ミニモノビジョンについて

FEST(Fellow-Eye Self-Turning )法をAlcon Experience Academyの第77回日本臨床眼科学会ライブラリーで拝聴しました。

講演者は金沢医科大学 佐々木洋先生です。

要約すると

優位眼の片眼手術にVivityを挿入した後、その術後眼に+0.5Dを付加し-0.5Dの近視状態を作ってたうえで、遠見・中間・近見の視力を測定する。
満足できる視力であれば、対眼にもVivityを-0.5Dのミニモノビジョンで入れる。
満足できない結果であれば対眼にはPanOptixをいれる。

これによって、患者さんの満足度があがり、術者も自信をもってレンズ選定が可能となる。


これは有効な手法なので、当院の主力レンズであるアイハンスのモノビジョンでもはぜひ実践すべし、、と考えた。

そこでアイハンスの英文論文を探し、Comparison of visual performances of enhanced monofocal versus standard monofocal IOLs in a mini-monovision approach を読む。

<方法>
単焦点レンズのミニモノビジョンとアイハンスのミニモノビジョンを比較した。
<結果>
アイハンスノモノビジョンが中間視力、近見視力ともに優秀であった。
コントラスト感度特性もより良好であった。
QOLスコアも優れていた。

👉著者はJ&Jとは利益相反なしである。


前回も言ったように、アイハンスは乱視ラインアップが豊富で、患者さん満足度とも相関が高い乱視矯正が容易である。

以上より、保険医療で、ハログレがほぼ々々なくって、中間~近見視力がそこそこよいなら、非常に好ましい選択といえるのではないか?

当院でも積極的に患者さんに提案していこうと考えています。


2024/4/13 追記
この手法は、
①保険で
②できるだけミニウェルプロクサ的な遠見~近見視力獲得
を実現する手段とみることもできる。

「専門分野から見たアイハンスの臨床評価」を受講しました。

硝子体術者として慶応大学の國方彦志先生、緑内障術者として島根医大の谷戸正樹先生のご講演。

単焦点レンズと比べて、遠見視力、コントラスト感度特性に差はないが、-1.5D当たりの中間視力が優れている。
ハログレのアンケート調査でも差はない。

という予定調和な内容でした。


アイハンスは、トーリックレンズに力を入れているようであり、

「フロスト加工ので回転しにくい」とのことです。
当院でも、-1.5D以上の乱視者全員に採用しています。

アイハンスの適合レンズの選定url
ちなみに、アルコンはこちら


両演者ともターゲットは-0.5D~0Dに合わしている由。
当院では、ここで言った理由によりほぼ0Dを狙い。希望時には対眼でマイクロモノビジョン的にマイナス度数を入れています。

多焦点レンズ記事のおまとめ

最近、多焦点レンズを希望される方が、若干増加してきた印象である。
皆さん、よく勉強しておられ、当ブログも読み込んでおられる。

ただ、何分の散文集につき、所在が分かりづらい指摘もあり、おまとめしてみた。


・多焦点レンズ一覧

当院で取り扱っている多焦点レンズの比較

・各種レンズの記事

PanOptixとSynergyの比較

PanOptixとVivityの比較

Synergyについて

Synergyの目標ターゲット

Odysseyについて

Vivityについて(1)

Vivityについて(2)

Vivityについて(3)

Eyehanceについて(1)

Eyehanceについて(2)

Eyehanceについて(3)

Eyehanceについて(4)

Eyehanceについて(5)

Eyehanceについて(6)

EyehnaceとVivityの比較

Lentis Comfortについて

Miniwellについて

Intensityについて

・見え方のSimulator

多焦点眼内レンズのシミュレータ

・モノビジョン

ミニモノビジョンについて


上記のうち、「シミュレータで見え方を確認して、決めました」という人が存外に多く、その有用性に気付かされる。

パキコロイド疾患の診断と治療-up to date-@兵庫県眼科医会臨時総会2024-2-17を聴講しました。

最近黄斑関連でよく名前をきく神戸大学三木明子先生のご講演でした。

パキコロイドの定義問題

パキコロイドは本来は『pchychoroid=pachy(厚い)+choroid(脈絡膜)から日本語では「脈絡膜が分厚い症候群」』だったが現在は、脈絡膜肥厚よりもPachyVesselsの拡張(脈絡膜拡張血管)を重視することになったらしい、です。

