白内障多焦点レンズの種類

この数年で、長足の進歩を遂げた「多焦点レンズ」について

名称レンティスコンフォートアイハンスシンフォニー     シナジーヴィヴィティパンオプティクス
光学部デザイン分節状屈折型(2焦点)高次非球面エシェレット回折型(2焦点)エシェレット回折型(2焦点)+回折型(2焦点)波面制御型
回折型(3焦点)
特徴2 つの単焦点を組み合わせた独自の扇型デザイン。+1.5D のマ イル ドな加入度数により遠方・中間視力の獲得が期待される。近方は近用眼鏡が必要になる。単焦点レンズのいいところは残しつつ、見える範囲が広がったレンズ。近方では視力が低下するため、老眼鏡は基本的に必要となる。加入度数は+0.5Dエシェレット回折により、広い焦点深度を持ち遠方から近方まで自然な見え方をする。(EDoFレンズ:Extended Depth of Focus:焦点深度拡張型レンズと呼ばれる)。加入度数は約+1.5D相当。EDoF型に、2焦点回折型を取り入れたモデル。連続焦点型と呼ばれる。PanOptixよりも近方を重視している。加入度数は公表なし。波面制御テクノロジーによる焦点深度拡張型レンズと呼ばれる。加入度数は不明。実生活での作業に適した遠方・中間・近方にピントが合うように設計されている。2焦点眼内レンズに比べて眼鏡の依存度が低減。加入度数は、+1.60D +2.48D
焦点広い焦点:遠から中距離(∞~70cm)加入度数は+0.5Dだが脳アダプテーションにより70cmまで見える。広い焦点:遠から中間(∞~50cm)3焦点:遠方 (5m以上)、中間(60 cm ) 、近方(35cm)広い焦点:遠から中間(∞~50cm)3焦点:遠方 (5m以上)、中間(60 cm ) 、近方(40cm)
光エネルギー配分遠方(55%) 近方(40%)遠方(ほぼ100%)
EDofなのでdataなしEDofを含むのでdataなしEDofなのでdataなし遠方44%中間22%近方22%
光エネルギーロス5%ほぼ0%8%遠方8%、近方18%ほぼ0%12%
ハロー・グレア(リビング)
ハロー・グレア(買物)
ハロー・グレア(夜間運転)
生産ドイツ(オキュレンティス社)アメリカ(J&J社)アメリカ(J&J社)アメリカ(J&J社)アメリカ(アルコン社)アメリカ(アルコン社)
レンズ代金(乱視なし)全額保険適応全額保険適応片眼 190,000 円片眼 270,000 円片眼 270,000 円片眼 270,000 円
レンズ代金(乱視あり)全額保険適応全額保険適応片眼 240,000 円片眼 330,000 円未対応片眼 330,000 円
ハローグレアの程度極小
一言運転される方や、多少見え方の質が落ちても保険診療内でなるべく広い範囲を見たい方におすすめ。ほぼ単焦点レンズで、しかもある程度中間距離がみえる。手術適応の幅が広い。多焦点眼内レンズの中では見え方の質が良い夜間車運転が少なく、近方を重視する人におすすめ。遠方がくっきり見え、夜間運転にも適する。近方には眼鏡が必要かも。最新型で全距離対応だが、近方距離が40cmでやや遠い。

【結論】

多焦点レンズを選ぶ場合、車運転するならPanOptix、近方作業重視ならSynergy。ハログレ―最小化を希望するならVivity.

<2021/12/5追記>

保険適用、夜間運転ならアイハンス一択とします。現時点で究極のプレミアムレンズ。

<2022/6/26追記>

自費診療ならミニウェルフュージョンシステムを推します。

<2020/12/28追記>

見え方のシミュレーションは、 比べてわかるレンズの違い がわかりやすいと思う。

<2022/11/19追記>
HOYAから、アイハンスと同思想のレンズが+1.0加入で発売される予定とのこと。HOYAはPanOptix対抗品もだすらしい。

<2023/4/4追記>
AMO談「SynergyはPanOptixよりも近方がみえる(35cm vs 40cm)。そのため眼鏡不要率が90% vs 70%である。一方、その代償としてハログレスターバーストは多い。」したがって、都会は近方作業が多いためSynergy普及率が高い。一方、田舎は車運転が多いためPanOptix普及率が高い。
一理あるかも。

<2023/7/25追記>
ヴィヴィティの情報、画像を追加記載しました。

<2023/7/31追記>
眼内レンズの選択表をつくりました。

眼内レンズの種類

単焦点レンズ乱視用レンズモノビジョン多焦点レンズ
特徴もっとも一般的に使
われている。
1つの距離にピントを
合わせる。
単焦点眼内レ
ンズに乱視度
数が含まれて
いる。
わざと左右の度を変え
片方は正視、もう片方
は近視にして、遠くも
近くも見る方法。
光の性質(屈折や
回折)を利用して
遠くと近くに焦点
が合うように設計
されている。
長所保険適応。
焦点を合わせた距離
が、はっきり見える。
夜間の光の眩しさや
にじみが出ない。
眼鏡なしで見
える。
保険適応。
乱視を矯正す
ることによって
術後の裸眼視
力をよくするこ
とができる。
片方の目で遠くに、も
う片方の目で近くに焦
点を合わせることによ
り眼鏡なしで生活でき
る可能性がある。
遠くも近くもある程
度、眼鏡なしで見
える。
短所遠くを見えやす く合
わせると老眼鏡が、
手元が見えるように
合わせると遠く用の
眼鏡が必要。
術後に目の中
で レンズが動
い た 場 合 は 、
再度位置を調
節する手術が
必要になる場
合がある。
完全に乱視を
矯正できるわ
けではない。
立体的にものを見る力
に多少問題がでる。
度数の誤差が生じる場
合がある。
脳が適応できず左右
の目の切り替えができ
ない可能性がある。
保険適応外のた
め高額。
暗い場所で光が
眩しく感じたり、に
じんで見える。
薄暗い場所で文
字が見え難い。
慣れ る まで時間
がかかる。
価格保険適応(3割負担
片目48000円程度)
保険適応(3割
負担片目480
00円程度)
保険適応(3割負担片
目48000円程度)
自費負担
(片目約24~33万円)

白内障手術の基本的な手技は、ほぼ固定している。すなわち、「無縫合,小切開、超音波Chop&devide&conquer吸引、折り畳みレンズ挿入」という手術テクニックそのものは、この20年ほど前から大略変わっていない。

しかし、眼内に挿入するレンズはまさに日進月歩である。

上記表は、当院で最初に患者さんに説明するときに用いているものだけど、最近は多焦点乱視レンズを選択する人が増えてきてる。

やはり、若いころから遠近両用メガネ、遠近両用コンタクトをしている人(特に高度近視の方)が白内障手術をするときには、多焦点レンズを希望することが多いようです。

次回は、多焦点レンズの進化と選択について書きます。