUS(Heads Up Surgery)について

第24回兵庫県学科フォーラムでHeads Up Surgeryの講演を聴きました。
顕微鏡をのぞかずに、3Dディスプレイ+3D眼鏡で行う手術です。

AlconのNgenuityとZeissのARTEVO 800が有名処だけど、演者の県尼長谷川 麻里子先生はNgenuityを使ってました。

長所は、

・画面の明るさを上げ、低照度でも手術ができるため網膜光障害を低減できる。
・優れた拡大倍率により、詳細な手術画像が得られる。
・色相や彩度の調節により視認性を向上できる。
・画面分割により術前情報を共有できる。
・術者のエルゴノミクスを改善できる。
・教育的指導に有用

硝子体手術屋さんにはメリットが大きいと思う。

←顕微鏡像 →Ngenuityで処理後

画質改善は明らかだ。

一方、白内障手術では、白黒画像にするとCCCや皮質処理がやりやすくなる程度の益。

私の感想

・手術するのに3D眼鏡をかけるのヤだな。
・さりとて、眼鏡なしだと平面的だよな。
・白内障手術的にはウレシみ少ないかな?

  

次ステップの遠隔ロボット手術もみすえて、各社しのぎを削るの構図。

けど、ローカルでlatency70msは少しラグいんでは?
FPSのネット対戦だと苦しいping値だ。

老眼治療の新しい点眼薬

前週の慶応大学教授根岸一乃先生の講義後半は、老眼治療についてでした。

Vuityの二重盲検試験の結果は以下の通りで、当院のオレオレ検証と並行する。凡そ、3~4時間までが効き目と見受ける。

欧米では、老眼治療の点眼薬が治験進行中であり、検討されている。

Vuityについては当ブログで既報なので、他薬剤の関連リンクを貼ります。
MicroLine
CSF-1
PRX-100
UNR844
VP1-001

なお、この記事が、簡潔かつ詳細である。


学会会場でのQ&A

Q.5焦点のレンズ(訳注:Hanita社のIntensity)はどうか?
A.使用経験はないが摘出例はある。決定版というほどではないであろう。

Q.(水晶体弾性を増加させる)治験点眼薬はどういう機序か?
A.水晶体のリポイックアシッドによる水晶体クリスタリン蛋白の架橋を断つことによって、水晶体の弾力性を取り戻す。

Q.ピロカルピンを入れてると、かつてよく散瞳不良例が見られたがどうか?
A.治験薬は消炎剤を組み合わせて、散瞳不良を防いでいるようである。

Q.シナジーとパンオプティクスの使い分けは?
A.患者さんに選択肢を任せる。3焦点指名ならパンオプティクス、より近くが見える方が良い and/or 新しく出たレンズがよいならシナジー


2023/1/24追記

某製薬会社が老眼点眼に興味がある由で当院を訪問されました。
ノバルティスが開発断念したこともご存じで、かなり研究されている様子でした。
遠からず、Vuityの国産品が発売されるかもしれません。

PanOptix vs Synergy

2022年9月10日、第27回大阪眼科手術シンポジウムを聴講しました。講師は慶応大学教授根岸一乃先生。

国内承認されている3焦点レンズPanoptixとSynergy
どちらがよいのか!というビミョーな命題についてでした。

PanoOptixのMTF
SynergyのMTF

症例数は少ないが、コントラスト感度が良いのはSynergyである。これは臨床印象と一致しているとのことでした。ここまでは利益相反なしな話。


以下は、J&J社(旧AMO)の協賛論文からである。

あまり差はないが、焦点深度はSynergyが広いといってる。

これも、近見はSynergyのほうがやや良いと言ってる。


関東ではSynergyがPanOptixよりも優勢で、関西と異なると聞き及んだが、慶大教授が上記のように仰られるならば、むべなるべしとは思う。☞詳説

根岸教授は、老眼治療についても積極的で、なんと来年は老視学会が設立されるとのことだった。これについては、また次週触れます。

2022/9/19追記
学会会場でのQ&Aでは
Q.シナジーとパンオプティクスの使い分けは?
A.患者さんに選択肢を任せる。3焦点指名ならパンオプティクス、より近くが見える方が良い and/or 新しく出たレンズがよいならシナジー

法令線にヒアルロン酸を入れました。

以前、下眼瞼のたるみにヒアルロン酸をいれたのだけど、法令線にも入れました。

通常、法令線にはジュビダームウルトラを使うのだが、小皺タイプの法令線なのでレスチレンリドを使ったとのこと。

ジュビダームとレスチレンの違いは

銀座禅クリニックから引用

前回は、自分で自分に適用できるかな?とか書いたけど、無理っぽいです。やはり、餅屋にお願いするのが吉かな。。