CSCの分類

Simple型:下記のComplex以外
Complex型:2乳頭径以上の網膜色素異常 and/or 多発性の網膜色素異常

治療予後に関連する因子

予後判定にはONL層の厚みが関連する。エリプソイド ゾーンではない。
ONL層の厚みが65.5μ以下だと予後が悪い。これは、罹病期間120日前後に相当する。
よって、半年以内の治療開始が望ましい。

NFL:網膜神経線維層
GCL:神経節細胞層
IPL:内網状層。
INL:内顆粒層
OPL:外網状層
ONL:外顆粒層
EML:外境界膜
EZ:エリプソイド ゾーン
RPE:網膜色素上皮


三木明子先生は子育てと仕事の両立に苦慮してくるということ。
中村教授から「旦那に寝かしつけを任せなさい」とアドバイスありました~

LASIK後の眼内レンズ度数算定式

過去LASIKを受けた患者さんに白内障手術を行う場合、通常の眼内レンズ算定式は適用できない。

LASIK施行症例ではIOL度数計算が難しく、通常の角膜屈折力及び度数計算式を用いると、術後に遠視化する。
屈折矯正術後のPEA+IOL挿入術後に遠視化する要因はいくつかあるが、主にIOL挿入術前の角膜屈折値の評価誤差と、前房深度予測誤差の二つによる。

当院でもそのような症例が増加傾向にあるので、LASIK施行後の眼内レンズ算定式について調べた。

日本眼科医会の「4.屈折矯正手術後眼でのIOL度数計算式」によると

・Barrett True-K式は厚肉光学を用いたBarrett Universal II式が元になっており、計算に必要なパラメータは眼軸長、K値、前房深度で、水晶体厚、角膜横径は任意である。lens factor(LF)という独自の定数を用いるが、詳細は非公表である。
・Haigis-L式では、角膜屈折力を用いず、眼軸長と術前前房深度の重回帰式からELP(effective lens position)を予測する。屈折矯正手術前のデータが不要である。

・Barrett True-K式は、APACRS(Asia Pacific Association of Cataract & Refractive Surgeons)からオンライン計算が可能である。

・Haigis-L式は、ASCRS(American Society of Cataract and Refractive Surgery)→「Prior Myopic LASI/PRK」からオンライン計算が可能である。

Barrett True-K式のほうが、眼科医の支持が多い印象だけど、当院では両者測定のうえ判断しています。


1.中村友昭:LASIK術後眼のIOL度数計算. 日本白内障屈折矯正学会雑誌 Vol.24 (2010)

2.磯谷尚輝 etal:LASIK後の白内障手術における眼内レンズ度数計算式の精度. 日本視能訓練士協会誌 Vol.37(2008)

3.日本眼科学会:眼内レンズ度数計算式およびトーリック度数計算式の使用にあたって (nichigan.or.jp)

実践フィラー注入テクニックを読みました。

前回のジュビダーム講習で、岩城佳津美先生著「実践フィラー注入テクニック」を勧められたので読みました。


講習で実習したMDコードの各部位の動画は以下の通り。

↑ただ、講習内容とは、やや異なるような気もする
MDコード以外に、ガルデルマ社のTrueLiftメソッドが紹介されていました。


いきなり身内で治験するのもどうかと思うので、まずは顔面シミュレータで練習することにします。

ジュビダームの実践講習を受けました。

眼周囲の窪み・クマは形成外科とか美容外科じゃなくって眼科医自身がやるべき、と思って受講しました。
顔面の血管走行、MDコードに基づく注入手技を、マネキンを使った講義形式で2時間半ほど。

「SNS上で詳細を提示してはいけない」につき、受講感想のみを書きます。


  1. 『眼科手術では「はっきりみえる環境下」で手技操作を行う』が、基本中の基本だが、ジュビダーム注入はblindの操作が多い点、難しい。
  2. 指導者側、受講者側ともに前向きに知識を教授+吸収しようという熱気が感じられた。
  3. MDコードを批判する向きもあるようだが、このコード体系に基づいた治療戦略、指導方法はよく練られていると感じられた。

「まず身内でやってみてください!」ということであったので、華岡青洲の妻をお願いしようかしらん。

2024年の新年ご挨拶

2023年目標の振り返り

  • 2023年の目標(説明編)→「express ムンテラとexpress会計」は実現できた。
  • 2023年の目標(手術編)→「データベースをSqlServerに移行してターゲーット屈折度の違いを短時間で計算できるようにする」は実現。
  • 2023年の目標(近視治療編)→「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は未達。

昨年は、人力作業をPCに移行させるべく藻掻いたため「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は至らず。。

2024年目標

  • 「眼軸長、屈折度の変化グラフをアプリケーションで提示」は繰り延べ。
  • 説明動画を、できるだけリアルな形で作成し、できれば個々の患者さんのデータを取り込んで提示。
  • 眼周囲の美容的手段を習得する。

本年もよろしく、お願いいたします。



ジクアスLX3.0%発売記念を聴講しました。

参天製薬の記念講演だったのですが「ジクアスとムコスタの使い分け」が聴けるというので参加。


前半は以前にもこのブログで紹介した京都府立医大横井教授と埼玉医大石川聖先生のお話でした。

BUP分類は6種類だったが「横井先生が追加し現在8種類となっており、これらはドライアイ専門家でも鑑別できない」
ん~?いうことで、簡便にBUP判別するBUT法を紹介されました。

BUT0秒0~3秒3秒~
BUPSpot Break, Area BreakLine Break, Dimple BreakRnadom Break
BUT vs BUP

上記を踏まえて、前回のBUP分類をリライトすると

BUT分類Break Up パターン(BUP)原因異常層推奨治療
0秒Area Break涙液減少(重症)液層涙点プラグ、ジクアス
Spot Break水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
0~3秒Line Break涙液減少(軽症)液層ヒアレイン、ジクアス
Dimple Break水濡れ低下型=親水性低下型上皮ジクアス、ムコスタ
3秒~Random Break蒸発亢進型油層ヒアレイン、ジクアス
BUTからBUPに変換する

「ジクアスとムコスタの使い分け」は、うぐいす眼科の細谷友雅先生の担当。

●ムコスタをつかうのはfrictionが主体の疾患。

結膜弛緩症
上輪部角膜結膜炎
糸状角膜炎
lid wiper epitheliopathy

●ジクアスLXの特徴

  • 「べたつきやすい」のであらかじめ伝えておく。
  • 「ジクアス」ほどしみない。
  • 目ヤニが出やすい。
  • 減りが早い。

●選択基準

  • 「カラカラアイ」にはジクアス
  • 「ゴロゴロアイ」にはムコスタ

ドライアイの点眼治療コスト

ドライアイ点眼薬の新薬は高い。
点眼薬コストを列挙する。

単品の場合

点眼薬先発品薬価後発品薬価先発品の3割負担後発品の3割負担
0.1%ヒアレイン272.4104.681.7231.38
0.1%フルメトロン17389.551.926.85
ジクアス529.7187158.9156.1
ジクアスLX1060なし318n/a
ムコスタ3046.4460.5913.92138.15
単位は円

2剤組み合わせの場合

点眼薬組み合わせ先発品薬価後発品薬価先発品の3割負担後発品の3割負担
0.1%ヒアレイン+0.1%フルメトロン445.4194.1133.6258.23
0.1%ヒアレイン+ジクアス802.1291.6240.6387.48
0.1%ヒアレイン+ジクアスLX1332.4399.72
0.1%ヒアレイン+ムコスタ3318.8565.1995.64169.53
ジクアス+ムコスタ3576.1647.51072.83194.25
ジクアスLX+ムコスタ4106.41231.92
単位は円

ジクアスLXとムコスタ先発品が、とみに高い。
理由→ジクアスLXは新発品で後発品が存在しない。ムコスタ先発品は使い切りタイプなので高くつく。


前回のべたTFOT(Tear Film Oriented Therapy)が治療根拠なれば、ジクアスLX最強説だが、「ジクアスLX(1060円) ÷ 0.1%ヒアレイン+0.1%フルメトロン(58.26円) ≒ 20倍」 ほどの御利益があるかといわれると、正直ビミョーな気もする。

因って、製薬各社は新発点眼薬を勧めてはくるが、開業医としては肯んじない部分がある。
この辺り、御高名先生の御講演では考慮されてないですよねー。